欧州車のBセグメントクラスにフルハイブリッドのハッチバックがデビューした。「ルノー ルーテシアE-TECH HYBRID(イーテックハイブリッド)」は、先行してデビューしたルノー アルカナに搭載しているハイブリッドシステムと同じシステム&ハード(制御変更あり)を搭載している。
ルーテシアE-TECHハイブリッドは、ルノーのオリジナルシステムで、1.6L 4気筒ガソリンNAエンジンに駆動用「Eモーター」と充電・スターター用のサブモーター「HSG(ハイボルテージ・スターター・ジェネレーター)」を搭載して2022年6月30日に国内デビューした。
輸入車Bセグメントでは燃費No.1の25.2km/Lをマークし、重量税が免税になるなど減税対象車で329万円〜という競争力のある価格が設定されている。競合するモデルはズバリ、フォルクスワーゲンのポロ・スタイル、プジョー208GTとほぼ同価格であり、いずれもガソリンモデルで、そこにフルハイブリッドをぶつけてきたわけだ。
国内市場では輸入車Bセグメントは3万台規模のマーケットで、80%以上がガソリン車、ディーゼルは15%程度(資料にはCセグメントのMINIが含まれている)、EVとPHEVは2%以下というマーケット事情だ。価格も魅力的なルーテシアE-TECHがどこまで台数を販売するのか、興味深いところだ。
さて、そのモデル追加されたE-TECHハイブリッドにひと足早く試乗できたのでお伝えしよう。
クラスを超えた静粛性
このE-TECHハイブリッドの特徴のひとつでもある、動き出しはEV走行から、がある。モーターで動き出すため静粛性が高く、また滑らかに動き出す。ガソリン車のようにエンジンの回転が上がって加速が始まるという前触れがなく、ある意味突然動き出すのだ。だからなおさら静粛性と滑らかさが際立って感じるのだ。
EV走行で車速が上がると、おおむね40km/h付近からエンジンが始動してモーターとエンジンの両方での走行になるが、エンジン音は走行ノイズに紛れるのか、ほとんど聞こえてこない。だから聞き耳を立てないとEVなのかエンジンなのか、いつ切り替わったのか?さっぱりわからないことになる。
その静粛性の作り込みは高速走行でも発揮され、おおむね80km/h付近からはエンジンのみで走行するが、メーターパネルに表示される動力分配インジケーターを見ないと気づかないレベルなのだ。さらに高速走行中でもバッテリーの充電状況が満充電付近になるとEV走行をするので、なおさら駆動力は何なのか気づかないことになる。
それほど静粛性が高くBセグメントとしては信じ難いクオリティだと言える。クラスを飛び越えた走行シーンを誰もが体験することになるだろう。
スペックを確認してみると、プラットフォームはCMF-Bでルノー、日産、三菱アライアンスの共通プラットフォームで、ルノーが中心になって開発したものだ。日産ではノートe-POWERに採用している。このプラットフォームはバッテリー搭載を想定したものであるのは言うまでもないが、ホイールベースが2585mmでセグメント最長であり、高い居住性につなげているのが特徴でもある。
搭載されるパワーユニットの総合出力は140hpで、駆動用Eモーターは36kW/205Nm、サブモーターのHSGは15kW/50Nm、そして1.6Lガソリンエンジンは91hp/144Nmという出力になっている。これにドッグクラッチ機構を持つトランスミッションを組み合わせている。
F1で培ったノウハウ
ドッグクラッチは複数の歯を噛み合わせる仕組みで、出力軸とダイレクトにつながるためパワーロスがない。しかし回転中に複数の歯を噛み合わせるため変速ショックが大きく市販車には搭載しにくい技術だったが、このE-TECHハイブリッドではHSGが回転合わせの役目を担い、変速ショックのないダイレクトな噛み合わせを実現しているのだ。これは試乗中にも感じるが変速の衝撃は全くなく、変速していることに気づかないレベルに仕上がっていた。
さらに、ユニークなのは減速ギヤを2軸構造にしてエンジン側は2-4速と1-3速のギヤセットを持つ4段ギヤ構成で、Eモーターも通常1速減速のところを2速減速しているので、その組み合わせによって複数のギヤ段が構成できる。ニュートラル同士の組み合わせと、ギヤ比が同じなる2つのギヤ段を除いてトータル12パターンが可能になるのだ。
この仕組みを使うことでシンクロ機構とエンジンとミッションをつなぐクラッチ部分も廃止し、HSGモーターで「繋がり」を制御している。そしてこれらのユニットを制御しているのが、HEVC(ハイブリッドEVコントローラー)で、ルノーのF1技術からのフィードバックを活かしたノウハウで、市販車向けに制御を行なっているのだ。搭載するバッテリーは1.2kWhで250V。トランク下に車載している。
走行パターンを整理すると、EV走行、エンジンとモーターのハイブリッド走行、そしてエンジンだけの走行という3パターンになるが、試乗を振り返るとEV走行の場面が多く、とても1.2kWhというバッテリー容量のハイブリッドとは思えなかった。それほどEV走行が多く感じられ、ルノージャポンの担当者に聞けば、都市部の走行は条件が揃えば大半をEV走行することが可能ということだった。まさに試乗エリアは川崎の臨海エリアで羽田空港も近い場所。市街地は信号も多くゴーストップが多いエリアだったため、そうしたEV走行の多い試乗ができたわけだ。<レポート:高橋アキラ/Takahashi Akira>