ボルボの新しいパワーユニットDrive-Eを搭載したS60/V60試乗会があり、参加してきた。
◆ポジショニング
Drive-Eのテクノロジー詳細解説でしたように、ボルボS60、V60、XC60にはこれまでフォード製のエンジン+ゲトラグ製のトランスミッションを搭載していたが、ボルボ自社によるエンジン開発から生まれた新パワーユニットDrive-Eを搭載した。
かつてボルボはフォードグループであったために、フォード製品を採用する義務などの制約があったが、2008年中頃からボルボ・カー・グループとしての独立に向けた基盤整備が始まった。そのタイミングあたりで新開発のオリジナルエンジン開発が加速し、2013年後半スウェーデンのシュデブ工場でエンジン生産が開始された。
すでに当サイトでもDrive-E搭載のXC60のドライブインプレッションはお届けしているが、60シリーズのメインであるセダンとエステートにもようやく搭載が進み試乗することができた。新パワーユニットはT5 SEグレードに搭載され、出力は245ps/350Nmで、BMW328iに搭載するパワーユニットと全く同じスペックになっている。
グレード展開としては1.6L+6速ギヤトロニック(DCT)を搭載するT4、T4 SE。それにトップモデルとなるT6はAWDで6気筒横置き3.0Lターボの6速ギヤトロニック(ロックアップ付きAT)は継続して販売される。そして今回の2.0Lターボ搭載モデルがT5 SEという新グレードとして設置したわけだ。
ボルボはドイツプレミアム御三家に挑むメーカーであり、とくに安全装備、安全技術には強いこだわりのあるメーカーである。S60/V60はFFモデルとAWDモデルがあり、ライバルとなるのはアウディA4と比較するのが妥当なのだが、ハンドリングへの自信やスポーティさをアピールするためか、ボルボ関係者からはしばしばBMW3シリーズの名前が出てくる。
価格帯は379万円(5%消費税込)から559万円(5%消費税込)で、ドイツプレミアムモデルよりお買い得感のある設定だ。
◆インプレッション
今回試乗したモデルの基本は、2013年秋に発表された2014年モデルに2.0Lターボモデルが加わったということで、1.6Lターボ+6速DCTのT4に試乗した際、排気量は違うが、そのハンドリングの軽快さからライバルとしてBMW3シリーズが視野に入るというレポートをしている。
そして今回いよいよBMW328iと全くの同スペックとなったT5 SEのインプレッションとなる。試乗コースは箱根周辺のワインディング、高速、一般道である。
ちなみにボディサイズをBMWのF30型3シリーズのセダンと比較してみると、全長:ボルボが4635mmとBMW4625mm、全幅:ボルボ1845mmでBMW1800mm、全高が1480mmと1440mm、ホイールベースが2775mmと2810mmということで、わずかにボルボS60のほうが大きい。車両重量ではボルボの1875kgとBMWの1835kgとここでは40kgの差がある。
ボルボのDrive-Eの最大の特徴はその滑らかさではないだろうか。低速から高速回転域まで滑らかに回る。もちろんトルクフルで低速からの力もしっかりあり、渋滞や駐車場で細かく動く時のスムーズさや滑らかさは気持いい。また40km/hから60km/h付近で走る市街地走行でもハイギヤを選択し粘るので、低燃費走行しているのを感じる。こうした低速域ではATの滑らかさによる効果も大きいのだろう。したがってエンジンも静かで滑らか、シフトショックも滑らかで非常に上質感を感じる走行フィールと言える。
高速域でも同じように滑らかなエンジン回転で、高回転になってもエンジン音はあまり大きくならない。もっともアイドリング音を外で聞くと直噴のインジェクターの音などそれなりに音を出しているが、遮音性、静粛性を高めているため車内では非常に静かに感じる。これは高回転になっても車内での静かさは保たれ、高級車に相応しいと思う。ミッションのギヤ比は6速が1.000なので7速、8速がオーバードライブになる。しかし、何速で走行しているのかは。Dレンジではまったくわからず、ただただ滑らかで快適としか感じない。
ワインディングになるとボルボT4で感じた軽快さを期待するが、エンジン自体の重量もそうだが、トルク、馬力がアップした分T4とは異なった。特に登り勾配でリヤ荷重となってしまうような場所では、アクセルを踏み込むとトルクステアを感じる。これはT6では感じなかったもので、T5特有のものだろう。実は平坦な交差点などでも少しその傾向があると思うが、市街地ではフルトルクをかけるようなことをしないため、気づかなかった。逆に下り勾配は安心してアクセルを踏める。ブレーキもしっかり効き安心感はある。
ハンドリングではこれまでのモデルと同じだと思うが、今回改めて試乗してみると、直進時の微小舵角の時の反応とコーナリング時の微小舵角の反応の違いが少し気になった。つまり、直進時は俊敏に反応するが、コーナリング中に操舵したとき、それほど敏感には反応しない。したがって直進時の俊敏さを少し鈍くすれば、全領域で反応の違いはなくなるのではないかと思った。
とはいえ、重箱の隅をつつくような話で電動パワーステアリングのフィールは総じて良好で、手ごたえ感もありインフォメーションはドライバーに伝わってくる。電動パワーステアリング特有の妙なゲインもなく、油圧のように滑らかに操舵できる。低速、高速いずれの速度域でも操舵感は適度な重さもあり、電動パワーステアリングの制御レベルは高いと感じた。
ボルボは自動運転の第一歩となるモデルを2014年には発表し、さらにボルボが進めるSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)という新世代のプラットフォーム/ボディ構造を採用したモデルXC90も登場してくる。これからのボルボは新たな技術を投入し、今回のDrive-Eは次世代ヴィークルのメインニューパワーユニットのひとつと考えることができるだろう。
■60シリーズ価格表