テスラ・ジャパンは2025年8月20日、監視義務付きフルセルフ・ドライビング(FSD)システムの日本での公道テストを開始したと発表した。

このレベル2.5の半自動運転システムの「監視義務付きフルセルフ・ドライビング(FSD)」は、すでにアメリカ/カナダ、メキシコ、中国では導入されている。
日本の国交省では、レベル3の自動運行システムは「トラフィックジャム・アシスト」という名称で、高速道路の渋滞時など一定の条件下でドライバーに代わって自動運転システムにより、走行することが法的に認可されている。渋滞時などでのシステム起動は50km/h以下とされており、世界初のレベル3自動運転システムを搭載したホンダ レジェンドはさらに余裕を与え30km/hで起動するようになっていた。
関連記事:ホンダセンシング エリート 意思を持ったレジェンド試乗記
この状態では、ステアリングから手放し、道路など周囲の状況の監視の義務をなしにしているが、交通状況が変化するとドライバーが運転するように警報が発せられる。つまり限定的ながら自動運転が可能になっているのだ。
それ以外の高度運転支援システム(レベル2.5)では、日産のプロパイロット2.0は高速道路でのハンズオフ走行(手放し運転)を可能にしている。ナビゲーションシステムと連動し、設定したルート上の高速道路の出口まで、アクセル、ブレーキ、ステアリングを制御し、運転操作を支援する。
またスバルのアイサイトXは、高速道路や自動車専用道路での渋滞時ハンズオフ運転が可能で、BMWのハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能も同様に高速道路での渋滞時に手放し運転が起動できる。

一方、テスラのフルセルフドライビング(FSD)システムは、レベル2.5に位置づけられるが、従来の標準装備である「オートパイロット」の機能を大幅に拡張したサブスクリプション(月額課金)、または購入できるオプションパッケージとなっている。
このFSDは、ナビゲーション on オートパイロット (Navigate on Autopilot)が特長で、高速道路では入口から出口までを自動で走行し、インターチェンジでの車線変更や合流、分岐も自動で行なわれる。
また車線変更は、ドライバーが指示を出さなくても、周囲の状況を判断して追い越しや速度維持のための車線変更を自動で実行する。駐車時には、並列駐車や縦列駐車を自動で実行できるのだ。

市街地走行では、FSD Beta/Supervised Full Self-Driving(監視義務付きフルセルフドライビング)が可能だ。交差点の右左折、環状交差点(ラウンドアバウト)の通過、歩行者や自転車の回避など、極めて複雑な運転環境をカメラ主体のシステムで処理し、ほぼ自動運転が実現している。もちろん信号機や一時停止標識も認識され、自動で減速・停止する。停止後は、ドライバーの確認(アクセルを軽く踏むまたは復帰レバーを下げる)があれば再発進することができる。

このFSDはレベル2.5であり、ドライバーに監視義務があり、いつでもステアリングなどが操作できるように備えていなければならないが、アメリカ市場では手放し運転が行なわれる例が多い。
テスラのFSDは、高価なLiDARやミリ波レーダーに依存せず、複数のカメラとAIを中心とした「テスラ・ビジョン」技術で運転システムを実現している。周囲の状況をカメラで検知し、巨大なニューラルネットワーク(AI)で認知・判断し、運転を実行するようになっているのだ。
テスラのこのFSDシステムと同様のシステム「ナビゲーション on オートパイロット (NOA:Navigate on Autopilot)」は中国のメーカーも開発しており市場投入されている。特にファーウェイやモメンタ社の技術は有名で、日本の自動車メーカーも中国ではこれらを採用している。
こうしたNOAは、従来の自動運転の常識であった高コストな高精度3次元マップデータを使用せず、通常のマップデータと道路や交通状況、障害物の検知や認識をAIが担当する。しかも走行距離が長くなるほどAIの学習が進化し、車載システムに反映されるという特長を持っており、ソフトウエア・ディファインド・ビークルならではの特長の一つとなっている。
テスラ・ジャパンは、日本の公道走行でテストを繰り返し、データ収集を行ない、その後国交省から認可を受けて、市場投入する計画としている。