注目のミドルクラスEV「テスラ モデル3」の真実【動画】2/2回

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テスラ初となるミドルクラスの「モデル3」は2016年3月に発表された。アメリカでのデリバリーは2017年後半からとされたが、生産の大幅な遅れにより、実際のデリバリーのペースは2018年半ばからようやく正常になりつつあることを前回ご紹介した。

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ターゲットはヨーロッパ製プレミアムDセグメント・セダン

今回は「モデル3」とはどんなクルマかを紹介しよう。「モデル3」のチーフデザイナーはフランツ・フォン・ホルツハウゼンだ。アメリカ生まれのドイツ系で年齢は51歳。1992年からフォルクスワーゲンで「コンセプト・ワン(ニュー・ビートル)」を担当して有名になり、その後はGMに移籍。さらにその後はマツダ・ノースアメリカン・オペレーションズ(MNAO)に移籍し、マツダのコンセプトカーのデザインを担当した。

2008年にテスラに移籍しチーフ・デザイナーに就任。彼はモデルS、「モデル3」、「モデルX」、「モデルY」、第二世代の「テスラロードスター」、「サイバートラック」をデザインした。フロント・グリルのないヌメッとした全体のシンプルなフォルム、クーペのようなルーフ形状などはホルツハウゼンの特長といえる。また、特筆すべきはボディの空力特性で、Cd=0.23 と現在の乗用車ではトップレベルにある。

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「モデル3」は、アウディA4、BMW3シリーズ、メルセデス・ベンツ Cクラスと競合するモデルで、パフォーマンスも価格帯もこれらのクルマを意識しているとホルツハウゼンは語っている。

テスラのエンジニアは総動員で「モデル3」の開発に取り組んだ。そして設計作業がすべて完了したのは予定より1ヶ月遅い2016年7月末であった。テスラ・ガラス社が製造するガラス・ルーフを設定するために設計が遅れたといわれている。

テスラは2016年春の段階でサプライヤーに対して、「「モデル3」」の生産目標を2017年に10万台、2018年に40万台とすることを伝えている。 そしてフリーモント工場には従来はなかった大量生産用の製造設備が導入され、大型プレス設備が2016年8月頃には稼働準備に入ったが、これらが順調に稼働し始めたわけではない。

2016年後半には社内での衝突実験を行ない、衝突安全性を検証。2017年2月上旬に「モデル3」の量産試作車が作られた。

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ボディディメンション

「モデル3」のボディサイズは、全長4690mm、全幅1850mm、全高1440mm、ホイールベース2880mmだ。まさにDセグメント・サイズ(アメリカではミッドサイズ)のセダンだが、競合車に比べ、最もホイールベースが長いという点ではEVならではの特長とも言える。

ちなみにモデルSは、全長4970mm、全幅1964mm、全高1445mm、ホイールベース2960mmのEセグメントであり、「モデル3」は全体にサイズダウンしていることがわかる。

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バッテリーパックをフロア面とするプラットフォームの基本構造は従来のモデルSを継承していると言えるが、ボディは超高張力鋼板製の骨格構造にアルミ・パネル材を組み合わせており、その構成はアウディのボディ構造によく似ている。外板ではボンネット、前後のフェンダー、前後左右のドア、トランクリッドにアルミ材を使用している。

サスペンションは、フロントが仮想キングピン軸を持つダブルウイッシュボーン、リヤがマルチリンク式を採用。電動パワーステアリングは可変ギヤ比タイプ、ブレーキは、電気機械式を採用している。

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ボディ全体は相当に軽量化を意識しており、後輪駆動のスタンダート・グレード(電池容量50kWh)で1612kg、AWDのパフォーマンス・グレードで1848kg、最大容量のバッテリーを搭載するロングレンジAWDで1845kgと驚くほど軽量になっている。この2種類のAWDモデルは75kWhの電池を搭載しているが、その重量は480kgといわれているので、逆に言えばボディ/パワートレーンに相当するモーターは極めて軽量といえる。

バッテリー・モーターユニット

リチウムイオン・バッテリーは、モデルSでは18650規格のであったが、「モデル3」はより世代が新しく、エネルギー密度を高めた2170規格のバッテリーセルを採用している。フリーモント工場ではパナソニック製、上海工場ではLG化学製を搭載。2710バッテリーは、直径21mm、長さ70mmで、容量は4.8Ah/17.3Wh、エネルギー密度は247Wh/kg(従来の18650は243Wh/kg)。

50kWhのスタンダード・パッケージでは、2170電池を2976本、75kWhパッケージでは4416本を使用。31本のセルをまとめて1ブロックとし、そのブロックをまとめてモジュール・パッケージとしている。なおこの2170規格のバッテリーセルは、テスラ社のパワーウォール(ソーラー発電+V2H用の家庭用蓄電池)にも採用されている。ちなみにパワーウォール(容量13.5kWh)の価格は82万5000円だ。

パナソニック製2710型リチウムイオン電池
パナソニック製2170型リチウムイオン電池

バッテリーパッケージは、セル間に網の目のように水路を張り巡らせた水冷式としている。75kWhのバッテリー・パッケージは全長2080mm、全幅1460mm、全高210mmで、重量は480kg。航続距離は50kWhで409km(WLTC)、75kWhで530km(ロングレンジAWDは560km)と発表されている。

200V普通充電の充電時間は50kWhバッテリーで13時間、75kWhバッテリーでは20時間。テスラ・スーパーチャージャーでは各20分、30分、チャデモ急速充電では80%レベルまで各38分、58分となっている。

日本仕様は3グレード

なお日本仕様は、FRモデルは54kWhのバッテリーを搭載する「スタンダード・プラス」、75kWhのバッテリーを搭載するデュアルモーターAWDが「ロングレンジ」、「パフォーマンス」の2種類と合計3グレードがラインアップされている。

パワートレーンは、後輪はモーター、インバーター、減速ギヤを一体化したeアクスルになっており、モーターは永久磁石同期リラクタンス式を採用。永久磁石にはネオジム磁石を使用している。

AWDのフロント・モーターは従来通り誘導式モーターとしている。出力は後輪駆動のリヤ用が340ps/450Nm、ロングレンジAWDの後輪駆動用は256ps、前輪駆動用は200ps、合計出力453ps/510Nm、パフォーマンスAWDは合計出力588ps/652Nmだ。なおロングレンジAWDでもオプションのスポーツモードを選ぶと564Nmの最大トルクとなる。

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0-100km/hの加速性能は、スタンダードは5.6秒、ロングレンジAWDは4.6秒、パフォーマンスAWDは3.4秒。最高速はスタンダードが209km/h、ロングレンジAWDは233km/h、パフォーマンスAWDは261km/hといずれも200km/hオーバーだ。

モーターを制御するパワーコントロール・ユニットには、先進的なSiC(炭化ケイ素)パワー半導体を他社の電気自動車、ハイブリッド車に先駆けて採用している点も「モデル3」の先進性を示している。このSiCパワー半導体を使用することでコントロール・ユニットのコンパクト化と低発熱、電力の低損失化を実現している。

インテリアと装備

インテリアや装備は、テスラ独自の世界観が満載だ。ドア・ハンドルは自動ポップアップ式で、ドアを締めた状態では埋め込まれている。キーは、カード式またはスマートフォンを使用することで、ドアロックが開閉できる。

インテリアのデザインはモダン・アメリカン・リビングといった感覚でまとめられている。シートは標準グレードは布表皮、上級グレードは合成レザー表皮となる。

ルーフは標準グレード以外は全面が紫外線、赤外線カットのガラス製ルーフを採用し、これも「モデル3」の大きな特長のひとつとなっており、室内は開放感に溢れている。

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インテリアの仕様は、スタンダード・パッケージ、パーシャル・プレミアム・パッケージ、プレミアム・パッケージの3種類が設定されている。

「モデル3」のインテリアの圧巻は物理ボタン/スイッチをなくし、すべての表示、操作はインスツルメントパネルの中央にあるLG製の15.4インチの高精細タッチパネルで実行する。エアコンなどの操作は、タッチパネルに常時表示されているが、車両の様々な設定や選択は、画面をタッチして階層を経て、スライドスイッチ表示部で選択する。

モーターのパフォーマンス、つまり加速力の切り替えも、このタッチスクリーン上で選択することができる。

このような制御ロジックのため、フォグランプの点灯でさえ、階層を追わないとオンにできないなど、タッチスクリーンならではの操作のわずらわしさがある。しかし、とにかくすべての設定や操作、ナビゲーションやインフォテイメントを15インチのタッチスクリーンで完結させるというのがテスラの発想だ。おまけにエンターテイメントの一つとして各種のゲーム、例えばインベーダーゲームやブーブー・クッション・ゲームなども盛り込まれ、しかもオナラの音の種類も多数選択できるようになっている。

自動運転の時代に先駆け

ステアリングホイールの正面にはメーターパネルは存在しない。イーロン・マスクCEOは、自動運転時代を迎えるというのにスピード表示が必要なのか? とコメントしている。走行中のスピードはタッチスクリーン上に表示される。

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ナビゲーションはGPSの位置情報とGoogle Mapと連携している。ナビゲーション機能は、「モデル3」に乗り込んで行き先を伝えれば、後はすべてのルートガイドが決定される。何も言わなければ、Googleカレンダーを確認して、その日の予定に入っている想定される目的地へルートガイドする。最適なルートを計算し、都心部や複雑な交差点、高速道路を通行。

アメリカ仕様では高速道路の分岐点から市街地の道路なども含めルートガイドし、オートパイロットが対応する。つまり操舵アシストが機能しているのだ。ただ高精度デジタルマップを搭載していないので、この点がいささか不安点ではある。

アダプティブクルーズ・コントロールで走行時はかつては長時間の手放し運転が可能だったが、現在では手放し警告が行なわれるようになっている。だが、それもかなりの時間が経過してからだ。コネクティビティでは、通信モジュールを標準装備し、各種ソフトウエアのバージョンアップはすべて通信により行なわれる。

レベル5が可能なオリジナルECU

「モデル3」は、レベル2の運転支援システム「オートパイロット」を搭載している。車線中央維持、アダプティブクルーズコントロール、セルフパーキング、車線の自動変更機能、ガレージやパーキングスポットへの自動出入庫などが可能だ。駐車した場所からドライバーの立つ地点への自動呼び出しも可能になっている。なお高速走行時の「オートパイロット」の最高設定速度は150km/h。

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「オートパイロット」の頭脳となる中央統合ECUは、最新仕様の第3世代となり、かつてのモービルアイ、NVIDIAのCPU/GPUとは決別し、サムスン電子が製造する自社製のカスタムチップを採用。NVIDIAのチップの10倍の画像認識能力やAI/深層学習機能を備え、このECUのままでレベル5の自動運転にも対応できる能力を持っているという。

レベル5の自動運転にも対応できるというテスラ・オリジナルの統合ECU
レベル5の自動運転にも対応できるというテスラ・オリジナルの統合ECU

車載センサーは、GPSによる位置情報、前方視認用の広角・標準・望遠レンズを備える3連カメラ、前側方カメラ×2、後側方カメラ×2、リヤ・カメラと合計8個のカメラによる360度の画像センシング、8mの検知距離を持つ12個の超音波センサー、前方170mを検知できる長距離レーダーを採用している。

「モデル3」は現時点で最も進化した「オートパイロット」を備えているが、アメリカ市場では、ドライバーの過度な手放し運転と交通モニタリングの無視という条件下でクラッシュ事故が発生していることには注意を要する点である。

「モデル3」は、他の自動車メーカーでは採用しない装備や、先進装備を躊躇なく採用し、さらにドイツのプレミアムメーカーのDセグメント車を意識した、テスラでしかつくれないクルマということができる。

テスラ モデル3 諸元表

【価格】

  • スタンダード・プラス:511万円〜
  • ロングレンジAWD:655万2000円〜
  • パフォーマンスAWD:717万3000円〜
    ※なお「モデル3」はエコカー減税+補助金を受けられる

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