メルセデス・ベンツは2025年2月24日、レース部門のエンジニアと本社のエンジニアが協力して、最新のリチウム金属の負極を持つ全固体リチウムイオン・バッテリーを搭載し公道テストを開始したと発表した。
リチウム金属負極を備えた全固体電池を量産車プラットフォームへ搭載し、走行したことは電動モビリティにおける歴史的なマイルストーンとなる。
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メルセデス・ベンツグループの100%子会社で、業界をリードするF1技術を専門とするメルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレイン(HPP)と、メルセデス・ベンツ・センターオブコンピテンスフォーバッテリー・システムズは、まったく新しい革新的なバッテリー・システムを設計・開発し、公道での走行テストのフェーズまで到達した。
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この全固体電池のセルは、ファクトリアルエナジー社製で、アメリカ・マサチューセッツに本拠を置く全固体バッテリーのベンチャー企業だ。
メルセデス・ベンツは2021年に新世代のバッテリー技術を開発するために、ファクトリアル社と提携している。そして2024年夏にファクトリアル社は、全固体バッテリー用プラットフォームを搭載したリチウム金属負極を持つ全固体バッテリー・セルをメルセデス・ベンツに納入している。これがファクトリアル社のグローバルOEMへのリチウム金属負極式の全固体バッテリー最初のサンプル出荷となっている。
公道走行を行なう前段階では、さまざまなテストベンチでの集中的なテストが行なわれ、プロトタイプの全固体バッテリーは2024年末にEQSに搭載された。このEQSは全固体バッテリーを搭載するために若干の改造が行なわれている。
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メルセデス・ベンツグループの最高技術責任者のマルクス・シェーファーは、「EV用の全固体電池を開発することは、革新と持続可能性に対する我々のコミットメントを象徴するものです。そのため、この先進技術を搭載したプロトタイプ車両による、走行テストの開始を発表できることをうれしく思います」と語っている。
全固体電池は、EVにおける有望な技術であることはいうまでもない。従来の液体電解質の代わりに固体電解質を使用するため、電池の安全性が向上し、リチウム金属のような新しい負極の使用が可能になる。また、リチウム金属負極と組み合わせることで、格段に高いエネルギー密度も可能になる。
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この全固体電池の技術は、車載バッテリーの重量エネルギー密度をセルレベルで450Wh/kgまで高め、航続距離を伸ばす可能性を秘めている。重量エネルギー密度とは、単位質量当たりに電池セルに蓄えられるエネルギー量のこと。
この指標は、特にEVのように重量が重要な要素となる用途において、電池セルの効率と性能を評価する上で極めて重要であり、全固体電池はセルの安全性を向上させながら、電池の重量を削減することが可能になる。
メルセデス・ベンツのバッテリーシステム・コンピテンスセンターは、HPPのモータースポーツ専門家とともに、ファクトリア社製セルを搭載した全固体バッテリーのプロトタイプを開発。この全固体バッテリーは、革新的なフローティング・セル単体を採用しており、この構造はすでに特許を取得している。
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全固体バッテリーは充電されると固体電解質は膨張し、放電すると収縮する。つまり全固体バッテリーは体積変化し、充放電時に電池内部の材料が膨張・収縮する。そのため、固体電解質に亀裂が生じ急激に性能を低下させるとされ、この点が全固体バッテリーの大きな課題になっている。
メルセデス・ベンツの全固体バッテリーは、このような体積変化の際に、セルをサポートするため、空気圧アクチュエーターを備えており、充放電時のセル体積変化と相互作用することで、バッテリーの性能と寿命の問題を解決している。
EQSベースのテスト車両に搭載される全固体バッテリーは、標準車のEQSバッテリーと同じ重量・サイズと比較して、航続距離を最大25%伸ばすことができる。そしてバッテリー冷却を行なうことで、さらなる軽量化とエネルギー効率が達成される。そのため航続距離は1000kmを超える見込みとなっている。
今後数ヶ月間、メルセデス・ベンツは、EQSテスト車両を使用して大規模な実験室でのテストと走行テストを繰り返し、さらに検証を進めていくとしている。