【ポルシェ・ジュネーブモーターショー2013】新型911 GT3がワールドプレミア 

後輪操舵システムを採用した991型「911 GT3」

2013年3月5日、ポルシェAGはジュネーブモーターショーにおいて、新型911 GT3、GT3カップカーのワールドプレミアを行った。これと同時にポルシェ・ジャパンからも、3月5日にこの新型911 GT3の予約受注を3月12日から開始すると発表した。

911 GT3は、きわめてエキサイティングな公道レーシングカーともいえるが、今回発表された新型はピュアスポーツカーとして一段とアップグレードされている。サーキット走行向けの高性能スポーツカーであり公道レーシングカーと言う位置付けで、エンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーなどすべてを一新。パフォーマンスは従来型より大幅に向上している。最高出力は475ps(350kW)、パワーウェイトレシオは3.0kg/psとなり、0-100km/h加速は3.5秒と発表されている。トップスピードは7速ギヤで315km/hに達し、ニュルブルクリンク北コースを7分30秒以内でラップする実力を持つ。

技術的なハイライトは、ポルシェの市販モデルとして初めて採用したアクティブリヤホイール・ステアリング(4輪操舵システム)、アクティブ可変フルLEDヘッドライトなどが挙げられる。この新型911 GT3はモータースポーツで活躍するために必要な条件を満たすだけでなく、向上した運動性能と洗練された実用性を併せ持つ高次元のエモーショナルなスポーツカーとなった。

911 GT3のパワートレーンは、475ps/8250rpmを発生する3.8Lの水平対向6気筒・直噴エンジンで、ポルシェ7速ドッペルクップルング(PDK)と組み合わせている。このエンジンは、911カレラSのエンジンをベースにしているものの共用している部品はごくわずかだ。特に専用の大径バルブ用のシリンダーヘッド、クランクシャフトとバルブ駆動機構を始め、GT3専用にチューニングまたは開発されたパーツを多数採用している。例えば、鍛造チタニウム製コンロッド、鍛造アルミピストンなどが先代モデルから引き続き採用。こうした専用設計により最高許容回転数9000rpmという超高回転型エンジンとなっている。

このエンジンは7個の吸出しポンプと1個の圧送ポンプを持つドライサンプであることはもちろん、電子制御オイルポンプ、高回転用ロッカーアーム式動弁システム、標準エンジンとは異なる左右バンク独立式の直噴用高圧ポンプ、燃圧200bar/6噴孔式インジェクターなど最新のシステムを採用し、さらに軽量化も行われた。重量は従来型より25kgも軽くなっている。また出力レベルは125ps/Lに達している。

デュアルクラッチ・トランスミッション(PDK)も、GT3専用に開発された装備の一つだ。その特性はモータースポーツで使用されるシーケンシャルギヤボックスからアイディアを得た専用設計で、さらに従来型より2kg軽量化されている。このPDKはマニュアルシフトまたはアダプティブシフト・プログラムという2つのモードを選択することができる。

マニュアルシフトは、ステアリングホイールのパドルを使ってシフトする。シフトストロークは短縮され、操作力が最適化されたことで、より素早い変速、明確なフィードバックが実現している。もちろんセレクターレバーを使って変速でき、シフトパターンは、モータースポーツで使われるものをベースにして、レバーを後ろに引くとシフトアップ、前に押すとシフトダウンとなる。また、左右のパドルを同時に引くと瞬間的にニュートラルとなる「パドル・ニュートラル」が新採用されている。パドルを戻すとクラッチは接続される。これは雨天のサーキット走行などでアンダーステアが発生した時やレース・スタート時に使用するものだ。

PDKのシフトプログラムと反応時間は、最高のパフォーマンスを得られるように設計されており、他のポルシェとは大きく異なる。マニュアルシフトモードではレーシングカー同等の100mm秒以内に反応する電光石火の変速が可能だ。ドライビングパフォーマンスを高めるために、トルクピークを過ぎた後で瞬時に変速が行われるので、新たに選択されたギヤでは、エンジン回転数の最もダイナミックな領域を使うことができる。

アダプティブシフトプログラムを選択すると自動変速モードになるが、このPDKにはスポーツモードとサーキットモードの2種類のプログラムしか設定されていない。そして変速の速さとタイミングはドライバーの運転に合わせて変化するようになっている。ギヤ比、ファイナル比は他のポルシェより大幅に低められ、7速で最高速に達する。

911 GT3は、運動性能も一段と高いレベルとするべく設計されている。そしてポルシェとしては初めてのアクティブリヤホイール・ステアリングを採用した。このシステムは、リヤホイールを車速に応じてフロントホイールと逆または同じ方向に動かすことで、俊敏性と安定性を向上させる後輪操舵システムだ。

システムは2個の電気機械式アクチュエーターを従来のトーコントロールアームの位置に装備し、車速に応じてリヤホイールの操舵角を最大約1.5度まで変化させる。車速が50km/h以下であれば、システムはリヤホイールをフロントホイールと逆位相に操舵し、コーナーにはより高い速度で進入してダイナミックなコーナリングが可能になる。これはホイールベースが約150mm短縮されるのと同じ効果がもたらされるので、俊敏性と実用性が大きく向上し回転半径が短くなり、駐車場など低速での取り回しも容易になる。

また、車速が80km/hを超えるとシステムはリヤホイールをフロントホイールと同位相に操舵する。これによりホイールベースが約500mm延長されるのと同じ効果がもたらされ、特に高速走行時の安定性が高まる。また、ドライバーのステアリング操作をきっかけとして、リヤアクスルに加わるサイドフォースが素早く増大するので、進路変更を開始するときの反応が、より自然で調和のとれたものになる。

それ以外に電子制御リヤデファレンシャルとダイナミックエンジンマウントも採用。新開発のオールアルミニウム製サスペンションは、先代モデルと同じく車高、トー、およびキャンバー角を調節することができる。またレース用と同等のセンターロックシステムを備える新しい20インチ鍛造ホイールが装着される。フロントは9J×20サイズのホイールと245/35ZR20のタイヤ、リヤは12J×20のホイールと305/30ZR20のタイヤが装着される。

新型911 GT3のシャシーは、911カレラのシャシーをベースとしながら大部分が専用設計され、車高も30mmローダウンされている。専用にチューニングされた2種類のモードを選択できる可変ダンパーシステム(PASM)が先代モデルと同じく標準装備される。さらにフロントのホイールベアリングとハブが改良され強度を高めている。フロント・トランスバースコントロールアーム(ロワアーム)も新開発され、安定性向上と重量軽減に貢献。スプリングとアルミニウム製アウターチューブを持つダンパーストラットの軽量化に貢献している。これらの対策により標準のコンポーネントより3kg以上の軽量化を実現した。ステアリングは電動機械式のEPSを採用している。

マルチリンク式リヤサスペンションも、大部分が911 GT3のために新開発された。ホイールハブなどは大型化され、安定性と強度を向上。専用のサブフレームはコントロールアームを含め中空構造の鋳造アルミニウム製で、約3.9kgの軽量化と強度の向上を実現している。リヤアクスルのスプリング/ダンパーユニットには、ヘルパースプリングが追加されている。

911 GT3はこれまでと同様に標準タイプの911カレラのボディをベースにした2シーターで、フロントセクションとリヤセクション、フロアは専用設計でアルミ材を多用している。ルーフ、フェンダー、エンジンフード、ドアもアルミニウム製だ。このため従来型よりボディ重量は約13%軽量化されているという。

さらに、911 GT3のリヤアクスルは、911カレラと比べてトレッドが44 mm拡大されている。GT3の明確な識別点は大型の固定式リヤウイングだ。このウイングは空気抵抗を抑えながらダウンフォースをさらに増加させ、新型911 GT3の優れたエアロダイナミクスに貢献している。新開発されたエンジンフードは、FRPとカーボンファイバーを組み合わせて作られている。ウイングのステー、エンジン吸気用大型ラムエアインテーク、そしてガーニーフラップが一体となってデザインされているのが特徴だ。ステーに取り付けられたリアウイングは、これまでと同様にサーキットでの使用に合わせて角度を調節することができる。

911 GT3諸元表

 

 

専用6速パドルシフトを備える911 GT3 カップカー 

また同じくワールドプレミアされた「911 GT3カップカー」は、ワンメイクシリーズのために開発された最新のカップカーで、GT3と同じくツッヘンハウゼンの生産ラインで製造される。
最高出力は460psを発生する。最高回転数は8500rpmだ。またカップカー初のドライブバイワイヤーを採用している。さらにカップカー専用の6速常時噛み合い式トランスミッションは、パドルでシフト操作ができるようになった。

カップカーの車両重量は、わずか1175kgに抑えられている。またサスペンションはブッシュなしでフレームにダイレクトマウントされている。

レース車両としてのドライバー・インフォメーションシステムも進化し、車両情報の記録データはシステム内部のデータメモリーに記録され容量32MB 。このメモリー容量は128MB まで増設することができる。ニュー911 GT3カップカーはF1のヨーロッパ ラウンドと共催される2013年のポルシェ・モービル1 スーパーカップでデビューを飾ることになっている。

911 GT3 CUP諸元表

 

ポルシェ・ジャパン公式サイト

ページのトップに戻る