ボルボ 60シリーズ試乗記 Drive-EのT3&T6エンジンと新ミッションの恩恵は大きい

マニアック評価vol428

新たなパワートレーンを搭載した60シリーズの仕上がりはいかに!?
新たなパワートレーンを搭載した60シリーズの仕上がりはいかに!?

ボルボの主力車種である60シリーズが一部改良し、搭載するパワートレーンを刷新。新開発のパワートレーン戦略として位置付けられている「Drive-E」シリーズに置き換わった。早速試乗してきたのでそのフィーリングをレポートしよう。<高橋 明/Akira Takahashi>

ボルボ60シリーズにはスポーツセダンのSレンジ(S60)とワゴンのVレンジ(V60)があり、さらにSUVのXC60、クロスオーバーのV60クロスカントリーとフルラインアップしている。今回新規に置き換わったパワートレーンは、S60/V60に搭載するT3とS60/V60/XC60のトップモデルに搭載されるT6となる(V60クロスカントリーは変更なし)。

今回の改良はパワーユニットの換装でデザイン面の変更はない
今回の改良はパワーユニットの換装でデザイン面の変更はない
S60のサイズと車格を考えると3気筒は役不足か?
S60のサイズと車格を考えると3気筒エンジンでは役不足か?
60シリーズのなかで大きなシェアを獲得し主力モデルとなっているXC
60シリーズのなかで大きなシェアを獲得し主力モデルとなっているXC
T6は60シリーズすべてでAWD(4WD)のみのラインアップ
T6は60シリーズすべてでAWD(4WD)のみのラインアップ

これまでS60/V60に搭載していたT4系は廃止となり、T3へとなった。T3は1.5Lの4気筒ガソリンターボで152ps/250Nmというスペック。アイシン製6速ATが組み合わされている。T3はエントリーモデルというポジションで、JC08モード燃費は16.5km/Lでエコカー減税対象モデルだ。価格は434万円(V60は454万円)。

1.5L直列3気筒ターボ。アイドリングストップ機能も搭載
1.5L直列3気筒ターボ。アイドリングストップ機能も搭載

また、このS60/V60のトップモデルには新しいT6系のパワーユニットに換装されている。従来のT6は直列6気筒横置き3.0Lガソリンだったが、今回のT6は4気筒2.0Lガソリン+ターボ&スーパーチャージャー(SC)にアイシン製8速ATを組み合わせている。そのスペックは306ps/400Nmで、JC08モード燃費は13.6km/L(V60は12.8km/L)でエコカー減税の対象にもなっている。価格は614万円(V60は634万円)だ。ちなみに、T6搭載のS60/V60およびXC60はいずれもAWDのみの設定で、R-DESIGNのモノグレードとなっている。

ターボ+SCのツインチャージャーで2.0LにダウンサイジングしたT6エンジン
ターボ+SCのツインチャージャーで2.0LにダウンサイジングしたT6エンジン

ラインアップを整理すると、今回のエンジンの変更によりすべてDrive-Eのパワートレーンとなり、4気筒のガソリンとディーゼル搭載へと整理された。S60/V60はT4が消滅しT3搭載の1.5Lターボ、D4は4気筒2.0Lターボのディーゼル、T5が2.0Lターボのガソリン、そして最上級が今回のT6で2.0Lターボ+SCということになる。

一方、XC60シリーズのエントリーモデルはD4のディーゼルから始まり、T5、T6とラインアップする。だが、T5のみ新パワートレーンのDrive-Eシリーズ前のタイプで、2.5Lの5気筒ガソリンターボ+6速ATが搭載されている。いずれDrive-Eシリーズへと換装されると予測できる。

■3気筒ターボのT3はプレミアムか?

セダンのS60の試乗車は1.5L直列3気筒ターボのT3
セダンのS60の試乗車は1.5L直列3気筒ターボのT3

さて、今回試乗したモデルとグレードは、「S60 T3 SE」と「XC60 T6 AWD R-DESIGN」の2タイプ。S60のT3はエントリーモデルではあるが、SEグレードにレザーパッケージのオプションをプラス(31万円)しているので、十分な高級感とプレミアムモデルらしさを備えていた。

エンジンの排気量は1.5Lだけにトルク感やパワフルさへの疑問がある。試乗ルートは千葉県の成田市周辺で市街地と高速道路を試走。一般的なクルマの走行パターンとほぼ同じような環境だと思う。そうした環境で走らせてみると、スタートダッシュでは1.5Lとは思えないトルク感のある走り出しで、ターボが低回転から稼働しているのだろう、アクセル開度によっては周りのクルマをいとも簡単に置き去りにできる。

T3でも加速や高速クルーズに不満はない。T6は余裕綽々
T3でも加速や高速クルーズに不満はない。T6は余裕綽々
T3のトランスミッションは6速ATで新開発
T3のトランスミッションは新開発となる6速ATを組み合わせる

実際のアクセル開度よりも開いている信号を送っている、いわゆるアクセルの早開き設定は特に違和感なく出足好調を印象付ける。したがって市街地ではなんの不満もなくプレミアムモデルらしい走りが味わえる。

高速道路への合流でも車速の伸びに不満はない。40km/hから100km/hまで加速車線で加速する際も、床いっぱいアクセルを踏みつけることは不要だ。通常の加速フィールより少し踏み込めば、十分に車速は上がるので、パワー不足を感じることもない。

T3はエントリーグレードとはいえ装備は充実する
T3はエントリーグレードとはいえ装備は充実する
T3はエントリーグレードとはいえ装備は充実する
T3はエントリーグレードとはいえ装備は充実する
集約されたスイッチはボルボ定番レイアウト
集約されたスイッチはボルボ定番レイアウト
T3 SEにレザーパッケージのオプションを装着した室内は上質
T3 SEにレザーパッケージのオプションを装着した室内は上質
全長4635mm、ホイールベース2775mmなので後席の居住性も高い
全長4635mm、ホイールベース2775mmなので後席の居住性も高い

しかし、高速での追い越し加速では、市街地での出足の良さのフィールより鈍くなる。アクセルも思い切って踏み込むことになり、レアケースであろうが排気量の影響を感じる場面でもある。とはいえじれったい加速ということではなく、市街地でのフィールが良いだけに印象の違いがあるという意味だ。

■2.0LツインチャージャーのT6の実力は?

XC60は最上級グレードのT6 AWD R-DESIGNに試乗
XC60は最上級グレードのT6 AWD R-DESIGNに試乗

一方T6を搭載するXC60は、R-DESIGNのAWDでXCのトップモデル。専用の内外装とスポーツサスペンションを装備し、19インチサイズのタイヤ&ホイールを履いている。比較対象は以前の6気筒3.0Lエンジンに対し、2.0Lツインチャージャーはどう変わるか?ということになるが、馬力では304psと306psで2psアップし、トルクでは400Nmと440Nmで40Nmダウンしている。

R-DESIGNは専用20インチアルミホイールやスポーツサスペンションが奢られる
R-DESIGNは専用20インチアルミホイールやスポーツサスペンションが奢られる
T6エンジンには新開発の8速ATが組み合わされる
T6エンジンには新開発の8速ATが組み合わされ、より上質かつ緻密な走りをもたらす

さて、その違いとなるが、市街地ではスーパーチャージャーの過給により、低速からでもトルクが立ち上がるので1880kgの重量も気にせず加速していく。力強さを感じさせパワフルさも感じる。実はドライブトレーン系がコンパクトに軽量化されたため、新世代のXC60は以前のT6より車両重量で-50㎏というデータもあるのだ。

高速道路ではどうか? もちろん、そのパワフルさに影はない。欧州の長距離ドライブを快適にこなす実力は日本の100km/h制限では余裕だ。中間加速も申し分なくさらに燃費も改善されているので、新世代のメリットは十分感じられるに違いない。

専用のステアリングホイールやメーターパネルなどが装備されるR-DESIGN
専用のステアリングホイールやメーターパネルなどが装備されるR-DESIGN
R-DESIGNはシートも専用で本革×パフォーレーテッドレザーのコンビとなる
R-DESIGNはシートも専用で本革×パフォーレーテッドレザーのコンビとなる
XC60の後席はセダンと異なり4対2対4分割可倒式シートバックとなる
XC60の後席はセダンと異なり4対2対4分割可倒式シートバックとなる

ボルボと言えば「安全」というイメージを持っている人も多いだろう。この60シリーズのボルボも従来通り、ミリ波レーダー、カメラ、赤外線レーザーによる歩行者、自転車検知機能付き衝突回避・軽減ブレーキシステム(自動ブレーキ)や全車速追従タイプのACCなど10種類の安全装備、運転支援機能をIntelliSafe(インテリセーフ)として60シリーズ全車に標準装備している。それでいて価格的も魅力的でありプレミアムモデルとしてはコスパに優れたモデルと言えるだろう。

S60の主要諸元
V60の主要諸元
XC60の主要諸元

<価格表>
24_price
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