2018年末に発売された新型メルセデス・ベンツAクラスに、2.0Lディーゼルターボエンジンを搭載したA 200 dが追加された。ディーゼルで車両本体価格が399万円という魅力いっぱいの価格。早速試乗してきたので、お伝えしよう。
ベンツが400万円以下
試乗エリアは東京都内の一般道と高速道路で、日常使いの範囲での試乗をした。一般的に、ディーゼルに対する印象はどのように変化しているのだろうか。個人的には環境に対するネガな印象はなく、低速からの力強さによるドライバビリティの良さ、そして軽油を燃料とするため、ランニングコストが安いというプラス要件が多い印象だ。
また、エンジンの音や加速感、振動といったことを気にする人も多いと思う。この新型Aクラスに採用されたOM654qはCクラスやEクラスにも採用されているOM654型と共通で、ある意味実績のあるディーゼルエンジンということができる。実際は出力を絞り、横置きに搭載しているので、末尾に「q」の文字が入り、別型式にはなっているが。
OM654q型の出力は150ps(110kW)/320Nmで、十分な力強さはある。CやE、CLSに搭載されるディーゼルは400Nmあるが、車重の違いなどを考慮すれば同等の力強さと言ってよいだろう。これに8速DCTのトランスミッションが組み合わされる。先行発売されるA180(ガソリン)には7速DCTが搭載されており、対応トルクの違いから別タイプのDCTトランスミッションが組み合わされている。
もちろん、DCTとは言えATと同じ操作で運転でき変速の滑らかさもATとの違いはわからない。またエンジンのレスポンスに不満はなくトルク感も十分ある。100km/h走行時のエンジン回転は1450rpmで、すこぶる滑らかに静かに走行する。ギヤも8速に入っている。
市街地走行では周りのクルマよりもやや速い加速をさせて走行してみる。回転では2200rpm付近でシフトアップさせていると、エンジンのノイズも気にならず、静かな室内のまま走り、高級車感を味わうことはできる。しかし、アイドリング時に微振動が出ているのが気になった。これはステアリングやシートにも伝わり、個体の問題かもしれないが高級車には似合わない微振動だ。もっともアイドリングストップ機構が搭載されているので、ほとんどそうした場面には遭遇しないのだが、振動をチェックするため、意図的にアイドルストップのスイッチを切った結果わかったものだった。
乗り心地では225/45-18サイズのタイヤを装着していたが、瞬間的なデコボコに対しては硬い印象がある。首都高速の道路の継ぎ目や段差があるマンホールなどを通過する際にそうした硬さを感じる。
しかし、綺麗な路面状況においては、微低速域のフリクションはなくスムーズにサスペンションがストロークし、乗り心地もいい。こうした強い入力、ハーシュネスは当初ランフラットタイヤを想像したが、ノーマルタイプのタイヤなので、やはりエアボリュームやタイヤのサイドウォールのしなやかさが影響するので、タイヤの問題なのかもしれない。
近年ユーザーの「見栄え」を重視する傾向が強く、そのため、17インチよりは18インチというようにエアボリュームが小さく、その分乗り心地に悪影響が出るものの、耐えられないレベルではないため、見栄えを選択した結果なのだろう。
ディーゼル推し
タカハシの私物はディーゼルであり、ハイオクから軽油に変わったことと、燃費の良さもあり、年間での燃料代は半分どころか1/3まで安くなっている。(年間走行距離約3万km)また、40km /h、60km/h、あるいは80km/hからの加速の力強さはガソリン車の大排気量車に匹敵すると感じるパワーがあり、乗りやすい。
そうしたプラスの印象が多いのだが、環境性能においてもこのAクラスは先端の対応をしている。環境性能の規制値である現在のユーロ6TEMPは2020年にユーロ6NORMへ、より厳しい数値に変わるが、RDE(real driving emission)では台上試験の2.1倍まで許容されていたものが1.5倍までに厳しくなる。しかしAクラスのディーゼルはその規制をクリアしているので高環境対応車と言えるだろう。
女性ユーザー人気
メルセデス・ベンツのもっともコンパクトなサイズになる「A」クラスはCセグメントサイズに分類され、アウディならA3、BMWなら1シリーズ、他にはフォルクスワーゲンゴルフといったあたりのサイズと同等だ。
しかし、見た目からはそれらライバルより迫力や存在感は強く、高級感も人によっては感じるのではないだろうか。新開発されたAクラスはデザインが一新され、Sensual Purity「官能的純粋」という言葉をデザインの基本とした、新しいデザイン言語でデザインされ、その言語によるエクステリア、インテリアが大きな影響を及ぼしているからだろう。
ワンランク上のクルマになった印象の新型Aクラスは328万円〜という戦略的価格も魅力。また、「ハイ メルセデス」で反応するAI搭載ユーザーエクスペリエンス「MBUX」も話題になった。
そしてA180とA180styleの受注状況では契約書名義ベースで25%が女性だという。主婦が財布を握ることもあるだろう、だが、「仕事ができる女性」に受けているのではないだろうか。エクステリアの高級感と存在感、インテリアの豪華さと先進さ、そうしたメルセデスブランドが心をざわつかせているのは間違いない。また、50%のユーザーが他ブランドからの乗り換えというデータもあるという。こうしたことからもメルセデス・ベンツのエントリーモデルとしてヒット間違いなしと言える。
Aクラスに期待するものは、さらに上級のCクラスやさらに上のモデルがもつ重厚感やブランド高級感といった「らしさ」よりも軽快で、若々しさを感じさせるモデルであり、新しい価値観を提供しているといったあたりが期待に応えているように感じるモデルだった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
【価格(税込)】
- A 220 d:399万円
試乗車には、オプションのレーダセーフティパッケージ24万5000円、ナビゲーションパッケージ18万4000円、AMGライン25万5000円、アクセサリー装備など合計74万2320円の追加装備があるため、車両合計価格473万2320円
【諸元】
- ボディサイズ:全長4436mm×全幅1796mm×全高1440mm ホイールベース2729mm
- エンジン:OM654q 2.0Lディーゼルターボ
- 最大出力:150ps(110kW)
- 最大トルク:320Nm
- 認証前につき燃費データなし