2014年12月25日、ルノー・ジャポンは、ルーテシア ゼンに0.9Lターボエンジン/5速MTを搭載したルーテシア ゼンを、1月8日から発売すると発表した。
ルーテシアは、これまでにGT、インテンス、ゼン、アクティフという4グレードを展開してきた。これらのモデルは、ルノーの最新ユニットである1.2L・4気筒(H5F型)直噴ターボ+6速EDC(デュアルクラッチ式)を搭載していたが、新たにH4B型、通称エナジーTCe90と呼ばれる0.9L・3気筒ターボエンジンと5速MTを組み合わせたゼンが追加されたのだ。
この0.9Lのターボエンジンは135Nmの最大トルクを2500rpmで発生し、最大トルクの90%を1650rpmから発生する、市街地でも扱いやすい特性を備えている。また、ストップ&スタートの採用により、シリーズの中で最も優れた燃費となっている。
このエンジンは、自然吸気2.0Lエンジンを並の性能を持つダウンサイジングコンセプトの1.2L・4気筒のH5F型の1気筒分をカットしたモジュラーエンジンで、ボア・ストロークはH5F型と共通だ。シリーズ最小の排気量となるが、性能的には自然吸気1.4Lエンジン並みの性能を持つ。
超低フリクション設計で、シリンダーヘッド一体型エキゾーストマニホールド、直付けの超小型ターボを備えているが、H5Fと異なりポート噴射式だ。組み合わされるトランスミッションは5速MTのみ。ヒルスタートアシストも装備されている。
エクステリアは、インテンスと同様のブリリアントブラックパーツとクロームメッキフィニッシャー、16インチ・ブラックアロイホイールを装備している。この0.9Lエンジン+5速MTを搭載するルーテシアは、フランス国内での最量販グレードで、パリの市内で最もポピュラーなエントリーカーとして知られている。
■試乗レポート
ルーテシア ゼン 0.9Lモデルの価格は208万円と、インポートカーの中でも魅力的な価格設定になっている。ルーテシアのラインアップではGTが259万円、ベースグレードのアクティフが205万5000円、ゼンの1.2Lモデルが221万1000円で、0.9Lモデルは基本的にはエントリーグレードと位置付けられる。
ではシリーズ唯一の3気筒エンジンの走りはどうか。実際に市街地で走ってみると、低回転からトルクフルで、実に扱いやすい特性だ。またスタートの一瞬だけは少し3気筒らしいサウンドだが、走り出してしまえば軽くスムーズに吹け上がり、エンジン回転も滑らかで、とても900ccの3気筒エンジンとは思えない走りだ。
5速MTは、ヨーロッパではポピュラーなトランスミッションで、2速と3速のギヤ比が少し離れているが、ギヤの入りは軽く、スムーズでシフトミスの心配もなく扱いやすい。繋ぎどころがわかり易く、ペダル踏力が軽いクラッチも神経質なところがなく、文句なしに操作しやすい5速MTといえる。
だから市街地で5速2000rpmといった低回転でも、アクセルを踏めばスムーズに加速でき、フレキシブルで扱いやすく、誰でもすぐに乗りこなせると感じられた。そしてアクセルを深く踏み込み、5000rpmも回せばスポーティで気持ちよいドライビングも楽しめる。
もちろん、ルーテシアならではのステアリング・フィールの正確さや自然さ、気持ちよさ、ステアリングを切っただけリニアに反応する車体、しっかりとして安心感のあるボディの剛性感などもこの小排気量のクルマの魅力を高めてくれる。
ルーテシアは、ヨーロッパではある意味でエントリーモデルであり、若い世代から老人まで、ドライバーを選ばず愛されている国民車的な存在である。だから誰でも簡単に乗りこなせる資質を備えているが、その一方で基本性能が高く、懐の深い本質的な運転する楽しさを味わうことができるクルマだ。
また装備面ではエントリーグレードでありながら、クルーズコントロール、スピードリミッター、ECOモードなども装備している。
ルーテシアはシンプルでありながらセンスを感じさせる美しいデザインや、チープさを感じさせず、使い勝手のよい良質なインテリアなど、このクルマのメッセージ性は0.9Lモデルにもきちんと詰め込まれており、軽快な走りとこうした存在感がこのクルマの大きな魅力だろうと思う。
<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>