新型「メルセデスAMG SL 43」上陸 F1由来の電動ターボ搭載

メルセデス・ベンツ日本は、2022年10月24日 メルセデス・ベンツのラグジュアリーロードスターの7代目となる新型「メルセデスAMG SL 43」を発表し、発売を開始した。

「SL」は、「Super」と「Light」(軽量)を略したモデル呼称で、1952年に公道を走行できるレーシングスポーツカーとして発表されたことから歴史は始まり、今年で70周年を迎える。

7代目のR232型は2021年10月にヨーロッパでデビューした。その車名通り、サブブランドのAMG部門で開発・生産される高性能ロードスターで、V8ツインターボを搭載したSL 55 4MATIC+と、さらに高性能なSL 63 4MATIC+がラインアップされていたが、2022年春に2.0L・4気筒ターボエンジンを搭載したSL 43が追加され、このSL 43のみが日本に導入されることになった。

エクステリアは、メルセデス・ベンツのデザインの基本思想である「センシュアル ピュリティ(官能的純粋)」に、AMGのスポーティな要素を組合わせたロングノーズのデザインだ。ボンネットの左右のパワードームなど、SLの長い伝統を受け継ぐ特徴的な要素を盛り込んでいる。

ルーフは従来のメタルトップのコンバーチブル(バリオルーフ)から3層構造の電動ソフトトップに変更され、21kgも軽量になり、低重心化にも貢献している。なお、開閉は約15秒で完了し、車速60km/hまでであれば走行中でも開閉 可能だ。

パッケージ的には、従来の2座席から2+2に変更され、きわめて新調150cm以下に限定される狭いリヤの2座席を設置。そのため、ホイールベースが延長され、短いオーバーハング、そしてブラックペイント仕上げのフレームを持つ大きく傾斜したウインドスクリーンにより、コンパクトで低く見えるスポーツカーらしいフォルムとなっている。

フロントマスクは、AMG専用のフロントグリルが最大の特長だ。下側が幅広の輪郭と14本の垂直ルーバーは、1952年製レーシングスポーツカー「300 SL」から取り入れたデザインだ。

リヤは、省スペースの軽量なZ形フォールドのソフトトップを採用することで、 高さを抑えたすっきりしたリヤに。そしてトランクリッドにアクティブに作動するリトラクタブルリヤスポイラーを段差なく組み込んでいる。この自動可変スポイラーは80km/h以上で作動し、車速や運転状況に合わせて自動的に5段階の最適な角度に調整されるようになっている。

またこの可変リヤスポイラーに対応するため、フロントにはアクティブエアコントロールシステム「エアパネル」を装備。上部エアインテーク奥に電子制御式の水平ルーバーを備えており、これをアクチュエーターモーターの働きで開閉することにで、気流を制御し、空気抵抗をコントロールするようになっている。

インテリアは、初代300 SLロードスターに始まる伝統を現代的に表現しており、スポーティなコクピット感と快適性を両立。上質な素材と丹念なクラフトマンシップ、ディテールに対する配慮により、ラグジュアリーも感じられるインテリアに仕上がっている。

メータパネルはもちろん、センターコンソールに配置された電動角度調整機能を備えたメディアディスプレイに至るまで、ドライバー重視のデザインとなっている。特に立体感のあるメーター部などは、過去の伝統と最新のデジタル技術を融合させたた「ハイパーアナログ」と呼ばれるデザインを採用。

ドアにはリアルメタルのブルーメスター・サラウンド・サウンドシステムのスピーカーが内蔵され、特長的なデザイン要素にもなっている。

またAMGパフォーマンス・ステアリングホイールに標準装備のAMGドライブコントロールスイッチは、直感操作と鮮やかなカラー液晶表示、モダンなアイコンが特長だ。これにより、重要な走行機能とすべてのドライブモードを、ステアリングホイールから手を離すことなく操作できる。

このボタンは、設定リングを回して、液晶表示ボタンを押すことで操作でき、選択した設定はそれぞれのボタンに直接組み込まれた液晶表示部で確認できる。

AMGスピードシフトMCT・9速トランスミッションもステアリングホイール裏側の左右に配置したアルミニウム製パドルを使って、マニュアルシフトができるようになっている。

新型SLのボディ骨格は、AMGが開発したまったく新しい車両アーキテクチャーを採用している。軽量なアルミニウムを主材料とした複合素材によるスペースフレーム構造により最大限の剛性と軽量化を両立。

ボディ剛性はAMG GTロードスターに比べ50%増、曲げ剛性は40%アップという空前のレベルになっている。その一方でホワイトボディの重量は270kgという軽量さを誇っている。

高剛性により精度の高いドライビングダイナミクスや優れた快適性、最適なパッケージング、それにスポーティなボディプロポーションが実現している。ボディ骨格はアルミニウム、スチール、マグネシウム、繊維複合材が使用されている。フロントのウインドスクリーンのフレームは中空の熱間成形高張力スチールを採用し高い強度を確保している。なお骨格の結合にはMIG溶接、レーザー溶接、パンチリベット、ブラインドリベット、MIGハンダ、接着など最新の接合方法を駆使している。

なお、この新スペースフレーム・ボディはすべてモデルベース開発され、シャシーのプロトタイプ試作は省略されている。

トランク容量は213Lで、ソフトトップを閉じた状態では約240Lに拡大される。

パワーユニットは、メルセデスAMG C43と共通の2.0Lの直列4気筒エンジンだ。4気筒エンジンとして初めて「One man, One engine」の主義に従い熟練のマイスターが手作業で丹念に組み上げる「M139 DE20AL」を搭載している。SL 43は最高出力381ps(280kW)、最大トルク480Nmを発生。レーシングエンジンと同レベルの高出力エンジンとなっている。

シリンダーブロックはクローズドデッキ構造で、高燃焼圧に耐えるようになっている。燃料噴射はポート噴射・直噴併用式だ。なおこのエンジンは最高475psまで発揮できるポテンシャルを持ち、2.0Lの4気筒としては世界最高の量産・超高出力エンジンということができる。

このエンジンは 量産車としては世界初となる電動ターボチャージャーを採用している。このターボチャージャーはF1由来の技術だ。48Vの電動ターボは、厚さ約4cmのモーターが排気タービンと吸気側コンプレッサーホイールの中間の軸受け部に配置され、その下部にECUが一体装着されているというレイアウトだ。

この電動ターボにより、排気ガス流量が少ない時でもモーター駆動により過給を行ない、低速トルクを向上し、エンジン・レスポンスも最大限に高めることができるのだ。

またこのエンジンは48Vのベルト駆動のスタータージェネレータによるマイルドハイブリッド・システムを搭載。短時間の出力ブーストのほか、減速時には回生ブレーキで電力を回収することができる。

トランスミッションには、従来63モデルにのみ搭載されていた「AMGスピードシフトMCT」(9速オAT)を採用。トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを搭載し、ダイレクト感のある素早いシフト チェンジと高い伝達効率を実現している。シフトダウン時の 自動ブリッピング機能やレーススタート機能によってダイナミックな走りができるのも特長だ。動力性能は、0-100km/h加速4.9秒、最高速度275km/hに達する。

さらに、高速走行時などにアクセルから足を離すとエンジンとトランスミッションを切り離して燃料消費を抑えるセーリング機能の採用によって燃費を優先する「Comfort」、よりスポーティなドライビングが楽しめる「Sport」、「Sport+」、「RACE」、 滑りやすい路面を安全に走行する「Slippery」、様々なパラメーターを個別に設定できる「Individual」の6つのモードを備えている。

サスペンションは、前後ともリンク類、ハブキャリアを含め鍛造アルミ製の5リンク式を採用。特にフロントはAMG初の5リンク式で、フロントはインホイール式のデュアルピボット構造とすることで仮想キングピン軸を持ち、さらに5リンク式により横剛性を向上させている。

またサスペンションの軽量化も重視され、軽量なスプリング、中空の可変厚スタビライザーを装着している。

ダンパーは、最新世代の伸圧2方向の可変調整式とし、加速センサーやスピードセンサーのデータをもとに4輪独立制御されるセミアクティブ・ダンパーとなっている。もちろんサスペンションは、AMGダイナミックセレクトのドライブモードにより自動調整されるが、独立した3段階の調整も可能なスイッチもそなえている。

ドライビングの運動制御は、統合型車両運動制御システムのAMGダイナミクスを搭載。ブレーキ・トルクベクタリング、ESCの制御特性をモードに合わせて選択することができ、アマチュアからプロドライバーにまで適合させることができる。

メルセデスAMG SL 43は、他のメルセデス・ベンツのモデルと同様に最新の運転支援システム、コネクテッド・サービス、音声アシスタント・システム、360度カメラなどもフル装備していることはいうまでもない。

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