【メルセデス・ベンツ GLC 試乗記】2代目が示した存在感としなやかな乗り心地

メルセデス・ベンツのDセグメントサイズのSUV「GLC」がフルモデルチェンジし、2023年3月に国内発表された。2代目となったプレミアム・ミッドサイズSUVはさらに高級感が増し、ウルトラ・スムースな乗り心地になって登場した。

初代GLC(X253)は2015年にデビューし、2020年と2021年ではメルセデス・ベンツの中でベストセラーSUVモデルとなるなど、全世界での累計販売台数260万台(GLK含む)を販売するヒットモデルだ。

メルセデス・ベンツ GLC 220d 4MATIC (AMGラインパッケージ装着)

2代目のGLCのボディサイズは、D+セグメントサイズになり、全長4720mm(AMGラインは4725mm)、全幅1890mm、全高1640mm(AMGラインは1635mm)、ホイールベース2890mmで初代モデルに比べ全長は50mm延長されている。そのためラゲッジ容量は50L増加し600Lとなり、リヤシートをカーゴポジションにすると620Lになる。またリヤシートを倒すと1680Lの最大容量を確保するなどユーティリティの点でも改良されている。

パワートレインは2.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジンでOM654M型を搭載している。このエンジンはクランクシャフトが変更されストロークが92.3mmから94.3mmに伸長したため、排気量が1950ccから1992ccへとアップした。

これに48Vのモーターがエンジンとミッションの間に配置したマイルドハイブリッドだ。エンジン単体での出力トルクは145kW(197ps)/440Nmで、ISGは17kW(23ps)/205Nmの出力を持っている。トランスミッションは9速ATの「9G-tronic」で変速比幅が広く100km/h巡行時のエンジン回転はわずか1200rpmで走行する。したがって燃費にも貢献するし静粛性にも貢献していることがわかる。

OM654M型 2.0L直4ディーゼルターボエンジン+48Vマイルドハイブリッド

驚いたのはその静粛性の高さや乗り心地の良さなど、非常に高級な乗り味になったことだ。全ての動きに対してガチッとしたところがなく、しなやかに動く。段差が厳しい路面を選んで走行しても、ダン!という直接的な入力はなく、フワッとしたようないなしをしつつ、揺れがすぐに収まるという乗り心地で、かつてないしなやかさなのだ。

またアイドリングからの復帰も恐ろしく滑らかで、気づかないほどだ。ディーゼルエンジンでありながらアイドリング音もわずかに聞こえる程度で、エンジンの存在感が薄い。さらに走行時でも静粛性が高く、低回転のトルクが太いので力強く、そしてレスポンスも良い。交差点でエンジンが停止し、そこからの復帰も意識しないと気付けないほどなのだ。

19インチ AMG 5スポークアルミホイール

さらに、試乗車にはオプション装備のリア・アクスルステアリングが搭載され、5.1mという最小回転半径で取り回しが楽だった。これは4輪操舵機能で60km/h以下では最大4.5度逆位相で切れ、60km/h以上では同位相に切れる仕組み。Cクラスにも搭載されていたが、リヤステアは違和感があるとレポートしているものの、GLCではその違和感はかなり改善され、高速安定性や取り回しという点では歓迎される装備になっていた。

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歓迎されるものでは、ディスタンスアシスト・ディストロニックを稼働させていると自動で先行車との車間距離調整や車線内維持などのアシスト機能が働くが、このときドライバーがハンドルを握っていることが条件だ。先代モデルではトルク感応型であったため、ステアリングを少しでも動かさないとアラートが出ていた。それが新型GLCでは静電式になったため、軽く触れているだけで感知するので操作が不要になったのだ。

これはクルマの直進性が良いと、ステア操舵は全くしない。たとえハンドルをにぎっていても操舵はしないので、以前のタイプだとアラートが出てしまっていた。仕方なく、ドライバーはあえてステア操舵をするという経験を多くの人がしていると思う。それが静電式となったことで、その煩わしさから解放されることになったのだ。

AMGラインはツインスポークのステアリングが装着される

さて、エクステリアデザインはメルセデスのデザイン言語とも言える官能的純粋(sensual purity)を継承したデザインで、全長は50mm、ホイールベースも15mm伸び、ひとまわり大きく存在感たっぷりになった。

試乗したAMGラインのフロントグリルにはスターパターングリルが採用され、威厳のある顔立ちだ。またサイドデザインではエッジやプレスラインは少なく、曲面構成でプロポーションを表現し、新しいと感じる。

インテリアも高級感あふれるデザインで、センターコンソールからダッシュボードへとつながるトリムや縦型の大型ディスプレイ、フローティング構造のメーターパネルなど、見た目の派手さや先進感は申し分ない。

機能的にも11.9インチの縦型ディスプレイは6度ドライバー側に傾いており視認性は良い。さらにゼロレイヤーコンセプトにより、ドライバーが欲しい情報のアイコンがトップ画面に常駐しており、階層操作をしない操作性の改良も加えられている。そして12.3インチのメーターパネルも自立し浮いているように見え、SUVでは初のAR(現実拡張)ナビがオプション装備されていた。これは現実の景色がナビ画面上に映し出され、進むべき方向が直感でわかるような機能だ。

AMGレザーエクスクルーシブパッケージのインテリア

じつはこの新型GLCはオフロード性能も極めて進化しているのだ。ただ、今回の試乗ではオフロードは走行しておらず、実際の感触はないものの、メディアディスプレイやフロントスクリーンでその片鱗を見ることができた。

新設された「オフロード」モードはDynamic Selectの中に設定され、モードを切り替えるとトランスミッションがオフロードモードに切り替わり、雪道、悪路走破性を高める設定になる。そして、コックピット・ディスプレイには車両の傾き、路面の勾配、標高、経度緯度、コンパス、そして車速、エンジン回転数が表示され、メディアディスプレイには周辺地形におけるGLCの姿勢やフロントホイールの操舵角、などが表示される。

GLCをアーバンライフな環境で乗るには不要な装備かもしれないが、オフロードが身近にある北米などでの需要に応える装備だ。国内でも頼もしい装備と言える環境のユーザーもいるだろう。

このように全面刷新された新型GLCは前述のディーゼルエンジン一択になっている。試乗車は「220d 4MATIC ISG搭載モデルで車両本体価格が820万円(税込)。それにAMGラインパッケージ60万円、AMGレザーエクスクルーシブパッケージ55万円、ドライバーズパッケージ49万円、パノラミックスライディングルーフ22万円、メタリックペイント8万円のオプション価格194万円がプラスされ、合計1014万円で、保証プラス、メンテナンスプラスを加えて1043万7000円となっている。

FMヨコハマPodcast

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