メルセデスAMG GLC 43 4MATIC クーペ試乗記

マニアック評価vol528
2017年2月にデビューしたメルセデス・ベンツのミドルサイズSUV「GLCクーペ」。そのAMGモデルに試乗することができた。Cクラスとプラットフォームを共有するGLCクーペは、目を惹くデザインと、クーペライクなスタイルでありながら、実用性もある新しいSUVだ。さっそくその詳細をお伝えしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

メルセデスAMG GLC 43 4MATIC クーペ
メルセデスAMG GLC 43 4MATIC クーペ

このところのメルセデスの新型車ラッシュには目を見張るものがあるが、SUVのラインアップだけでも7モデルになった。GLA、GLE、GLEクーペ、GLS、Gクラス、そして新たに加わったGLC、GLCクーペというラインアップだ。

ミドルサイズSUVだが、クーペライクなルーフラインが特徴
ミドルサイズSUVだが、クーペライクなルーフラインが特徴

ボディサイズは全長4735mm、全幅1930mm、全高1590mm、ホイールベース2875mmで、全幅がワイドなのが特徴。試乗したAMGモデルはV6ツインターボのガソリンエンジンに、9G-Tronic(9速AT)を搭載したモデル。出力は367ps/270kW、520Nmと強烈だ。価格は910万円(税込み)。

リヤはハッチゲートになっている5ドアタイプ
リヤはハッチゲートになっている5ドアタイプ

■モデルラインアップ

ここでGLCクーペのグレードを見てみると、SUVモデルらしく、4WDである4MATICをメインにグレード展開している。エントリーモデルとなるのは、ここはFFで、2.0Lガソリンターボを搭載する200と200スポーツ。それぞれ627万円、667万円となっている。ガソリンの出力違い、プラスエアサスペンションを持つ250があるが、こちらは4MATICの本革仕様になり799万円だ。

ディーゼルでは、220dと220dスポーツがあるがどちらも4MATIC。価格は713万円と775万円。さらにプラグインハイブリッドモデルもラインアップし、350e 4MATICで903万円となっている。それとトップモデルになるAMGがあるというラインアップだ。今回試乗したモデルで、正式名は「メルセデスAMG GLC 43 4MATIC クーペ」。

キャディバック3本が収納でき、リヤシートバックを倒すと1400Lの容量になる
キャディバック3本が収納でき、リヤシートバックを倒すと1400Lの容量になる

GLCクーペはプレミアムミドルサイズSUVだから、ラグジュアリーであり、ゴージャスでもある。さらにSUVの要素を兼ね備えたモデルという位置づけだ。そしてGLCよりもスポーティな位置づけであることも特徴のひとつだ。それはデザイン的にもクーペライクなシルエットに、大型のフロントエアインテーク、すべてのメルセデス・ベンツのクーペモデルに採用されているリヤのスポイラーリップも標準装着されていることからもわかる。

シャシーはフロントが4リンク式でリヤはマルチリンク。前述したエア・ボディコントロール・サスペンションを持つ250やダンパー内のオイル流量を変化させて減衰をコントロールするアジリティコントロールサスペンションを装備する220dなど、モデルによってサスペンションが異なっている。

インテリア全体は高級な印象があり、高級車を手にした満足感が得られる
インテリア全体は高級な印象があり、高級車を手にした満足感が得られる

そして、クルマのキャラクターを変えるとでも表現できるダイナミックセレクトも標準装備され、エンジン、トランスミッション、ステアリングの制御を変更することが可能で5つのモードが選択できる。エコ、コンフォート、スポーツ、スポーツ+、インディビデュアルだ。

安全装備ではカメラとレーダーによるレーダーセーフティパッケージが標準装備され、先行車両、横断車両、後方車両、対向車、歩行者を検知し、アクセル、ブレーキ、ステアリングを自動アシストする。また、LEDインテリジェントライトアシストも全車標準装備となっていることも嬉しい材料だ。さらに、縦列駐車、車庫入れをアシストするアクティブパーキングアシストも標準装備で、満足度の高い装備と言える。

■AMGモデル

3.0LのV6ガソリンツインターボエンジンは、アルミブロック、アルミヘッドのエンジンに200barのピエゾインジェクターによるスプレーガイド式燃料噴射をするエンジンで、367ps/520Nmの出力を発揮する。0-100km/hは4.9秒という俊足だ。

3.0L V6のツインターボエンジンを搭載。AMGのロゴも大きく入る
3.0L V6のツインターボエンジンを搭載。AMGのロゴも大きく入る

4WDは31:69という前後のトルク配分は固定式で、オンデマンド式4WDが増える中、無骨な印象となる機械式を伝統的に採用している。また、サスペンションではAMGスポーツサスペンションを装備し、エア・ボディコントロールのエアサスペンションを採用している。AMGダイナミックセレクトスイッチはコンフォート、スポーツ、スポーツ+の3つから選択できるようになっている。

ブレーキはフロントに360mmのドリルドベンチレーテッドディスク、リヤに320mmのベンチレーテッドディスクを装備し、高出力に見合う制動力も確保している。

■試乗インプレッション

500km以上のロングドライブをしてきた
500km以上のロングドライブをしてきた

エクステリアのスタイリッシュなデザインは、AMGということもあり派手な印象もありつつ、高級感もある。フロントグリルのスリーポインテッドスターの存在感も目立ち、また大型のエアダクトなどもカッコよさを引き立てる。

一枚板で仕上がっているセンターコンソール。木目とレザー、ピアノブラックなどで高級感たっぷり
一枚板で仕上がっているセンターコンソール。木目とレザー、ピアノブラックなどで高級感たっぷり

インテリアでは、とくにセンターコンソールが一枚仕上げでデザインされ、なだらかな曲面と木目とが豪華さを醸し出している。ステアリングはフラットボトムタイプで、スポーティだ。また、スイッチ類やパドルシフト、ウインカーなどの操作をしたときの質感も良く、高級車に乗っているという気分を満足させてくれる。

通常はコンフォートモードで走行する。特にエンジン音が大きいことはなく、100km/h程度の巡航時の風切り音も小さいが、もう少し高級車らしい静粛さが欲しい。この時エンジンスピードは1600rpmで、ガソリン車とは思えないほど、低回転に抑えている。9速という多段化と3.0Lという排気量、520Nmという大トルクがあるので、ディーゼルエンジンなみに低回転に抑えることができている。

スタンダードな2眼式メーター。中央はデジタルで文字情報を中心に表示される
スタンダードな2眼式メーター。中央はデジタルで文字情報を中心に表示される

高速巡航時にエコモードを選択し、アクセルを抜くとクラッチが切り離されセーリング走行をする。このときエンジンはアイドル状態となり、滑空する。これはエコモードを選択していれば、50km/h付近でもセーリング走行できるので、省燃費には大いに役立つ。

高度運転支援システムのディストロニックプラスにあるレーンキープの自動制御が穏やかでいい。多くの場合、ステア補正で車線内キープをしているが、GLCクーペはステア補正とブレーキを使った補正の両方があるため、自然な印象を受ける。つまりESCの機能を利用し、1輪にブレーキをかけて穏やかに方向を修正するためだ。その際、ドライバーには軽くハンドルにコツコツという反応がある程度だ。無駄に修正していない印象で、人にやさしいとも感じる。また車線を逸脱しそうになった場合には、ステア補正が明確に分かり、機械的に修正されていると理解でき、修正の使い分けをしているようだ。

メルセデスAMG GLC 43 4MATIC クーペ

ちなみに、高速中心の走行で、コンフォートモードで走行したときの燃費だが、170km走行して11.2km/Lという燃費だった。AMGのパフォーマンスを考えれば立派な数字だと思う。

一般道、ワインディングで試乗した印象では、まずステアリングの微小舵でクイックに動くという印象。これはコンフォートモードでも感じるもので、少しの操舵でのノーズが動き、BMWがよく俊敏だと言われるがそれ以上に動くので、敏感という表現かもしれない。直進状態からのわずかな動きが少し気になった。

乗り心地ではAMGとはいえ、もう少しマイルドにしたい。やはり、メルセデス・ベンツでもあるわけだし。装着するタイヤはコンチネンタルのコンチスポーツコンタクト5Pでもちろん純正指定の「MO」ロゴは刻印されている。タイヤサイズはフロントが255/40ZR21で、リヤが285/35ZR21とばかでかいし、極太だ。

乗り心地に関してはこのタイヤサイズの影響も大きいと思う。AMGはエアサスペンションを装備しているので、乗り心地も変更できるが、ロールはソフトにするものの、総じてハードな印象だった。それは、ハーシュネスが気になるからだ。大きな入力があると車体がぶれるくらいの振動で、また、道の悪い一般道ではゴトゴトとした乗り心地がずっと続くのも気になった。さらに、バタつく音もあり、ちょっとミスマッチなタイヤサイズではないかと思う。

アウトバーンを200km/h以上の速度で巡航するような使い方であれば、こうしたしっかりとした大径タイヤは安心感に変わるのだが、国内ではオーバークオリティという印象になってしまった。しかしながらスポーツ+を選択し、ワインディングで攻めた走りをすると、ブリッピングと官能的なサウンドが聞こえ、この乗り心地が不思議と気にならなくなる。個人的には高級車であるメルセデス・ベンツだということを第一義的に考え、AMGであっても、もう少ししなやかな乗り心地がいいと思う。

■グレードと価格

メルセデスAMG GLC 43 4MATIC クーペ 価格表

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