メルセデスAMG GT解説 位置づけを新たにした究極のハイパフォーマンスモデル

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メルセデスAMG GT。ハイパフォーマンスモデルの詳細を解説する

メルセデス・ベンツは2つの究極というキーワードの下、究極のエクスクルーシブ性を持つマイバッハと究極のハイパフォーマンスを表現するAMGという、両極に位置するブランド展開を新たにした。そのAMGのスポーツカーAMG GTが国内デビューをし、どんなモデルか? また、メルセデスAMGのブランド力は魅力を増したのか? プロダクトの詳細を見てみよう。

メルセデスAMG GT詳細解説003メルセデスAMG GTはSLS AMGに次ぐ2番目のスポーツカーだが、後継モデルという位置づけではない。純粋に究極のハイパフォーマンスを追及するスポーツカーというポジションだ。もちろんAMGの特徴でもある一人のエンジニアが1基のエンジンを組み立て、完成エンジンにはエンジニアのネームプレートが刻まれるという「one man one engine」という哲学は継承されている。

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ボディはドイツ・ジンデルフィンゲンにあるメルセデス・ベンツの組み立て工場にGTのプロダクションラインがある。工場では非常に高度で洗練された職人たちがAMGの専用ボディを作っている。おそらく従来のAMGの一部はオーストリアのマグナシュタイヤー社での製造だったものから、すべてのAMGモデルを完全自社開発・製造へとシフトしたということだろう。

この新型AMG GTには4.0LのV型8気筒直噴ツインターボエンジンを搭載し、7速のDCT、AMGスピードシフトを組み合わせている。モデルは2モデルあり、462ps/600Nmの「GT」と510ps/650Nmの「GT S」がある。いずれも2シーターの2ドアハッチバックでガルウイングにはなっていない通常のドア開閉式だ。全長4546(4550)mm全幅1939(1940)mm×全高1287(1290)mm、ホイールベース2630mmというサイズだ。*( )内はGT S

◆エンジン
このエンジンの型式はM178型で、ドライサンプ形式としている。SLS AMGに搭載していた6.2LのV8型はM156型をベースにドライサンプ化したM159型であり、これを単にダウンサイジングしたものではなく、新たに専用に新開発されたエンジンだ。M178型は砂型鋳造のアルミ製で、クローズドデッキ/ライナーレスタイプのブロックとし、軽量化と高剛性化をはかっている。メルセデスAMG GT詳細解説008

ピストンはアルミ鍛造で重量209kgと軽量化している。またシリンダー壁にはスチールカーボン材を溶射コーティングするNANOSLIDEという摩擦低減加工をし、フリクションを低減しているという。ドライサンプ化することでオイルパンを扁平化し、エンジン搭載位置を通常のウエットサンプ式より55mm低くすることができている。またコーナリング時の強い横Gに対しても潤滑力を確保できるメリットもある。2基のタービンはVバンクの内側に設置する、つまり排気はVバンク内側、吸気はVバンク外側というレイアウトで、最近は主流となりつつあるレイアウトだ。

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エンジンマウントとトランスミッションにはそれぞれ磁性体入りの液体可変マウントを採用し、マウントの硬さを自動で可変している。通常走行時はノイズと振動を吸収し、ダイナミックな走行時にはマウントを硬くしロールモーションを減少させ、クイックな、そしてダイレクトな反応となるように変化する。(GT Sにオプション設定)

トランスミッションはDCTタイプでトランスアクスルタイプのレイアウトを持っており、エンジンとトランスミッションはトルクチューブで結合されている。トランスミッションは7速でComfort、Sport、Sports+の3つのシフトモードに個別にパラメーターが設定できるIndividualを設定している。GT Sにはさらにサーキット走行用にRaceモードを搭載している。

ドライブシャフトはカーボン製を採用し、前後の重量配分は47:53と理想的な比率としている。GTのデファレンシャルに機械式のLSDを装備。GT Sには電子制御されるAMG LSDを装備する。

◆シャシー
サスペンションはダブル・ウイッシュボーン形式で、GT Sのダンパーには電子制御される「AMG RIDE CONTROLスポーツサスペンション」を装備する。Comfort、Sport、Sport+のモードをチョイスすることが可能で、減衰特性を変化させることができる。

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また、コンソールのシフトレーバー横にあるダイヤルを回せば、クルージングからサーキットでの走りまでセッティングを変更できる「AMGダイナミックセレクト」を装備する。このAMGダイナミックセレクトとは、ギヤシフトプログラム、エンジン特性、サスペンション、ステアリング特性、3ステージESP、セーリング機能とECOスタートストップ機能、リトラクタブル・リヤスポイラー、エキゾーストサウンドなど、これらの作動プログラムが連動して変化する。メルセデスAMG GT詳細解説009

GTには前後に360mmドリルドベンチレーテッド・コンポジットディスクを装備。GT Sにはフロントにより大径の390mmディスクを、さらにオプション設定される「AMGカーボンセラミックブレーキ」は1700°Cの高温で真空強化処理され、硬度が高められており優れた耐フェード性とコントロール性を持っているという。

「AMGパフォーマンスエクゾーストシステム」はマフラー内のエグゾーストフラップにより排気音を切り替えるシステムだ。トランスミッションがCまたはSの時はフラップは閉じられ、住宅街でも静かに、そして高速クルージングを最適なサウンドを響かせる設定になっている。S+、Raceモードではエクゾーストフラップが開かれ、加速時、シフトダウンなどで自動のブリッピングを行ない、モータースポーツを彷彿とさせるサウンドを奏でる設定になっている。

◆デザイン
エクステリアデザインはボンネットセンター付近を盛り上がらせ、力強さを感じさせるロングノーズ、ショートデッキ、大径ホイールに幅広のテールエンドとスポーツカーの基本的なカッコよさの要素がすべて取り入れられている。人間で言えば八頭身美人のようなスタイルで、極めて力強いルックスをしている。メルセデスAMG GT詳細解説003 メルセデスAMG GT詳細解説004

サイドはドーム形に弧を描くルーフラインが目を引き、サイドのエアアウトレットにはフィンを2本備えたメルセデスの伝統的なスタイリングを受け継いでいる。フロントマスクには2本の水平のバーに支えられるように、スリーポインテッドスターが中央に配された特徴的な顔を持っている。LEDヘッドランプはドライビングライトやウインカーを眉状にレイアウトし、夜でもその存在感を印象付ける。そしてリヤビューでは約120km/hを超えると自動的にリフトアップし、高速走行時のスタビリティを高めるリトラクタブル・リヤスポイラーを採用している。

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インテリアでは、ドアを開けた瞬間目を引く、奥行きの深い傾斜したダッシュボードとV8型エンジンをモチーフにしたというセンターコンソール、航空機のコックピットのような雰囲気を醸し出している。

ボディはアルミスペースフレーム構造としていることから、量産ラインではもちろん製造できない。AMG専用に職人の手による製造がおこなわれているというわけだ。

こうしてAMGは新たなブランド展開となっただが、AMG GTはAMGとしてのブランド価値を守り、そして新たな魅力を持つスポーツモデルが今後、続々とデビューするのだろう。

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