ボッシュとメルセデス・ベンツは、都市部での自動運転車両を運用するという共同プロジェクトを2019年12月9日、アプリベースでの配車サービス実証実験を行なうという新たなステージに入った。
自動運転車によるモビリティサービス
いよいよカリフォルニア州サンノゼのシリコンバレーで、メルセデス・ベンツSクラスの自動運転車両を用いた、アプリベースの配車サービス実証実験が開始された。この自動運転車は、安全確認のためのドライバー監視のもとで、サンノゼ西部と都心部間のサンカルロス通りとスティーブンス・クリーク通りを定期往復する。
このサービスは、開始当初、特定のユーザーのみを対象として行なわれる。ユーザーは、ダイムラー・モビリティAGが開発したアプリを使用し、決められた乗車地点から目的地まで、Sクラスの自動運転車両による走行を予約することができるようになっている。
ボッシュとメルセデス・ベンツはこの実証実験により、高度・完全自動運転(レベル4/5)システムのさらなる開発に向け、多くの経験、知見を得ることを目指している。また、公共交通機関やカーシェアリングを含む都市部での複合的なモビリティシステムの中で、自動運転車両がどのように運用できるかについても、さらなる知見が得られるはずだ。
都市部の交通課題解決のために
サンノゼは2017年中盤に、道路交通において増大する多くの課題分析のために、アメリカで初めて自動運転の実証試験に民間企業を誘致した。特に混雑した市街地走行では、360度のサラウンドセンシングにより、より安全性を向上させることができ、またスムーズな走行によって、交通の流れを改善できるかどうかを実証することが目的だ。
「市として、自動運転車両がどのように安全性の向上と渋滞の緩和に役立つのか、また交通手段をさらに利用しやすく、持続可能で、包括的なものにする上で役立つのかという点について、より多くのことを知りたいと考えています。メルセデス・ベンツとボッシュのプロジェクトは、サンノゼの掲げるスマートシティの目標と結び付きます。さらに、新しいテクノロジーに対処するためのガイドラインの策定や、将来の交通システムへの準備という点でも、私たちにとって有益なものとなるでしょう」と、サンノゼ市政革新・デジタル戦略ディレクターのドーラン・ベッケル氏は語っている。
またロバート・ボッシュGmbHの都市部自動運転の開発を率いるミカエル・ファーステン氏は、「自動運転が日常的に使用されるためには、そのテクノロジーが高い信頼性と安全性を持って機能する必要があります。そのためには、サンノゼでの実証実験のようなテストが必要となります。またその性能を証明するためには、自動運転車両だけではなく、私たちシステム開発者もまた、自動運転配車サービスが都市交通というパズルに、1つのピースとしてフィットすることを証明する必要があります。私たちはこの両方をサンノゼでテストすることができます」と語っている。
今回の実証実験を行なうにあたり、8月から11月までプロジェクトの代表者は、サンノゼ市の職員とともに、複数の地域団体とこのプロジェクトについて議論を行なっている。さらに、シャトルが通行する通り沿いの近隣住民や企業グループとの7回にわたる集会において、プロジェクトチームは目標について議論し、車両技術を開示し、プロジェクトで実装される二重の安全冗長性について説明している。そして将来の使用ケースについて住民からの提案も受け入れている。
アメリカと欧州でパートナーを組むボッシュとメルセデス・ベンツ
これまで約2年半にわたり、ボッシュとメルセデス・ベンツは都市部での自動運転のためのソリューションに共同で取り組んできている。両社の共通の目的は、高度・完全自動運転(レベル4/5)システムによる、車両管理用ソフトウェアを含む無人の完全自動運転車両の実現だ。両者は特定の車両だけではなく、様々な車種やモデルに組み込むことができる量産向けシステムの開発を目標としている。
両社は、車両の動きを制御するソフトウェアの開発段階で、人工知能や試験走行距離の記録のみに頼らず、シミュレーションや特別に設計されたテストコースも使用することで、道路交通では稀にしか起こらないような運転状況への対応にも取り組んでいる。このテストコースは、ドイツのインメンディンゲン試験・技術センターにあり、自動運転向け専用に設計された10万平方メートルのコースだ。
ここでは、複雑な交通状況もきわめて正確に、希望する頻度で再現することができる。このような手法を用いる理由は、ボッシュとメルセデス・ベンツが完璧であることと、安全性を最優先しているからに他ならない。また開発チームは米国の道路条件や天候条件だけを対象としているわけではなく、サンノゼとサンフランシスコの間にあるシリコンバレーのサニーベールに拠点を置く一方で、もう1つのチームは、シュトゥットガルトで開発作業を行なっている。
ボッシュとメルセデス・ベンツの従業員は、机を並べて座り共同で仕事をしている。これにより意思決定が迅速になり、異なる専門間でのやり取りが迅速化することができている。もちろんそれぞれの従業員はいつでも親会社で働く同僚の知識とノウハウを活用することができる。この開発チームは、ボッシュが持つセンサー、コントロールユニット、ステアリング、ブレーキコントロールシステムなど幅広いシステム全体にわたるノウハウと、メルセデス・ベンツの長年の経験によりまとめ上げられているのだ。
プロジェクト内での役割分担は、メルセデス・ベンツは共同開発された自動運転システムを車両に装備できる状態にすること、および必要な試験車両、テスト用の設備、試験用の車両群を提供する。また、ボッシュは、都市部における自動運転のためのコンポーネントの開発・製造を担当している。
カーシェアリング・サービス実現に向かって
自動運転配車サービスの実証実験のために、ボッシュとメルセデス・ベンツは、ダイムラー・モビリティAG社をパートナーに加えている。
同社は、実証実験段階において欠かせないフリート・プラットフォームの開発とテストを担当する。このプラットフォームとは、自動運転車両と従来の車両の両方を、業務と保守も含めて管理するためのものだ。このプラットフォームが実現することで、配車サービスを提供しようとするパートナー企業・団体は、メルセデス・ベンツの自動運転車両のカーシェアリングが可能になるのだ。
すでに2019年秋から、サンフランシスコの湾岸地帯で、従来型メルセデス・ベンツ車両のためのアプリベースのモビリティサービスが稼働開始しており、ドイツの首都ベルリンでも同様にサービスが利用可能になっている。