2013年10月14日、ルノージャポンは新型ルーテシアをベースにルノースポールが開発した200psの1.6L直噴ターボエンジンを搭載する新型「ルーテシア ルノースポール」を発表した。なお発売は11月14日から開始される。
お台場で行なわれた発表会には、鈴鹿サーキットで開催されたF1グランプリで3位に入賞したロータスチームのロマン・グロージャンも駆けつけた。グロージャンが新型「ルーテシア ルノースポール」のアンベールを行ない、迫力満点のデモ走行も披露した。F1でルノーエンジンを使用しているグロージャンは、「ルーテシア ルノースポール」はF1から得られた技術をルノースポールが最適チューニングしてこのモデルに投入していることを強調した。
ルノーの新たなデザイン戦略のもとで登場した新型ルーテシアをベースにした「ルーテシア ルノースポール」は、、シンプルでありながら温かく官能的なデザインをベースに、フロント・エアインテークブレード、リヤディフューザー、ツインエキゾーストといったF1や高性能のスポーツカーを連想させるディテールを加えることで、魅力的なデザインをさらに際立たせている。
「スポーツカーのデザインは、熱狂的なファンの心に直接訴えるものでなければなりません。 新型ルーテシア ルノースポールのデザインは、まさにエネルギーに満ち溢れています。我々が目指したのは、単に性能の高さを表すだけでなく、優れたコントロール性や正確なハンドリングといったことまで感じさせるデザインを作り出すことでした。停まっているか走っているかにかかわらず、運転席のドライバーはいつでも自在に操ることのできるスポーツ性能の高さを感じることができます」とルノースポールのテクノロジーズ・デザインディレクターのエリック・ディメール氏は語る。
ルノースポール・モデルのスタイルを特徴付けているパーツ類は、単なる飾りではない。例えばリヤディフューザーやリヤスポイラー、F1マシンスタイルの レースカーを参考に、エアロダイナミック効果が最大となるよう設計されている。車体のリヤで発生するダウンフォースのうち80%がディフューザーで、残り の20%はリヤスポーラーによって生み出される。F1スタイルのフロント・エアインテークブレード、リアディフューザーとスポイラーは、ルノースポールモ デルの代表的な特徴なのだ。新しいデザイン戦略に沿ってデザインされたフロントグリルに配されたR.S.のエンブレムと、バンパー下に組み込まれたLED ライトは、新型ルーテシア ルノー・スポールのフロントエンドを強く印象付けている。
インテリアはエレガントな雰囲気のブラックトリムの中に、コントラストを生み出すオレンジが配され、刺激的でスポーティな印象だ。情熱をイメージさせるオレンジは、シートベルトやメーターパネルの針、各所のステッチ、フィニッシャー等に採用されている。エンジンを始動すると、呼応するようにタコメーターと燃料計の針が振り切る動きの演出は、刺激的な室内空間と相まって視覚的にもドライバーの気持ちを高揚させる。もちろんスポーツシートはルノースポールの長年にわたるノウハウが取り入れられ快適な乗り心地と優れたサポート性を両立している。
新型ルーテシア ルノースポールに搭載されるエンジンは、アルミブロックの1.6L直噴DOHC直列4気筒ターボエンジンで、最高出力200ps/6000rpm、最大トルク240Nm/1750rpmを発生。高出力と低速トルクを両立させたエンジンだ。このエンジンのカムタペットにはF1エンジンと同じダイヤモンドライクカーボン(DLC)コートが採用され、摩擦損失を低減している。可変バルブタイミング機構(VVT)も採用されている。先代ルーテシア ルノースポールに搭載されていた2.0L自然吸気エンジンとこの1.6L直噴ターボエンジンを比べると、最高出力は同等だが最大トルクは25Nmも増加。また、最大トルクの発生回転数は、先代モデルのエンジンが5400rpmであったのに対し、この1.6L直噴ターボエンジンは1750rpmと大幅に低くなり、低回転から力強い加速が得られる。
このターボエンジンに組み合わされるトランスミッションは、6速EDC(DCT)だ。EDCは効率に優れ、速い変速スピードが特徴で、スポーティでシームレスな加速ができる。EDCは、快適なドライブを楽しむためのオートマチックモード、スポーティな走りが楽しめるマニュアルモードを備えている。EDCの操作は、シフトレバーかステアリングコラムに取り付けられたチタン製のパドルで行なう。また一度に複数段のシフトダウンが行なえる「マルチシフトダウン」機能を採用。マニュアルモードでブレーキペダルを踏んでいる時に、左パドルを引き続けると、複数段のシフトダウンを行なうことができる。このエンジンとトランスミッションの組み合わせにより、0-100km/h加速は6.7秒で先代モデルを上回っている。なおドライブモード選択は、ノーマル、スポーツ、レースの3モード。
ルノースポールのエンジニアは、シャシー性能こそがルノースポールの技術の核心であると考えており、その目標はルノースポールモデルに望まれる快適性、ハンドリング、走行安定性、ブレーキ性能を高めることだったという。「我々は、最小限のボディロール、飛びぬけた直進性やコーナリング性能、応答性に優れたハンドリング、そして高い快適性といった万能性、つまりドライバーがホットハッチに期待するであろうすべての要素を新型ルーテシア ルノー・スポールに取り入れました」とルノースポール・テクノロジーズ チーフシャシーダイナミクスエンジニアのフィリップ・メリメ氏は語っている。
↑フロントストラットのセカンダリーダンパー(HCC)
ストラット式フロントサスペンションは、各部剛性を高め、ユニット全体の軽量化と高剛性を両立。フロントダンパーは、さまざまな路面状況において常に最適なグリップと快適な乗り心地を両立するハイドロリック・コンプレッションコントロール(HCC)を採用している。HCCはメインダンパーのハウジング内部に、バンプストップラバーの機能を持つセカンダリーダンパーを組み込むことで最適な減衰特性が得られる機構だ。この技術はルノースポールが15年にわたるラリーでの経験から生まれたという。このセカンダリーダンパーはバンプ時の反力を発生しないため、路面からの大きな入力時にもタイヤがグリップを失わず、グリップ限界が高まりよりリニアなハンドリングが得られ、同時に乗り心地を向上させ、競合車を寄せ付けないという。ヤサスペンションに採用されたスタビライザーは、標準のルーテシアより60%以上、先代モデルのルーテシア ルノースポールと比べても10%剛性が上げられている。
また新型ルーテシア ルノースポールには、「シャシー スポール」、「シャシー カップ」のふたつのシャシーチューニングがラインアップされている。シャシー スポールは日常での快適性と傑出したスポーツ性能を高い次元でバランスさせ、シャシー カップは本格的なスポーツ走行に対応したセッティングで、シャシー スポールに対し全高が3㎜低められ、スプリングレートが前輪で27%、後輪で20%高められている。また、同時にステアリングのギア比もクイックで、クローズドコースなどでの高速走行時でも正確にクルマを操ることができる。
↑R.Sデフによるトルクベクタリング ↑R.S.ドライブスイッチ
ブレーキは、フロントディスクの直径を320㎜に拡大し、リアは直径260㎜のディスクを採用。またルノースポールが特許を持つ「R.S.デフ」が、新型ルーテシア ルノースポールに装備され、加速性能と コーナリンググリップを著しく向上させ、アンダーステアも抑制する。このシステムは、前輪の左右輪間の回転差を常に監視し、駆動しない後輪との差を比較。前輪の左右間に大きな速度差が生じると直ちにシステムがそれを検知し、R.S.デフがグリップを失いかけている方ホイールにブレーキを掛ける。その際、エンジントルクは、絞られない。この機能は、ESCが機能する以前に作動するのも特徴だ。
新型ルーテシア ルノースポールは、ドライバーが任意に選べる「ノーマル」、「スポーツ」、「レース」の3つの走行モードを備えている。ノーマルモード:快適さと燃費に配慮した走行モードで日常の使用に最適。変速時のシフトスピードは、0.2秒。オートマチックモードでもマニュアルモードでも選択できるようになっている。スポーツモード:スポーティーなドライビングが楽しめる走行モード。シフトプログラムが変更され、シフトスピードは0.17秒に短縮。アイドリングの回転数がノーマルモードの750rpmに対し1000rpmに高められアクセルレスポンスが向上。同時にブレーキレスポンスも向上する。レッドゾーン手前ではシフトアップを促す警告灯が点灯し警告音が鳴る。またESCの作動モードがスポーツへと切り替わり、パワーステアリングは手ごたえのある操作感となる。
レースモード:マニュアルモード時のみ選択が可能。シフトスピードは0.15秒まで高められる。ESCは完全に解除されコントロールはすべてドライバーが行う。これら3つの走行モードは、センターコンソール上にあるR.S.ドライブスイッチで選択できるようになっている。
さらにマニア向けに、このクラスのモデルでは初採用となるローンチコントロールも備えている。ローンチコントロールは停止した状態から最大の加速力で発進させることができる機能だ。この機能は、R.S.ドライブでスポーツモード、またはレースモードを選択した時に使用できるようになっている。スポーツモードでは、ESCがホイールスピンをコントロールし、最適なタイミングで自動シフトアップされる。一方レースモードでは、ESCによるホイールスピンコントロールは行われず、シフトアップもマニュアル操作となる。
なおこのルーテシア ルノースポールは、標準ルーテシアがトルコ工場製であるのに対しフランス・ノルマンディのディエップ工場で生産される。1969年に造られたディエップ工場は、高性能車の組立およびレースカーの製造と販売、そしてレースカー用のスペアパーツの販売を行う役割を持つ。ルーテシアをベースにしたレースカーの「クリオ カップ」も、この工場で製造されている。新型ルーテシア ルノースポールの製造には、1台当りおよそ26時間と量産モデルよりも長い時間を要するが、1手の込んだ工程により製造されるルノースポールモデルが、特別な存在であることの証明でもある。