ボルボ T3エンジン搭載のV40シリーズ ニューボルボの実力

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新開発された1.5Lターボエンジンを搭載したボルボV40 T3

ボルボはフォードグループからの独立をきっかけに、自社でエンジン開発が始まり4気筒のガソリン、ディーゼルエンジンを搭載したモデルが続々とデビューを始めている。今回試乗できたのはT3というガソリン1.5Lターボエンジンを搭載するV40で、一般道、高速道路でのテストドライブをしてきた。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

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ボルボは2013年後半からスウェーデン・シュデブ工場で自社開発のエンジン生産が始まり、国内では2014年2月からT5という4気筒ガソリン2.0Lターボエンジンを導入し、2015年7月にT4、ディーゼルのD4と導入。今回が第4弾としてT3が導入された。

搭載するモデルはV40とV40クロスカントリーで、試乗したのはV40のSEグレード。ボルボはプレミアムセグメントのポジショニングとしており、ライバルはアウディA3、BMW1シリーズ、X1シリーズ、メルセデスAクラス&GLAなどがある。また、近年アップマーケットをターゲットにするプジョー308HB、308SWも比較対象になるだろう。また量販カテゴリーでありながらプレミアムの日常化を謳うフォルクスワーゲン・ゴルフ7もライバルだ。

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T3エンジンは最高出力152ps、最大トルク250Nmのスペックを持つ

T3エンジンとは
新開発されたT3エンジンを少しおさらいすると、4気筒で排気量は1.5L。シングルターボを搭載。T4、T5の2.0Lエンジンのショートストローク版で、ボア径は2.0Lエンジンから変更はない。ボルボはディーゼルも含め共通部品化を進めており、生産効率も高めている特長がある。つまり構成部品の3/4が共通あるいは類似部品であり、専用パーツが少なく効率、コスト面でのメリットがるわけだ。

エンジンの特徴としてデンソーとの共同開発で200Barという高圧の燃料噴射を持つ直噴エンジンというポイントがある。インジェクターも6個の噴射孔を持つマルチ噴孔で1回の燃焼で最大3回まで噴射するマルチ噴射だ。当然プラグもイリジウムと強化白金を使ったタイプを採用し、燃焼速度やクリーン燃焼という特徴があるエンジンになっている。

出力は152ps/250Nmで6速のアイシンAW製トルコンATを搭載。SEグレードにはパドルシフトが装備される。またドライブモードにはエコ+モード、スポーツモードという3つのモードを備え、エコ重視から走りを楽しむモードまである。

エコ+モードではシフトポイントが変わり、低回転でのシフトとなり、またアクセルの踏み込みに対してエンジンの反応も穏やかに変化する。また、アイドリングのスタートストップ機能では7km/h以下から止まり、積極的にアイドリングストップを行なう。通常のドライブモードでは完全停止のときにだけアイドリングストップが稼動する。

さらに65km/h以上の速度で走行中にアクセルをオフにするとエンジンとミッションはクラッチで切り離され、惰性走行のエココースト機能が働く。これらの機能により燃費を最大5%改善している。

インプレッション
注目はエンジンのパワー。152ps/250Nmのスペックで、V40のエントリーモデル。さらにボルボブランドでもボトムに位置するV40 T3ということだが、プレミアムブランドをライバルとするだけに、期待も大きい。

試乗車は明るい色のファブリックシートのホワイト、ベージュ系の色でまとまったSEグレードで、高級車な印象のあるインテリア。メーターパネルにあるエンジンスタートボタンを押して、始動し、走り出す。

ステアリングも程よく重さがあり、しっかり感のある印象だ。1.5Lターボエンジンは低回転でもトルクを感じさせる制御がされ、市街地走行において小排気量を感じる場面はない。シフトも滑らかに、小気味良くアップシフトしエンジン回転も低いまま走る。<次ページへ>

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高速道路ではエコ+モードを試す。惰性で走るエココースト機能だがクラッチから切り離されるとエンジンはアイドリング状態となり滑空走行する。車速が落ち再びアクセルと踏むと自動でつながりエンジンも回転があがる。トルコンのメリットなのか、再接続のショックは全くなく滑らかに再加速が可能だ。

100km/h走行時は1800rpm付近を指し、車内は静かだ。だが、追い越しなどでアクセルを踏み込むとエンジン回転があがり、その際の音が少し物足りない。高級車というイメージにするなら静音方向だし、スポーティに感じさせるのであれば、気持ちのよいサウンドが聞きたい。

T3エンジンは一般道、高速道路ともに大きな不満もなく、省燃費グレードになる。V40で16.5km/L、クロスカントリーで16.0km/Lだ。一方、V40モデルに共通した印象では、ハンドリングが気持ちよく、乗り心地もいい。

特にFFモデルで言えばアウディのハンドリングとそん色なく、スポーティなプレミアムという印象が持てる。以前S60/V60導入時ではハンドルの切り始めと、増し切りのときでは舵角に対してノーズの回頭量に差があったが、V40シリーズでは解消している。そのためより正確なハンドリングという印象で、気持ちのいい領域といえるだろう。

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乗り心地は運転席でしか体験できなかったが、凸凹の入力も丸く、V40SEに装着する205/50R17サイズを活かした乗り心地、ハンドリングだと感じた。高速での安定性が高く、長距離も楽に移動できるだろう。ロードノイズも低く、非常に快適性に優れた印象だ。また、クロスカントリーは試乗していないが、より乗り心地はマイルドで大人な印象となることが容易に想像できる。

ブランドヒエラルキー
今後のボルボは、4気筒以下のエンジンを搭載し、大排気量を搭載することはないだろう。ただ、プレミアムブランドとしてのポジショニングであるなら、ハイパフォーマンスモデルも必要となるわけで、ボルボとしては、モーターを搭載することでブランド価値やインテリジェンスを高める手法をとり、エボリューションモデルのポジションにはポールスターブランドでアピールしていくのではないだろうか。

V40のエントリーグレードを試乗してみて、インテリア、エクステリアのデザインセンスにはボルボならではという印象があり、北欧をアピールするに十分なインパクトがある。明らかにドイツ、フランスブランドとは異なる手法を持っていることがわかる。

唯一、操作系のフィールにもプレミアム感の演出はこの先要求されてくると感じた。人が触れ、操作する際に、そのフィーリングでも高級感を得られるのか?ということもポイントとなるだろう。

また、安全への取り組みに積極的なボルボは、このボトムブランドのエントリーグレードにも先進の安全装備をはじめ。アダプティブ・クルーズコントロールを全車標準装備としている点は非常に高く評価できる。

それでいて、価格が戦略的であり、輸入車Cセグメントでのクルマ選びにおいてユーザーは悩ましくなっただろう。V40 T3は性能面のトータルが丸い印象のクルマで、妙に尖ったところがなく量販モデルという印象もある。一方デザイン面は個性的であり、他の輸入車とは一線を画するものがあり、惹きつけられる魅力を持っていることも間違いないというモデルだった。

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