ボルボは、2012年10月24日、新しい渋滞支援システムを実証し、自動運転の実用化に向けて一歩前進したと発表した。この新しいシステムは、最高50km/h以下のゆっくりとした速度で走る渋滞の車列内で、自動的に前方車両を追従するもので、2014年には市販車に搭載される予定だ。
「このテクノロジーは、都市部の日常走行における単調なノロノロ運転を、よりリラックスした時間へと変えてくれます。渋滞支援システムは、混雑した道路において安全で快適なドライブを提供します」と、ボルボ社の研究開発担当上級副社長、ピーター・メルテンスは述べている。
都会の通勤時に渋滞はつきもので、アメリカの国勢調査局の調査によると、アメリカ人は年間100時間以上をクルマでの通勤に費やしている。これは、多くのアメリカ人が取る年間平均2週間の休暇時間(80時間:一日の労働時間を8時間、週5日勤務とした場合)を上回るのだ。ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ロサンゼルスといった大都市のドライバーは毎日の通勤のために、さらに多くの時間を渋滞した車列に並んで過ごしている。
「このような状況は、世界中の主な都市部でも同様か、あるいはさらに悪い状況の地域もあります。渋滞支援の目標は、通勤時のドライバーのストレスを少しでも軽減することです」と、ピーター・メルテンスは語る。
この渋滞に対応した支援システムは、現行の「アダプティブ・クルーズコントロール」と、2012 年に発表された新型ボルボV40(日本での発売は2013年春を予定)に搭載された「レーン・キーピング・エイド」を進化させたものだ。このシステムではまずドライバーがスイッチを押し、渋滞支援の機能を作動させる。システムが作動すると、エンジン、ブレーキ、ステアリングが自動的に反応するようになる。アダプティブ・クルーズコントロールは、前方車両との距離を自動的に一定に保つと同時に、ステアリングも自動でコントロールする。
「このシステムを搭載した車両は、同じ車線の前方車両を追従します。しかし、運転の責任は常にドライバーにあります。ドライバーは、いつでも瞬時に自分のコントロール下に戻すことができます」と、ピーター・メルテンスは語る。
ボルボ社は自動走行(ドライバーの介入をほとんど必要とせずに、ステアリング、アクセル、ブレーキを自動的に制御する走行)を重要な研究対象としている。
「私たちの目標は、コンセプトレベルから脱却させ、技術を開発して実際にお客様のもとにお届けできるようにすることで、自動走行の分野における業界のリーダーシップを確立することです。これらの機能の信頼性を向上させ、簡単に使用できるようにすることが、自動走行するクルマのお客様の安心感を高めるために重要です」と、ピーター・メルテンスは語る。
今回の低速時に作動する渋滞支援システムは、ボルボ社によって実証された自動走行関連の技術で、2例目となる。数週間前、ボルボ社は最高90km/hの速度で、高速道路および自動車専用道路を隊列走行することを目的としたSARTRE(Safe Road Trains for the Environment:環境のための安全なロードトレイン)プロジェクトを実演している。。
ボルボ社はこうした実証実験と同時に、「人」を中心に据えた設計に焦点を当て、自動走行車両に対するユーザーの意識調査も実施している。2011年にボルボ社は高級車のオーナーを招き、ボルボのテストコースにおいて、渋滞支援システムの初期プロトタイプも含めて、未来の運転支援技術を評価してもらったという。
参加者の1人は、次のようにコメントした。「通勤のストレスを軽減する完璧なサポートシステムです。渋滞時には、周りのクルマに合わせて速度や車間距離を常に調整しなければならないため、足が疲れたり膝が痛くなったりします。このシステムは、このような苦痛からドライバーを解放してくれます」
今回発表された渋滞支援のテクノロジーは、2014年に導入予定のボルボ社の新しい量産プロジェクト構想に組み込まれる予定だという。
「このプロジェクト構想は、ボルボ社の未来のテクノロジーを市販車に搭載することを可能にすることを目的に構築されています。ボルボ社が生産する車両の多くが、この新しいプリジェクト構造に基づいて開発されることになり、車両の共通化を促進し、それによる量産効果によって将来的にボルボ社の競争力を高めることになります」と、ピーター・メルテンスは語っている。