フォルクスワーゲン 2020年電動化攻勢についてステファン ゾンマー博士に聞く【フランクフルトモーターショー2019】

近年、低炭素社会を目指す動きが活発化しているが、自動車産業でのCO2フリーは電動化という戦略で歩み始めている。Well to Wheelでの考え方でCO2フリーを実現しなければならないが、先のCOP25でも国内の石炭による火力発電、火力発電所設備の輸出といった項目には触れることなく終了している。

2019フランクフルトモーターショーで発表された市販型ピュアEVのID.3
2019フランクフルトモーターショーで発表された市販型ピュアEVのID.3

一方で、世界最大の自動車メーカーの座をトヨタと競うフォルクスワーゲングループは、自身が引き起こしたディーゼルゲート事件以来、急速に電動化へ舵を切っている。そのフォルクスワーゲンは、単にBEV(バッテリーEV)を生産してCO2フリーとはしておらず、さまざまな分野でCO2フリーを目指す改革が行なわれているのだ。

右)VW購買のトップ、ステファン ゾンマー博士、中央)担当応報、左)VWグループジャパン社長ティル・シェア氏
右)VW購買のトップ、ステファン ゾンマー博士、中央)担当応報、左)VWグループジャパン社長ティル・シェア氏

実は2019年のフランクフルトモーターショーでBEVのID.3市販車両が発表されたが、フォルクスワーゲンが大きく舵を切った狼煙でもあったのだ。そして、この時VWグループのボードメンバー、ステファン・ゾンマー氏に話を伺うことができた。そこではグループが目指す、ライフサイクルにおけるカーボンフリーのロードマップの片鱗が見えてきたのでお伝えしよう。

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電動化されたSUV「I.D.クロス」コンセプトモデル
電動化されたSUV「I.D.クロス」コンセプトモデル

すべての分野でのカーボンフリーを目指すとは

ゾンマー氏はすべての分野でカーボンフリーを目指すと話している。それは、エネルギー供給において、電力供給は、再生エネルギーから供給する企業へと契約を変更し、材料、輸送、そしてサプライチェーンも含む生産領域全てで変更することに着手しているという。

それは3段階で考えていて、まず、CO2を減らすことに取り組み、それがどうしてもできない場合、代償を払う、例えば森林保護などへの投資をし相殺するわけだ。そして完全に避ける、という3段階でCO2ニュートラルを目指すという。

そして手をつけいく順番は、コストだけではなく、CO2排出量の大きいものから順に取り組んでいき、コンポーネンツにおいてはコストとCO2の両方の観点から削減をしていく。その結果、非常に高い透明性を確保することができるとしている。こうした取り組みはディーゼルゲートへの反省のようにも聞こえてくるが、これはフォルクスワーゲン自身だけではなく、サプライヤーも含め製造時に排出されるCO2もカーボンフリーとなるように提案し、また実施しているという。特にサプライヤーには、こうした取り組みをしている企業以外とは既に取引を行なっていないのだというのだ。

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I.D.バスはミニバンタイプのBEV
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またフォルクスワーゲンは欧州、中国、北米の3大陸において18拠点をEVの拠点へと変更し、うち8箇所はMEBをベースとしたモデルを生産するとしている。MEBをベースとした車両の一例として、乗用タイプがID.3であり、SUVがルームズで、他にもミニバンタイプなども提案しているが、いずれも同じMEBを使い、目的別にデザインしてある。

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2050年カーボンフリーが実現する

こうした取り組みの表には、EV化戦略のロードマップがあり、すでに発表されている数字では2028年までに70車種のEVを発売し、最初のウエイブとしてBEV車は2200万台発売するとしている。そして2025年には2015年と比較してCO2を50%削減し、ライフサイクルでは30%を削減目標にしている。そしてフォルクスワーゲンは、2050年には完全なカーボンフリーを実現するとしているのだ。

こうした急激な変化は、まさに自動車産業の大変革であり、100年に1度の変化が起きていることを実感する。また、フォルクスワーゲンはこうした車両生産への取り組みについて、一つはバッテリーがキーになり、もうひとつはOS(オペレーションシステム)がキーになると位置付けている。

充電インフラにも取り組んでおり、アウトバーンにも急激にステーションが増えているという
充電インフラにも取り組んでおり、アウトバーンにも急激にステーションが増えているという

バッテリーの自社開発

バッテリーに関し、ゾンマー氏はそれだけの台数生産をすれば、必要となるバッテリーも膨大になるわけで、パワーエレクトロニクスと並んでバッテリー事業は新しいプレーヤーとして自動車産業に参入してくると説明する。

そしてここが最もコストのかかる部分でもあり、グループは電動化攻勢のサポートにLG化学、SKI、CATL、サムスンの4社がサプライやーに選ばれている。いずれも中国、韓国企業で日本のメーカーは参画していない。さらに、グループ自らがバッテリー開発にも取り組むとしているのだ。こうした取り組みには15億ユーロが必要であり、一方で、学んでいる最中にも投資を続けなければならないことも付け加えている。

また、2025年までに300GWhの電力が必要になり、2018年のテスラの総電力量の10倍に相当するという。これは他のメーカーにも求められるもので、排出規制から逆算した数値だという。それだけに自動車産業全体の問題でもあり、これを5大自動車メーカーは欧州、中国、北米の3極で展開しなければならないわけだ。

したがって、バッテリーはend to endで開発に参画することをグループの意思として決定しているという判断をしたのだ。つまり、バッテリーをサプライヤーから買い続けるのではなく、パートナーシップに基づいて、収支に関するシェアも行ない、リスクも共有するという共同体での開発、調達という方向に動いているという。

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