ルノーの中国市場における戦略の再構築は着々と進んでいる。ルノー・グループと中国民営自動車最大手の浙江吉利控股集団(ジーリー・グループ)は、2021年8月に中国、韓国でハイブリッド車の合弁事業に乗り出すことで合意。ルノーは2020年に中国の東風自動車との合弁の解消を発表し、世界最大の中国市場でジーリーとタッグを組んで再攻勢に打って出ようというのだ。
ジーリーはボルボの親会社になっているだけではなく、ドイツのダイムラー・グループの筆頭株主であり、スマートも今後はジーリーが開発、生産することになっている。
ルノー・グループは、日産と同様に東風自動車と合弁で中国市場での事業を展開してきたが、その業績は失望すべきもので、最終的に合弁を解消した。
そして中国市場への本格参入するためのパートナーにジーリーを選択したのだ。ルノー・グループとジーリー・グループは、中国と韓国を当初の中核市場と位置づけ、リソースと技術を共有し、協力関係を構築。さらには成長著しいアジア市場に向けてもハイブリッド車を中心に販売することを視野に入れている。
中国ではジーリー・グループの既存技術と生産設備を使用し、共同でルノー・ブランドのハイブリッド車を導入。そしてルノーは、ブランド戦略、販売チャンネルとサービスの開発を行なう。
ルノーは韓国ではサムスン自動車と20年以上の協業を行なってきたものの不振が続いていた。だが、新たにルノー・グループとジーリーが共同で、ボルボが開発した最新プラットフォームをベースにした車両の現地化を検討するとした内容だ。
そして2022年1月21日、ルノー、ジーリーの協業プロジェクトの第1弾は、ルノー・サムスン釜山工場で韓国市場向けに、ハイブリッド車と内燃エンジン車を生産し、同時に韓国から輸出するための新しい協力関係にも調印した。そして2024年には釜山工場で新型車の生産を開始する予定としている。
今回の提携により、両社は低排出ガスモデルの生産を行ない、アジアにおけるハイブリッド車の普及に向け前進するとしている。これにより袋小路に入り込んできたルノー・サムスンを復活させ、収益性を確保することになる。
なお、釜山工場で生産されるニューモデルは、スウェーデンのボルボの研究開発センターが開発した、ジーリ・グループの世界でも有数の革新的なコンパクト・モジュラー・アーキテクチャ(CMA)を活用。そしてジーリー・グループの先進的なハイブリッドパワートレイン技術も活用するとしている。ルノーとルノー・サムスンは、ニューモデルのデザインとインテリア技術やアフターセールス・サービスを提供することになる。
このニューモデルは当初は韓国市場向けに設計されるが、将来的には輸出も可能にする計画だ。
注目すべきは、ハイブリッドの技術はジーリーとルノーの技術が採用され、ルノーのアライアンスである日産や三菱の技術が採用されていないことだ。さらに、ルノー・サムスンの釜山工場から東南アジア向けに輸出されることになれば、三菱の主要市場である東南アジアで競合関係になることも予想される。
ルノー・グループは、現時点で収益の改善が最大のテーマであり、大きな足かせになっていた中国市場、韓国市場の改善は必須であり、そのためには日産や三菱ではなくジーリー・グループの力が必要と決断したわけである。