2017年5月4日〜6日、世界耐久選手権(WEC)第2戦がベルギーのスパ・フランコルシャンで開催された。シーズンの中のクライマックスといえる大舞台、ル・マン24時間レースの直前のレースだけに、このスパ6時間レースは単にシリーズ第2戦というだけではなく、ル・マンに向けての準備や戦略にも注目すべきだ。
■公式予選
このスパ・フランコルシャンに、トヨタGAZOOレーシングは予告通り3台のTS050を持ち込んだ。ここスパ・フランコルシャンとル・マンは3台体制で万全を期すわけだ。7号車、8号車は第1戦のシルバーストンと同じダウンフォース仕様で臨み、第3のマシン、9号車はル・マンを見据えた実戦テスト用に低ダウンフォース仕様で出場する。
9号車のステアリングを握るのは、ベテランのS. サラザン、2017年のスーパーフォーミュラ・チャンピオンの国本雄資、N.ラピエールというドライバーの組み合わせだ。なお、7号車のドライバーのJ.M.ロペスはシルバーストンでのクラッシュ事故で軽度の脊椎損傷を受けているため、大事を取って今回は出場せず、小林可夢偉とM.コンウェイの2人でレースを走り切ることにしている。
一方、ポルシェ・チームは、またもや1、2号車ともに低ダウンフォース仕様、つまりル・マン仕様を持ち込んだ。やはり、ハイダウンフォース仕様の開発が遅れたというのは事実ではなく、完全にル・マン24時間レースにターゲットを絞っていることが明らかになり、1、2戦は成績・順位より実戦でのマシン熟成を狙ってきているのだ。
ル・マン用の低ダウンフォース仕様は、低中速でのコーナリング速度が遅くなるだけでなく、ダウンフォースが少ない分、タイヤの摩耗も増大するが、もちろんそれも承知の上だ。
公式練習ではトヨタの7号車がトップをキープしたが、意外にもポルシェ2号車、1号車が僅差に位置し、トヨタ8号車、9号車は4、5番手となった。9号車はトップから2秒遅れと、低ダウンフォース仕様は予想よりも遅かった。
ところが公式予選では、トヨタ9号車のサラザンがペースアップし、ポールポジションを狙う勢いだったが、2番手ドライバーは上手くタイミングを見つけられず、平均タイムで3番手に。
トヨタは7号車がポールポジションを狙ったが、こちらも他車のスピンを避けたりしたせいで、2番手に。そしてマシンのセッティングが今一つの8号車は4番手となった。こんなわけで、ポルシェ1号車が1分54秒097とトヨタ7号車に0.6秒差を付けてポールを獲得し、トヨタの7、9、8号車に続いてポルシェ2号車が5番手となった。
■決勝レース
快晴で迎えた決勝レースは、ポールポジションのポルシェ1号車を先頭に火蓋が切られた。スタートの周の第1コーナーでいきなりトヨタ9号車のラピエールはブレーキをロックさせてコースアウトし、波乱のレースを予感させた。2、3番手にトヨタの7号車、8号車が付け、ポルシェを追い上げ、10周目にトヨタ7号車がトップに立ち、しばらくして8号車もポルシェ1号車を抜いて2番手に浮上した。
スタートの周で大きく遅れたトヨタ9号車は、中盤を迎える頃には5番手にまで回復した。レース中盤には7号車が大きくリードし、28秒遅れでトヨタ8号車、さらに22秒遅れでポルシェ1号車という順番となり、トヨタは安泰に見えた。
ポルシェの序盤は1号車がトップを守ったが、トヨタ2台に抜かれ、さらにポルシェ2号車にもパスされた。中盤以降はピットインのタイミングが絶妙でトヨタとの差を詰め、トヨタ8号車と接戦を展開したが結局3番手に。さらにレース終盤に再度ポルシェ2号車に抜かれ、4位でレースを終えることになる。
ポルシェ2号車はレースではすこぶる好調で、トヨタを追撃したが、レース中盤に右リヤタイヤのエアが漏れ、予定外のピットストップを行ない遅れを取った。
ところが中盤から終盤にかけて、クラッシュ事故により2回の全コース・イエローフラッグとなったが、不運にもトヨタ7号車は2回ともそのフラッグの前にピットインを終えていたため、全コース・イエローフラッグを利用してピットインしたクルマにあっという間に差を縮められてしまった。ポルシェ2号車は全コース・イエローフラッグのタイミングで給油し、遅れを取り戻し最速ラップタイムを記録しトップを追い上げた。
終盤になってトヨタ8号車がトップに立ち大きなリードを奪った。遅れた7号車はポルシェ2号車と接戦を演じ、一時は抜かれてしまった。しかしポルシェ2号車は他車と接触し、フロント・ボディを交換したため、トヨタ7号車が2番手に上がり、トップの8号車を追い上げる。最終的には1.9秒差まで縮めたが結局2位でレースを終えた。
トヨタにとっては1-2フィニッシュという最高の結果となった。しかしレースの流れとしては、本来は7号車がトップでゴールする予定だったはずが、全コース・イエローの時間を2回ともうまく利用できなかったのは心残りといえる。
ポルシェは、ル・マン仕様であるにもかかわらず、ポールポジションを獲得し、最速レースラップを打ち立て、3位、4位となったことで満足していた。最初の2戦に低ダウンフォース仕様で出場するという戦略決定を決断した結果だからだ。そしてル・マンのための最後の仕上げとして5月12日からスペインのアラゴン・サーキットで30時間連続の最終テストを行なうことにしている。すでにル・マン24時間レースは始まっている。
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