フォルクスワーゲンの最新技術体験会

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フォルクスワーゲングループ・ジャパンが栃木県にある「GKNドライブライン・プルーピンググランド」で、2019年4月4日に運転支援システムなど最新技術の体験会「フォルクスワーゲン テックディ」を開催したその体験プログラムをレポートしよう。

フォルクスワーゲン 運転支援システム 最新技術体験会

フォルクスワーゲンの現在のラインアップは、運転支援システムや先進安全システムなどを一括して「オールイン・セーフティ」と呼んでいる。これらは運転支援システム、予防安全システム、衝突時の安全性、衝突後の2次被害防止までを含んだものを指ししている。

ゴルフ7のホワイトボディも展示されたが、競合車と比べての技術的なアドバンテージをきちんと説明しないと、なかなか理解が難しいはずだ
ゴルフ7のホワイトボディも展示されたが、競合車と比べての技術的なアドバンテージをきちんと説明しないと、なかなか理解が難しいはずだ

今回は、多くの機能のなかで、次のような体験プログラムが組まれていた。

低μスキッドパッドでの「アクティブセーフティ/ハンドリング」

このスキッドパッドは直径140mの低定常円路で、表面にはタイルが貼られ、常時水を流すことで摩擦係数は0.3となり、圧雪路面に相当する滑りやすい路面となっている。

フォルクスワーゲン 運転支援システム 最新技術体験会

試乗車はポロ ハイライン(3気筒1.0L TSI)と、R-Line(4気筒1.5L TSI)の2台だ。この2台はエンジン違い以外に、タイヤが前者は195/55R16、後者は215/45R17という違いがあり、こうした滑りやすい路面上ではタイヤの影響が大きく現れやすい。

新型ポロは、最新モデルだけにESC/ブレーキシステムも最新バージョンらしく、ブレーキをかけた時、ABSが作動することで発生する「ド、ド、ド」という振動がほぼ皆無だ。もちろんこの滑りやすい路面では駆動をかければトラクションコントロールが作動し、ブレーキを掛ければABSが作動する状態になるが、そうした状態でステアリングをさらに切り増しするような状態でもきちんと車両が反応し、ステアリングを切った方向に曲がりこむというコントロール性の高さを体感できた。

つまりABSやトラクションコントロール、ESCによる横滑り抑制制御によってクルマの安定性を確保しながら、同時にステアリングの応答性をきっちり両立させていることがポイントになる。

フォルクスワーゲン 運転支援システム 最新技術体験会

タイヤ/サイズの違いでは、ハイラインはより穏やかなコントロール性、R-Lineはよりステアリングの剛性感を高く感じ、車体の応答性も俊敏方向であった。

登坂路での4Motionの作動と車両安定性の両立

試乗車両はティグアン TDI 4MOTIONだ。フォルクスワーゲンの4MOTIONは第5世代のハルデックス式4WDで、後輪への駆動力の伝達は高圧の油圧が瞬時に多板クラッチに作動し、タイヤ半回転といった短時間のうちに超高速で駆動トルクが後輪に伝達される。後輪への駆動トルク伝達には予測制御も採用され、もはやオンデマンド式とはいえないレベルになっている。

登坂路で色が変わっている箇所が滑りやすい路面
登坂路で色が変わっている箇所が滑りやすい路面

勾配率20%という急坂の途中に、圧雪路に相当する摩擦係数0.3の路面、アイスバーンに相当する摩擦係数0.1という2種類の路面が右輪のみにかかるようにされ、さらに摩擦係数0.3路面が4輪にかかる場所が設定されている。

滑りやすい路面を含む登坂路はオフロード・モードを選択
滑りやすい路面を含む登坂路はオフロード・モードを選択

この登坂路で一旦停止し、ドライブモードはオフロードモードにして、2種類のスプリット路面、さらに4輪がスリップする路面で登坂できるかが体験できた。スプリット路面では片側輪の空転をほとんど感じさせずに登坂を続ける。一方で4輪が空転する圧雪路面を想定した地点では、アクセルを強めに踏み込むとさすがにティグアンは車体が斜めになるが、穏やかにアクセルを踏込むと一瞬タイヤが空転するものの登坂を開始することができた。

また、この急坂を下るシーンでは、前進で下る、バックして下るの2種類を試した。こうした急坂を降りる場合はヒルディセント・コントロールが作動し、ドライバーはアクセルもブレーキも踏まずに走ることができる。ティグアンの場合は坂の下る速度はアクセル・ペダルを踏むことで設定できる。

急坂をヒルディセント・コントロールにまかせて下る。ヒルディセント・コントロールでは自動でブレーキがかかっている状態だが、片側が滑りやすい路面といった状態でも車両姿勢は乱れない
急坂をヒルディセント・コントロールにまかせて下る。ヒルディセント・コントロールでは自動でブレーキがかかっている状態だが、片側が滑りやすい路面といった状態でも車両姿勢は乱れない

下る途中には摩擦係数0.3、0.1のスプリット路面もあり、単純に自動ブレーキをかけた状態ではクルマが斜めになる恐れがあるが、ティグアンはESCも同時に作動させることで、まったくクルマは左右方向にブレることなく、アクセル、ブレーキのいずれも操作することなく下り切ることができた。

ABSと衝突被害軽減ブレーキ

いわゆるアクティブセーフティの分野に入るABSを改めて体験した。試乗車両はゴルフ7だ。80km/hの走行から目標視点でフルブレーキをかける。今回はタイヤの摩耗や過大なスキール音対策として、ブレーキをかける地点はウエット路面としていた。

フルブレーキをかけた時点でノーズダイブが少ない、つまり十分なアンチダイブ・ジオメトリーのサスペンションになっているのがゴルフの特長だ。

フルブレーキをかけた状態でステアリングを切ってレーンチェンジ
フルブレーキをかけた状態でステアリングを切ってレーンチェンジ

もうひとつは、80km/hからフルブレーキをかけ、さらに前方にある障害物を避けるためにステアリングを素早く切る。つまりウエット路面でフルブレーキ状態でのレーンチェンジを行なった。もちろんフルブレーキでABSが作動している状態でステアリングを切るため、ゴルフはきちんとレーンチェンジを行なって停止する。フルブレーキ+ステアリング操作でもまったく車体の応答遅れや姿勢の乱れが生じないため、安心感がある。

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また、このABS作動状態で、ペダルのキッキバックは極めて微小なので、特にABSの作動を体験したことのないドライバーでもペダル振動で驚くことはないのもメリットだと思う。

衝突被害軽減ブレーキ、つまり緊急自動ブレーキの体験での試乗車は「up!」だった。「up!」のシティエマージェンシーブレーキは、現在でも赤外線レーザーセンサーのみによる緊急自動ブレーキシステムだ。そのためカメラやミリ波レーダーを使用する現在のほとんどのクルマとは違って、動作範囲は5km/h以上〜30km/h未満と、市街地に限定された機能になっている。

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25km/hの速度で前方の障害物に接近し、レーザーセンサーの検知範囲(障害物方10m未満)に入ると、自動ブレーキが作動し、障害物ギリギリで停止する。したがって車速が30km/hでは軽く障害物に接触してしまう。そういう意味で、赤外線レーザーを使用した緊急自動ブレーキは今日においては限定的というべきだろう。

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渋滞モード対応アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)

渋滞モード対応アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)やレーンキープアシストの体験は、外周路を使用し、パサート、アルテオンで行なわれた。ACCは先行車に追従し、先行車が減速すればそれに合わせて減速し、先行車が加速すれば自動的に加速する。そして渋滞などを想定し、先行車が停止すると自車も停止し、停止時間が3秒以内であれば先行車に合わせて自動発進するシステムだ。

自動加速、自動減速は違和感のない制御が行なわれ安心感がある。先行車との間に別のクルマが割り込んだ場合は、少し強めのブレーキが掛かるが、それも滑らかだった。またレーンキープアシストによるステアリングの自動の動きも穏やかで過剰な操舵トルクを発生しないので扱いやすい。

ACC作動時にはステアリングに軽く手を添えるだけで、アクセル、ブレーキの操作はなし
ACC作動時にはステアリングに軽く手を添えるだけで、アクセル、ブレーキの操作はなし

ただ、ACCが作動している状態でカーブに差し掛かると、先行車を見失う場合がある。それには気象条件、日差し、カーブの大小など様々な要因があり、一定の条件ではないのですこしやっかいだ。その見失った状態になるといきなりステアリングアシスト機能が解除され、ACCの設定速度が高い場合はその速度まで回復しようと加速を始めるので、軽くステアリングホイールに触れているだけのドライバーは戸惑うことになる。前方の先行車両をシステムが見失ったときは何らかの警告がある方が親切だろう。

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実はこの「フォルクスワーゲン テックディ」は、全国のフォルクスワーゲン販売店の新入社員向けトレーニング用プログラムのため、プログラムの内容はあくまで初心者向けのシンプルな内容になっていた。様々なプログラムを体験させるインストラクターもディーラーマン向けトレーニング専門の担当者のため、専門用語などは極力使用せず、プログラムを進めて行く。

ただ、少なくともクルマを売る仕事の人たちのためには、もう少し世の中のクルマのトレンドなどを説明し、その中でプログラムの中身を意味づけた方が、こうした体験の価値を理解しやすいのではと感じられた。

また、新入社員がこうした、おそらく初めての体験をどのように受け止めたのかは興味がある。と同時にフォルクスワーゲンはアクティブセーフティから衝突後の安全対策までをカバーする全方位の安全思想とデバイスを「オールイン・セーフティ」として提唱しているのだから、こうした安全システムの体験プログラムは、ユーザー向けにこそ開催するべきだろう。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

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