ルノー「アルカナ」試乗記 身の丈の見極めのうまさを感じるハイブリッドSUV

ルノーからCセグメントサイズのハイブリッドSUV「RENAULT ARKANA(アルカナ)」がデビューした。販売は2022年5月26日を予定しているが、一足先に試乗できたのでお伝えしよう。ちなみにARKANAはラテン語でmysteries・ミステリーという意味。

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https://autoprove.net/imported-car/renault/arkana/203903/

注目は、ルノーが独自に開発をしたフルハイブリッドシステム「E-THEC HYBRID」を搭載していることがある。4気筒1.6Lのガソリンエンジン(HR16型)と組み合わされ、2モーター方式で走行する。エンジンの出力は94ps/148Nm。メインの駆動モーター「E-モーター」は36kW/205Nmで、もう一つのモーターは「HSG」でエンジンスターターの役目とエンジン動力をバッテリーに充電するジェネレーターの役目を持っている。出力は15kW/50Nm。ここまでは他社のモーターと同じ役目だが、HSGにはさらに、ドッグクラッチを採用しているため、回転をシンクロさせる役目も持っている。

ルノーが開発したコンパクトなハイブリッドシステム

搭載するバッテリーはトランク下に格納し1.2kWh(250V)のリチウムイオンバッテリーを積んでいる。ちなみに日産ノートe-POWERは1.5kWhでセレナe-POWERが1.8kWhのバッテリーを搭載している。

このドッグクラッチを使った「ドッグクラッチマルチモードAT」の構造は、エンジンの出力軸に直接つながる2軸構造で2速と4速、1速と3速の組み合わせがあり、E-モーターにも2段のギヤがある。そのモーター出力軸とエンジン出力軸を繋ぐためにドッグクラッチ方式を採用し、HSGはその回転を合わせるために使用されている。そのため、エンジンとミッションの間にあるクラッチやシンクロ機構はなく、また2軸構造のため全体がコンパクトになっている。

ドッグクラッチの実物カットモデル。回転合わせにモーターを使用する

変速段数はエンジンが4速、モーターが2速で合計6速あり、ハイブリッド走行時はモーターがエンジン出力を全段でサポートするので、8速あることになる。だから計算上は14速の変速ギアになるが、2速分は同じギヤ比なので、実質12段変速ということになる。ただ、発進時は100%モーター駆動で動き出す制御なので、1速をモーターがサポートする状況は限られるはずだ。

実際に試乗してみるとモーターで動き出すため非常に静かに、そして滑らかに走り出しおおむね40km/h付近まではモーター走行をする。そのためEV車に乗っている感覚になる。ある程度速度が上がるとエンジンが稼働し、エンジンとモーターで走行し、高速域になるとエンジンで走行するようにプログラムされている。

しかし、高速走行をしてみるとバッテリー状態がいい時は80km/h、100km/hでもモーター走行に切り替わることがあり、考え方としてはできるだけモーター走行の領域を広げるプログラムになっているようだ。つまり燃費がいい、ということになり、ルノージャパンの社内データでは22.8km/Lで、輸入車ではトップの燃費になっているという。

ワインディングではモーター走行、エンジン走行、両方の走行の最適な駆動方法を自動で車両側が判定して走行するが、静粛性が高くまたレスポンスがいいため、EV車のイメージが強くなる。ハイブリッド車にありがちなエンジン音ばかり大きくなって加速していかないといった場面はなかった。また変速もスムーズで何も気にすることなく楽しくワインディングが走行できた。

Cセグメントサイズのアルカナはルノー・日産・三菱アライアンスのCMF-Bプラットフォームを使ったCセグメントで、ライバルひしめくマーケットに投入されたモデルだ。全長4570mm、全幅1820mm、全高1580mmでホイールベースが2720mmある。また最低地上高が200mmあり、アーバンSUVの位置付けだが、幅広いフィールドで活躍できる。ちなみに駆動方式はFF。

アルカナの国内導入はR.S.Lineのエクステリアを持ち「ルノー アルカナR.S.Line E-TECH HYBRID」の一択となっている。

この新しいパワートレインの特徴のひとつに軽量でコンパクトがあり、今後ルノーはアルカナより小型のBセグメントルーテシアにもこのハイブリッドを展開することを発表している。こうした状況からも欧州はEV一辺倒からすこし風向きが変わってきているのかもしれない。

さて、新しいハイブリッドシステムのアルカナをワインディングで走らせてみると、ルノーらしくナチュラルなハンドリングが印象的で走りにこだわるルノーの姿勢が伝わってくる。サスペンションは特に飛び道具はなくフロントはストラットで、リヤはトーションビームというオーソドックスなレイアウトだが、ノーズの入りも機敏で旋回性は高い。

ステアリングを深く切り込むような場面でも、ナチュラルな反応でニュートラルであることが実感できる。切り初めから切り足しをしても挙動に変化がなく、手の内にある感覚が気持ち良い。パワーも驚くようなスペックではないが、ルノーはこの操安性の高さで走りの良さを魅力ポイントにしているのが伝わってくる。

乗り心地もしなやかにサスペンションが動き、微低速時のフリクションなど全くなく、プレミアムモデルレベルのしなやかさがある。それにもかかわらず、ロールは抑えられ、ドライバーの視線が変わらない安定したコーナリングは魅力的だ。

ただ1点、ブレーキ制御で気になることがあった。ブレーキの踏み始めの踏力と減速Gのバランスが感覚と合わず、効きすぎる印象。それと停止直前の減速Gの変化も気になった。これは8km/hまでは回生ブレーキを使っているが、それより低速になると摩擦ブレーキに切り替わる。その切り替えのところで同じ踏力でありながら減速Gが変化してしまうので、少々気を使う必要があった。

先進安全装備、運転支援システムも搭載され、またスマホとミラーリンクする機能もあり、そうした付加機能は最新の装備になっており不満はない。

新型アルカナはルノーのポジショニングを忠実に守りながら、ハイテク技術を搭載し、ダイナミック性能で「らしさ」を出しているのが魅力で、身の丈の見極めのうまさを感じたモデルだった。<レポート:高橋アキラ/Takahashi Akira>

価格

RENAULT ARKANA R.S. Line E-THECH HYBRID:429万円(税込)

COTY
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