ボルボは2015年7月からクリーンディーゼル「D4」エンジンを5車種に一挙投入した。9月にはこのD4エンジン用にスポーツ・チューニング仕様のポールスター・パッケージを設定。さらに10月には6車種目としてV60 クロスカントリーD4 SEを追加するなど、D4エンジンのラインアップを拡大している。
この結果、販売面でもV40、S60/V60で50%がD4エンジン、SUV系のV40クロスカントリーやXC60の70%がD4エンジン搭載モデルとなり、急激にディーゼル・エンジンの比率が高まっており、クリーンディーゼルが好評であることを物語っている。
こうした背景の中で2015年12月8日に限定車のV40 D4 R-DESIGNが発売された。今回は200台限定のスポーツモデルだが、D4エンジン車で初の「R-DESIGN」であり、競合車も含めてCセグメントでも初のディーゼル・スポーツモデルだ。
R-DESIGNモデルとあって、専用のエクステリア、インテリアとなり、18インチ・アルミホイール、R-DESIGNスポーツ・サスペンションを備えている。このスポーツ・サスペンションは標準サスペンションに比べスプリングレートをアップし、ダンパーも減衰力を高め、特にリヤはモノチューブ式でスタビライザーも強化されている。
V40 D4 R-DESIGNは特別限定車らしく充実した標準装備とされ、パノラマ・ガラスサンルーフ、ハーマン・カードン製のプレミアム・サウンド・オーディオ、レザーパッケージなど通常はオプション設定の装備をすべて備えており、コスト・バリューが高められている。
さらに2016年の初売り期間までに注文すると、エンジンのパワーを一段とアップさせる「ポールスター・パッケージ」(18万8000円)がサービスされるので、さらに買い得感が高いのだ。
試乗車はこのポールスター・パッケージを装備したモデルだった。つまりエンジンのパワーは標準のD4エンジンより10psアップの200ps、トルクは40Nmアップの440Nmとアップグレードされている。組み合わされるトランスミッションはもちろん8速AT。ちなみにポールスター・パッケージにチューニングしてもJC08モード燃費は標準モデルと同等の20.0km/Lとなっている。
エクステリアは専用のバンパーデザインやシルクメタルのグリル、シルクメタル調の90mm径のテールパイプやドアミラーカバーなどを備え、派手ではなく渋く洗練されたデザインだ。
インテリアは上質な本革、センターコンソールのジュネーブ・ウエーブと呼ばれる金属研磨仕上げにブルーのストライプのコーディネートなどにより、スポーティさというよりは上質感が強調されている。インテリアの洗練された高い質感は、このクラスでもアウディA3とこのクルマはトップレベルだと思う。
ポールスターパッケージのD4エンジンは、ディーゼルとはいえ一味違う。標準のD4エンジンはディーゼルとは思えないほど滑らかだが、ポールスター仕様はさらに軽く吹け上がり、アクセルオフしたときの回転の落ちももたつきがなく気持ちよい。強力なトルクのガソリン・エンジンに近いフィーリングなのだ。だから、加速でも減速でもレスポンスがよく、気持ちよいフィーリングに感じられる。
もちろん最大440Nmという強力なトルクを生かした走りも期待通りのレベルと言える。日常的な走りでは2000rpm以下で事足りるし、2000rpm以上回せば強力で気持ちよい加速が満喫でき、静粛な余裕のある走りと、その気になればアクセルを少し多めに踏み込んでのスポーティな走りも楽しめる。8速ATとのマッチングも優れており、アクセルの踏み加減に合わせた変速が行なわれ、しかも変速のショックもまず感じられない。
乗り心地はR-DESIGNだけに、かなりスポーツ性が高く、引き締まっているが、以前のR-DESIGNよりはしなやかさが増しているように感じられた。ただそうはいってもダンパーの減衰感が強く、凸凹路では体が揺すられるようなオーバー減衰感を実感する。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ3、サイズは225/40R18だが、スポーツ・サスペンションとのマッチングも文句なしで、正確でダイレクト感のあるハンドリングもスポーツモデルとして申し分ない。
スポーツフィールが実感できる走りと同時に、V40がフル装備しているドライバー支援/アドバンスドセーフティシステム、特にアダプティブレーダークルーズや、レーンキープアシスト、道路標識の表示などは長距離ドライブといった時に疲労が少ない。また試乗車に限らず2015年モデルから装備されているセンサス・コネクトの使い勝手のよさも評価すべきだろう。インフォテイメント、ナビなどの操作がステアリング右側のダイヤルとスイッチと音声により完全にコントロールでき、コマンド・ダイヤル式のようなドライバーの視線の移動もないので安心であることはもちろん、何よりバツグンの操作性なのだ。
ナビの目的地なども、名称を発音するだけで設定でき、地図画面の拡大や縮小などもすべて音声でコントロールできる点などは、ボルボのマン・マシン・インターフェースのフィロソフィーを身をもって体験できる。