メルセデス・ベンツC200試乗記 四輪操舵は好き?嫌い?(4気筒1.5Lターボ+9速AT+MHEV)

メルセデス・ベンツCクラスがフルモデルチェンジを行ない、まずはC200のセダンからデリバリーが開始されている。早速、5代目となる新型CクラスW206型のC200に試乗してみた。

新型メルセデス・ベンツCクラス。フルモデルチェンジして5代目登場

W206型は国内で2021年6月に発表し受注を開始。そしてデリバリーはセダンのC200を夏から開始し、C220dは2021年12月頃、そしてC200 4MATICは2022年第一四半期、C350eは2022年中頃、ステーションワゴンのC200、C220dについては2022年第一四半期というスケジュールになっているが、ご存知のように半導体不足を始めさまざまな要因から製造、販売が遅れ気味にはなっている。

ミニSクラス

さて、新型CクラスはEクラス、Sクラスと共通の後輪駆動用「メルセデスMRA2」プラットフォームを採用し、ボディサイズは全長4751mm(+65mm)、全幅1820mm(+10mm)、全高1438mmで、ホイールベースは2865mm。先代よりも25mm延長した大きさになっているプレミアムDセグメントサイズだ。

そして全体のデザインフォルムもSクラスに共通する短いフロントオーバーハングと長いホイールベース、そしてAピラー位置は一段と後方に移動したキャビン バックワードパッケージを採用している。まさにSクラスをそのまま小さくしたとも言えるデザインだ。

インテリアもSクラスと共通デザインになり、センタークラスターには大きなモニターが設置されている。実はこのセンターモニターは11.9インチあるが、位置が低い場所にあるためドライブ中には若干視線移動が大きく見にくかった。もっともナビであればメーターパネルで代用できるので、問題はないのだが外光の影響もあり少し気になる装備ではあった。またDセグメント初のAR(拡張現実)ナビが搭載され、ミスコースしそうな交差点などではリアルな映像が立体的に映し出されるので、わかりやすかった。

パワーユニットは全モデルが電動化されC200も48Vのマイルドハイブリッドになった。エンジン単体で204ps、300Nmを発生する新型1.5L直列4気筒ターボエンジン「M254」を採用。204ps/300Nmの出力に加え、エンジンとトランスミッションの間にモーターを配置し、このISGによって、最大で20ps、200Nmの駆動アシストが可能なのだ。

11.9インチモニターがセンターに配される
直列4気筒1.5Lターボガソリンエンジンはマイルドハイブリッドを搭載

装備ではSクラスと同等の左右ヘッドライトのデジタルライト(LED)を搭載。照明モジュールとして130万個の微小な鏡により光を屈折させることで照射方向を決定し、もちろん対向車や歩行者を検知して自動配光するアクティブヘッドライトとして機能するなど、まさにミニSクラスなのだ。

リヤ操舵システムを装備

さて、もうひとつのハイライトとして、試乗車にはリヤ操舵(リヤ アクスルステアリング)が搭載され、これまでとは異なる曲がり方をする装備があった。四輪操舵は80年代から各社が研究し実際に市販車両も投入してきているが、継続して搭載しているモデルはない。その理由として、四輪操舵に乗ると、かつてないコーナリングを体験し新しいと感じるか、あるいは違和感として捉えるか意見が分かれるところだが、多くは違和感として感じていたというのが考えられる。

ちなみに、リヤ操舵は60km/hまでの速度域は前輪と逆位相に最大2.5度切れ、60km/hを超えると同位相に最大2.5度切れる設定だ。また任意にオフすることはできない。

メルセデス・ベンツでは先に発売されているSクラスにこのリヤ アクスルステアリング(四輪操舵)が搭載されている。特にロングホイールベースのモデルでは取り回しがしやすくありがたい機能と感じているユーザーも多いだろう。一方で、ダイアゴナルロールを感じコーナリングを楽しむといったユーザーは少数派だろうし、あるいはショーファーとしての利用というユーザーが中心だ。したがってSクラスでは受け入れられている装備なのではないか。

そして今度はCクラスに搭載してきた。このあと国内投入されるC220dにはどうやら四輪操舵は搭載されていないようなので、搭載モデルは限定されるようだ。

結論から言えば、かつて四輪操舵で経験した違和感と同じ傾向にあるものの、洗練された制御によって以前よりは違和感は薄らいでいる。特に運転に慣れているユーザーなら、コーナリング時の挙動は理解していると思う。しかし四輪操舵になるとこれまでとは異なる動きになるため「違和感」となってしまうわけだ。

その理由のひとつとして、旋回半径の中心位置が車両の中心付近から大きくは外れることにある。リヤタイヤの操舵量によるが、中心位置が車両本体から外れ、はるか後方や前方へ移動してしまうため、人間の感覚にはない旋回をするためだ。

コーナリングが気持ち良いかは別にして旋回性は高い

しかしながら、電動化が進むことでリヤ操舵はかつての油圧からモーターへと変わり、よりエンジニアがイメージするコーナリングを描けるようになってきている。つまり、リヤ操舵の動き出すタイミングや切れ角などヨーモーメントの発生時期や旋回G、リヤタイヤのスリップアングルをエンジニアの意図どおりに、そして手中に収めることができるようになってきたと言える。

そのため、かつての四輪操舵よりも洗練された印象となり、ハンドルを切ればクルマは曲がると考える一般ユーザーであれば、「気持ちよく曲がる」と評価するだろうし、不安なくカーブが曲がれるなどの評価になると思う。

結局四輪操舵を受け入れられないのは、コーナリングに対する価値感が固定観念化しているステレオタイプほど厳しい評価をすると思う。荷重コントロールし旋回Gを手中に収めることができるドライバーには違和感でしかないわけだ。

Cクラスのユーザーがどれほどコーナリングに対する価値観を持っているのかは分からないが、奥様の脚に使われていたり、スポーツ走行とは無縁のドライバー達のほうが圧倒的に多いと想像する。そうなれば、よく曲がるクルマとして高い評価を得られるのではないかと思う。

特に駐車場では小回りが効くので車庫入れが楽だし、狭いスーパーの駐車場でも取り回しは楽だ。ただ面白いことにクルマに詳しくない人ほど、小回りが効くと高級車としてのありがたみが薄らいでしまうということも言う。

このあたりは市場でどのように評価されるのか興味深い。<高橋アキラ/Akira Takahashi>

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