このところ、ますますモデルラインアップが充実しているMINIだが、7番目のモデルとしてペースマンが誕生。そのMINIペースマンに早速試乗してみた。
試乗の前にひとまずペースマンのデビューで7モデル8バリエーションとなった、今のMINIのラインアップについて確認してみよう。
MINIの基幹モデルである4人乗りの3ドアハッチバック、そのオープンモデルのコンバーチブル。2シーター&独立トランクを持つMINIクーペ、それをベースにしたオープンモデルのMINIロードスター。ちなみにクーペはルーフデザインが特徴的で、ヘルメットルーフというニックネームがある。
さらにステーションワゴンのようにリヤセクションを延長したMINIクラブマン。これは3ドアハッチバック改とでもいえる左右非対称のドアが特徴で、ベースはハッチバックだがホイールベースは延長されサイズも大きくなっている。そして4人乗りのクラブマンをベースに2シーター化して荷台を拡大したのがクラブバン。シューティングブレークをイメージしたバリエーションモデルだ。
またユーザーの要望に応える形でデビューしたのが、5ドアハッチバックのクロスオーバー。ホイールベースの延長、より大きなボディを持ち4×4とFFがあり4人乗りのモデルだ。そして今回デビューしたペースマンは、5ドアハッチバックのクロスーバーをベースにしたクーペモデルで、駆動方式は4×4とFFがある。
MINIはもともと個性的でデザイン性が高く人気を得て、独自のブランディングに成功したモデルだ。コンパクトサイズであるこのセグメントにプレミアム・コンパクトというカテゴリーを誕生させるきっかけにもなったのだ。小さいサイズでありながら上質なインテリア、乗り心地、走りの良さなどが充実し、そこには従来の価値観以上のものがあることで、人気を博している。
当然、他の自動車メーカーもそこにマーケットが存在すると分かると、プレミアム・コンパクトのニューモデルを投入してきた。例えばアウディA1や、アルファロメオ・ミトである。そのため元祖プレミアム・コンパクトのMINIとしても、高みの見物というわけにもいかず、より魅力的なモデルを輩出し、商品力を高めていった結果が、7モデル8バリエーションという現行ラインアップ。いずれにしてもニッチなマーケットであるから、狙い撃ち的にターゲットを絞っているのが特徴といえるだろう。
さて、ペースマンはスポーツアクティビティ・ビークルというコンセプトで開発されている。どこへでもガンガン走って行き、仲間と一緒にスポーツ用具を積んでスポーツにレジャーにとアクティブに行動するユーザーを想定している。また、ファッションにも気を使い外見だけでなく、内面的にもこだわりのある人をターゲットユーザーとしている。
BMWジャパンのマーケティングでは、30代、40代の男女で購入するときに、また購入後も買った理由が明確であり、ここがこうだから気に入って買ったという説明をするタイプと分析している。そんなマーケティング結果を踏まえつつ、ペースマンの魅力を探ってみることにした。エクステリアではクーペスタイルが強調されるルーフラインと、高いウエストラインが特徴的。真横からのルックスはウインドウ面積が小さく、スポーティな印象。そして高いグランドクリアランスに大径のタイヤがマッチし、SUVの要素も強調し、高い走破性をイメージさせる。
BMWではクーペスタイルのモデルをデザインするときは、必ずワイド&ローコンセプトでデザインするという。そのためには、水平基調のラインを多用することになり、ペースマンではリヤビューがミニの伝統的な縦型テールレンズではなくなり、横型デザインになっている。そしてルーフライン、ショルダーライン、いくつかのバンパーラインそしてテールレンズのラインが水平のラインを持ったデザインとなり、ワイド感のあるルックスに仕上げている。
フロントはかわいい表情の中にも凹凸をつけたデザインと無骨な印象が同居したデザインで、たくましさを持った印象となっている。したがってどことなく遊び心をもった、やんちゃなイメージを持つ人も多いのではないだろうか。
インテリアはラウンジコンセプトでデザインされているという。それはホテルなどのラウンジのように、広いスペースにゆったりと座れ、落ち着きのあるくつろぎのスペースを目指して設計されている。そのため、シートは4座席独立タイプのシートが装備され、5名乗車は設定されていない。それぞれのシートでスペース使ってくつろげるようにと配慮されている。例えば、可動式のレールに接地されたドリンクホルダーなどは、好きな場所に設置できるようになっているのだ。
インテリアのデザインでは伝統的な丸と楕円で構成され、ミニの特徴でもあるセンターメーターがペースマンにも鎮座している。このセンターメーターのデザインはベースとなるクロスオーバーのものとは異なり、差別化がきちんと図られている。そして細部にわたるデザイン性の高さ、手触りで感じる質感、見た目の質感ともに申し分なくプレミアム感のあるインテリアとなっており、コンパクトではあるがきちんとエクスクルーシブな空間を味わうことができる満足度の高いモデルだ。トランクスペースは4名乗車で330L。50:50に分割する可倒式を使えば1080Lの容量が確保でき、ユーティリティの点でもポイントは高い。
搭載されるエンジンは1.6LターボでアイシンAW製6速ATとゲトラグ製6速MTが全モデルで選択できる。試乗車は4WDのMINIクーパーSペースマンオール4で6AT。396万円というトップグレードだった。走り出しは低速からトルクのあるタイプで、滑らかにそして静かに走る。エンジン音も小さくインテリアの質感とマッチして高級感のある走行フィールだ。
6速ATはステアリングにパドルスイッチが左右にあり、プッシュでダウン、プルでアップというタイプが装備される。ポルシェでも採用しているタイプだ。
ステアリングフィールは、ドイツ車特有のしっかりした直進性と微小舵角に対して遅れることなく反応する正確性を持っている。ステアリングを切った瞬間に切った分だけノーズが動き、期待値どおりの反応を示す。アジリティの高さはMINIの特徴のひとつで、メーカーでは「ゴーカートフィール」を強調する。しかし、3ドアハッチバックの通常のMINIほどではなく、どちらかといえばBMWの1シリーズのような味付けの方向だと感じ、MINIより少し大人なフィールと言える。ただ、ロールは小さめでヨーモーメントがしっかりあるので、このあたりはやはりMINIのフィールと言えるかもしれない。
乗り心地では、後席でも上質さが確保されており、このクラスではめずらしくマルチリンクが採用されている点などでもプレミアムモデルであることがわかる。もちろん、ボディ剛性の高さはしっかりと伝わってきて、安心感の高いフィールがある。4WDのトルク配分では通常フロント60:リヤ40という配分が基本となるが、DSC(ダイナミックスタビリティコントロール)のデータで常に連続可変しながら走行する。可変幅は100:0から0:100までの領域があるが、その変化はドライバーには分からない。
こうしてMINIブランドはさまざまなモデルラインアップがあり、さらに販売店でも専用のアフターパーツを充実させたりと、購入後のカスタマイズの楽しみもあるモデルで、見渡してみても、オンリーワンな存在だと思う。ユーザーにとってはこれほど遊び心が豊かなモデルは他にはなく、満足度の高いモデルということができるだろう。