2020年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したプジョー208の新型「208GTライン」に試乗した。スタイリング、走り、先進性、さまざまな分野で驚きと「ワオォ」の感動が詰め込まれた新型車だった。
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先進デザイン
インテリアのデザインを見て欲しい。すべてが斬新で、衝撃あるデザインだ。新しいi-Cockpitは3Dを採用している。メーターパネルに表示される情報が立体的に表示され、そのメーターパネル自体のデザインも斬新。
ディスプレイモニターはメーターパネルと同じ高さに位置し、わずかにドライバー側へオフセットしおり、視線移動が少なくて済む設計だ。そのモニターの外枠もただの長方体デザインではなく、デザイナーがデザインをしたことの痕跡が明確にあり「デザインとはこういうことだ」と主張しているかのように存在感がある。
ディプレイモニターの下には綺麗にデザインされたトグルスイッチが並ぶ。そのノブもきっちりとデザインされ、「流用」や「汎用」が考えにくいデザインされたスイッチになっていることにも感銘を受ける。
すでに馴染みが出てきた小径ステアリングはボトムとトップがフラットなデザインになり、よりハンドル越しにメーターが見やすいデザインになっている。後で述べるがもちろんクイックなステアフィールは健在でドライビングが楽しくなる。
そして量販のBセグメントでありながら、ダッシュボードからドアトリムにかけて8色の展開が楽しめるアンビエントランプも装備され、高級車の装備を取り込んでいる。
シートはアルカンターラ素材を使い、バケットシートのように体のホールド性が良くドラポジがすっきり取れる。かつてのようなペダル配置がオフセットしていることもなく、素直な右ハンドルでのドライポジが可能だ。ステアリングはもちろん、チルトとテレスコピックを装備している。
インテリアを眺めるだけで、全てに「デザイン」が存在しおり、フランス車のこだわりをダイレクトに感じている。
エクステリアで目を引くのはフロントフェイスの両サイドにある縦型のランプ。ライオンの牙をモチーフにした、LEDデイタイムランニングライトになっている。そしてボンネット先端には「208」のエンブレムがある。ありそうでなかったアイディアだ。
試乗したGT LineのヘッドライトはフルLEDライトが装備され、インテリジェントハイビームが装備されていた。これは対向車や前方車両を感知した場合、ハイビームとロービームを自動で切り替え、最適な視界を確保する夜間走行では非常に便利なアイテムだ。特に都市部を離れ郊外のワインディグなどでは恩恵を感じる。
ボディサイズは先代の208よりやや大きくなり、ロングノーズでワイド&ローが強調された。全長は4095mmで先代より+120mm、全幅1745mmで+5mm、全高は1445mmで-5mm、ホイールベースは2540mmとなっている。それでも最小回転半径は先代と同様の5.4mをキープしていた。サイズとしてはBセグメントのベンチマークとされるフォルクワーゲンポロとほぼ同等サイズになっている。
ハンドリングと乗り心地
驚くほど滑らかに、そして静かに走る。こんな量販Bセグメントモデルがあっただろうか?欧州では先日国内デビューしたヤリスやフィットと同じフィールドでガチライバル関係になるが、トヨタ、ホンダともに苦戦するだろう。
小径のハンドルが物語るようにクイックに動くが、けっして唐突ではないので、ジワリとハンドルを切っていくと舐めるようにコーナーをトレースしていき、この上なく気持ちよいステアフィールを得る。操舵力も適度にあり、切り戻しの手応えも程よくあるので、タイヤを持って曲がっているかのような錯覚をする。
サスペンションはGT Line グレードということもあり、しっかりしたサスペンションだ。とはいえフリクションも感じることなく、ハーシュネスも綺麗にいなし、文句ない乗り心地だと思う。近年のプジョーはシトロエンのようなストロークの長いサスペンションというより、どちらかといえばドイツ車方向のしっかりした高剛性な乗り心地へシフトしている。特に208にはその傾向があり、この新型もしっかりとした足回りの乗り心地だった。
さらに静粛性も高く、綺麗な舗装路だと滑るように、なんの抵抗も感じることなく滑らかに走る。路面の悪い場所ではそれなりに車内に音が入り込んでくるが、うまく丸めた音にしているため、気に触るような喧しさはない。「音がおおきくなったなぁ」程度にしか感ぜず、同乗者との会話明瞭度にも影響は少ないと思う。
エンジンとボディ
プジョーの最新プラットフォームCMP(コモンモジュラープラットフォーム)を採用し、ピュアテックターボ1.2Lガソリンエンジンを搭載している。これにシフトバイワイヤを採用したアイシンAW製8速ATの「EAT8(エフィシェントオートマチック トランスミッション)」が組み合わされている。このATがまた秀逸で、とにかくスムーズに変速をし、気持ちの良さこの上ないのだ。
エンジンも静粛性が高められ、高速走行でもエンジンの唸りやザラツキなどもなく、スムーズにまわり気持ちよさを加速させているのだ。
燃費はJC08モードで19.5km/Lで先代の18.2km/Lより向上し、試乗時の実走行でも16km/L後半をコンスタントに記録していた。もちろんユーロ6に適合した最新世代のエンジンで、最高出力は74kW(100ps)/5500rpm、最大トルク205Nm/1750rpmを発揮するダウンサイジングエンジンだ。
ちになみ、新型208にはこのガソリンエンジンモデルとディーゼルエンジン搭載モデル、そしてピュアEVのe208があり、国内には2020年秋にEVモデルが導入される予定。ディーゼルに関しては情報がないので、おそらく国内導入は見送られているのかもしれないが、是非ディーゼルも排ガスをクリアして導入してもらいたいモデルのひとつだ。
クセのあるADAS
高度運転支援機能も搭載され、さまざまな安全機能を搭載していた。あまり体験はしないがアクティブセーフティブレーキ(緊急被害軽減ブレーキ)やアクティブブラインドスポットモニター、アクティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、トラフィックサインインフォメーション、ドライバーアテンションアラートなどが装備されている。
これらのADAS装備のうち高速道路でのアクティブクルーズコントロールを多用してみた。操作は左側のウインカーレバーの下にもう一つのレバーがあり、ステアリングに装備されないあたりが小径ステアだからなのか、操作性はいまひとつではあるが、場所がインプットされれば、ボタンひとつでACCが稼働するので問題なしだ。
渋滞時は完全停止まで行ない、追従機能があるので運転疲労軽減には役立つ。新東名高速道路の120km/h制限のエリアを快適に、不安なくACCで走行できたが、レーンキープには特徴があり、かなり賢い制御になっていた。
それは通常レーンキープは車線内中央維持を基本とする制御が多いが、プジョー208に装備されたレーンキープは車線内の任意の場所をキープできるのだ。大型トラックの横など、センターより、少しだけ右に、とか左に寄せたいときがあると思うが、そうしたドライバーの意図を理解するかのようなレーンキープが可能なのだ。
いずれにしても、クラスを超える性能、機能、センス、装備が揃い、試乗車は10万2000円のオプション、パノラミックガラスルーフを備えて300万円を超えていたがGT Lineの車両価格は293万円だ。ベースのstyleグレードは239万9000円なので、価格的にも強烈な競争力があるおすすめの一台だ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>