【テスラ】日本初公開! テスラ「モデルS」のオールアルミ・シャシーの全貌

フリーモント工場で生産されるテスラ モデルS

2012年8月30日、テスラモーターズ・ジャパンは東京・青山のショールームで「テスラ・モデルS」のシャシー展示が始まった。この機会にテスラ社のバッテリー担当部長のエンジニア、カート・ケルティ氏が、シャシーの特徴を解説した。

「モデルS」は同社のロードスターに続く電気自動車(EV)第2弾として、2009年3月に発表され受注を開始したプレミアムクラスのセダンだ。しかし実際の量産化はかなり遅れ、発表から2年以上経過した2012年の6月にようやくアメリカでの納車が開始された。

モデルSの製造はカリフォルニア州のフリーモント工場(旧・GM/トヨタの合弁工場NUMMI)で、これまでに約100台が生産されたが、納車計画に従えば今年中に5000台をライオンオフさせなければならないという。

本格的上級EVセダンとして開発されたテスラ モデルS

モデルSは、BMW 5シリーズ、メルセデスEクラス、アウディ6のカテゴリー、つまりプレミアムクラスのセダンとして企画され、オールアルミ・ボディ、5人乗車+2(子供用の後ろ向き2座席)のキャビン、リヤ・アクスル上にまとめられたモーター/インバーターを備えた後輪駆動システムというパッケージングになっている。

ケルティ氏は、「テスラ初の完全オリジナルのEVプラットフォームを採用している」と説明する。同社のテスラ・ロードスターはロータス・エリーゼのシャシーを使用し、組み立ての大半をイギリスで行っていることや、もともとガソリンエンジン車のシャシーを使用していたからだ。

これに対してモデルSは、最初からEV専用のプラットフォームとして設計され、生産工場も自社工場、つまりはテスラ・オリジナルの1号車ということができる。

上面から見たモデルSのプラットフォーム。キャビンのフロア面全体がバッテリーパッケージ

モデルSはフラットなフロア面のバッテリースペースになり、スペース・ユーティリティが高く、同時に低重心化も実現している。この床面に汎用規格のリチウムイオン電池「18650」を立てた状態で多数配置されているという。

テスラ・ロードスターは当初は民生用、つまりパソコンなどに使用される「18650」を使用して注目を集めたが、後期モデルでは自動車用規格の18650型リチウムイオン電池にグレードアップさせている。しかし、モデルSは当初から自動車用の18650規格電池を使用することを決めている。
またテスラ社はパナソニックと資本提携をし、パナソニック製の高出力な18650電池が供給されることになっているが、ケルティ氏は「単一メーカーに依存せず複数メーカー購買を行う」と語っている。


↑バッテリー開発担当のカート・ケルティ氏    ↑18650規格のリチウムイオン電池

モデルSは、バッテリーパッケージの容量は40kWh、60kWh、85kWhという3種類がラインアップされており、それぞれ航続距離が160マイル(約250km)、230マイル(約370km)、300マイル(約490km)となっている。つまり、ユーザーは価格と航続距離を考えて選択できるようになっている。

ホイールベース間の床下にフラット格納されるバッテリーパッケージ

なおバッテリー容量により動力性能も違いがあり、40kWh仕様は0-100km/h加速が6.5秒、最高速が176km/h、60kWh仕様では5.9秒と192km/h、85kWhは5.6秒と200km/h、85kWhハイパフォーマンス仕様では4.9秒と208km/hとなっている。

当然ながら大容量・高出力タイプの電池と低容量タイプの電池は「性能が異なるものを使用しています。ただし、バッテリーパッケージの重量はいずれのパッケージでもほぼ同じになっています」とケルティ氏は説明する。

それぞれのバッテリーパッケージで使用している電池の本数や出力は公表できないというが、大容量タイプは1本あたり4.2Vといったレベルになっていると考えられる。なおバッテリーパック容量の相違による価格差は、約100万円だ。40kWhと60kWhでは約100万円差、85kWhでは約200万円の差となる。また、バッテリーのメーカー保証は8年間・走行距離無制限となっている。

リヤ駆動ユニット。左から駆動モーター、減速機、インバーター

Sモデルの駆動系は、リヤアクスル上に左から交流誘導式モーター、減速機(減速比=9.73)、DC-AC変換用のインバーターがパッケージとしてまとめられている。これらのコンポーネンツも位置的には床下となるため、フロアのリヤエンドまで有効にスペース活用ができるわけだ。なお駆動用モーターは従来のロードスター用よりスターターの径が25%アップされ、より高出力・大トルク型になっている。出力はバッテリーパッケージ容量により異なるが、350ps〜410ps、最大トルクは400Nm〜600Nmと強大だ。バッテリーパッケージ、駆動モーター、インバーターはすべて液冷式で、「日本製EVのバッテリーは空冷式ですが、液冷は必須だと思っています」とケルティ氏は語る。

中央部がクーラント用ラジエーター、左右がエアコン用コンデンサー
手前がフロント方向。サイドフレームはアルミ押し出し材を採用

フロント部では、バンパーの中央部にバッテリー、モーター、インバーター冷却クーラント用のラジエーター、その左右に電動エアコン用のコンデンサーが配置される。ボンネット下部のスペースはラゲッジスペースとして活用され、数少ないコンポーネンツ、ABS/ESPユニット、クーラント循環ポンプ、エアコン用ポンプ、フレーキブースター用バキュームポンプ、エアサスペンション用のエアポンプがフロア面付近にレイアウトされている。

こうした特徴は後輪駆動タイプのEVならではのパッケージングといえる。ちなみにエアサスペンションはコンチネンタル社製のコンポーネンツを採用している。


↑鋳造材を使用したアッパーマウント        ↑アクティブ・エアサスペンション

プラットフォーム全体はアルミ製で、構造部にはアルミ押し出し材を多用し、入力の大きな部位には鍛造材や鋳造材も使用し、さらに補強部材としてボロン添加スチール材も採用している。

アッパーボディもアルミパネルを採用し、ボディ全体での軽量化を重視していることがわかる。前面衝突時の衝撃を吸収するフロント・サイドフレームは6角形のアルミ押し出し材を上下に2本重ねた構造で、かなり凝った構成だ。一方、側面衝突に対してはフロア面にアルミ押し出し材をクロスメンバーとして採用。強度、剛性を確保していることがわかる。

アルミ製アッパーボディとプラットフォームを組み合わせたボディ構造

サスペンションは、フロントがハイマウント式ダブルウィッシュボーン、リヤはマルチリンク式。このあたりはプレミアムクラスにふさわしいロードホールディング、乗り心地、運動性能を重視し、さらにオプションとしてアクティブ・エアサスペンションを設定し、可変車高制御を行うことができる。

タイヤ/ホイールは19インチ、21インチを設定。タイヤはグッドイヤー・イーグルRS-A2(ハイパフォーマンス・オールシーズン)を採用。19インチの場合はP245/45R19。

ブレーキはブレンド製対向ピストン型で、これもロードスターから大きく進化している。なおリヤ・ブレーキは、通常のブレーキキャリパーのほかに電動パーキングブレーキ専用のキャリパーも装備する。


↑フロント・タイヤ                       ↑リヤ・タイヤ(キャリパーが2個見える)

充電システムは、アメリカの家庭用電源(110Vまたは240V)、公共充電ステーション(80 amp)に対応している。ヨーロッパ充電規格、日本のCHAdeMO急速充電規格に対してはアダプターを用意するという方針だ。

もっとも、モデルSは長い航続距離を備えているため、充電の基本は家庭電源での夜間充電がメインとなると想定されている。

モデルSは本格的なプレミアムクラスのEVとして開発され、排気ガスゼロとスポーティな走り、優れた快適性を満足させることを狙いとしているが、現在の最大の課題は量産性に尽きるといえる。なお日本には2013年には導入したいとしている。

テスラーモーターズ・ジャパン公式サイト

COTY
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