プレミアムモデルで2シーター/マニュアルトランスミッションという、多くの人が受け入れにくそうなメルセデス・ベンツのSLK200/MT。試乗を終えてみれば運転の楽しさを満足させてくれる一台であった。
Cクラスのプラットフォームと共通のSLK200は2シーターのロードスターモデルで、もちろん電動で開閉するオープントップを持つモデル。したがってボディも小ぶりで扱いやすいサイズと感じる人が多いだろう。ディメンションは全長4145mm×全幅1845mm×全高1305mm、ホイールベース2430mmだ。
ズバリ、ターゲット層はある程度の富裕層でありつつ、クルマ好き、運転好きであり、若かりし頃には多少のやんちゃの経験もある40代以上の男性、そして30代以上のアクティブな女性といった人ではないだろうか。
クルマの運転の楽しみを知る人、運転好きには、マニュアルミッションは何も抵抗はない。むしろ積極的にMTをチョイスしたいと考えていると思う。が、しかし、ATモデルばかりが市場には溢れ、なかなかMTを手にすることは少ない。
最近ではトヨタ/スバルの86/BRZというMTモデルのスポーツカーが話題となっているが、前述の富裕層、年齢層、そして見栄えという点から食指が動くモデルとは言い難い。そんな人たちにジャストフィットと言えるのがこのSLK200だ。
なんと言ってもメルセデス・ベンツのブランド品であり、2シーターのロードスターというディテールは申し分ない。そしてエンジンは1.8L ターボという先端の、環境を配慮したパワーユニットを搭載している点もポイントが高い。さらに価格が493万円というのも魅力たっぷりだ。一方、ラインアップとしてはATモデルのSLK200トレンドやV6型3.5L搭載のSLK350 、そしてAMGモデルなど全6モデルをラインアップしている。
SLモデルのアイデンティティとも言えるロングノーズはとてもスタイリッシュであり、SLK200にもそのコンセプトは取り込まれている。フロントグリルのスリーポインテッドスターも鎮座し、前をゆくクルマのルームミラーにこの顔が映れば、コンパクトなSLKとはいえ素直に道を譲るだろう。
インテリアの上質感も大人を満足させる見栄えがある。試乗車はSLK200/MTにオプションのAMGパッケージを装備しているため、なおさら高級感が上積みされた印象。レザーシートの上質感だけでなくホールド性もしっかりあり、スポーツドライビングへと誘う。シートの調整は手動式で、軽量化とコストダウンがされているが歓迎できるスタンスだ。
メーターは見やすい2眼式で、2眼メーターのセンター部は液晶表示され、トリップ、外気温などのインフォメーションが示される。慣れ親しんだレイアウトにアナログの速度計、タコメーターというコンサバなところもオジサンには大歓迎だ。特にステアリングはお気に入りで、太さやレザーの質感が好みのタイプであり、ぜひ、実際に触れてみて欲しい。
エンジンフィールは、少しザラつきのあるフィールで、ミッションのシャカっとしたシフトフィールにマッチする。しっとりとした滑らかなエンジンがプレミアムクラスには要求されるが、MTとの組み合わせを考えると、ある程度エンジンの存在感を味わえなければ逆に楽しさはスポイルされる。そのあたりの操作フィールとしてはベストマッチではないだろうか。また、6300rpm付近でレッドゾーンになるエンジンには「もう少し高回転まで回って欲しい」という意見もあろうが、SLK200の乗りこなし方、味わい方からすれば、ちょうどよい落とし所と思う。
ファーストインプレッションは3.5Lクラスの自然吸気エンジンではないか?と思わせるトルク感とナチュラルな加速フィールのエンジンだった。とても1.8Lとは思えず、また、過給器による段付きの加速はしない。185ps/5250pm、270Nm/1800-4600rpmというスペックが示すように、低速域で最大トルクを発揮するためゴーストップの多い市街地でも扱いやすい。
クラッチペダルの操作は程よい重さで、軽めの印象。半クラッチの位置も分かりやすい。右ハンドル仕様であるため、ペダル配置は気になることろだが、アクセルペダルがホイールアーチによりオフセットされてしまっている印象はない。着座位置に対して正対できるペダル配置とされ、違和感は全くない。
オープントップにするにはコンソールにある操作レバーで行なうが、50km/h以下であれば走行中でも操作が可能だ。ヘッドレスト後部には風の巻き込みを防止するためのフードもあり、サイドウイドウを上げた状態で使用すると、ほとんど風を巻きこまず、そよ風程度の風が頭部をなでていく。
走行フィールはメルセデスらしい直進性の高さとラグジュアリーな乗り心地があり、グランドツーリングカーという印象。それでいて、ワインディングを気持ちよく流して走る爽快感も堪能できる。ルーフを閉じれば、静粛性はプレミアムモデルに相応しい静けさを取り戻し、上質な移動空間へと変化する。
ハンドリングは今さら言うまでもなく、ドライバーの期待値通りの反応ができ、穏やかな操作にも、静かに正確な反応を示すメルセデスらしいハンドリングである。したがって、余裕が生まれ安心できる運転が可能と言えよう。そして、高揚した気持ちに素直に応えるように、いや、子供じみた感情をも満足させてくれる、そんな表現ができるクルマの試乗だった。