第41回・ニュルブルクリンク24時間レースは5月19日、午後5時にスタートが切られた。2013年、今年のニュルブルクリンクは天候に恵まれず、夜11時から翌朝の8時半まで9時間半もの長時間、降雨によりレースが中断されるという異例の展開となった。いつものニュルブルクリンクでは雨でも霧でもレース中断は最小限とされるが、今回は強い雨のためコース低地の、あちこちに深い水たまりができたため、危険と判断されたのだ。
今回は、総合優勝狙うSP9(GT3)クラスに、アウディR8 GT3 、メルセデスSLS GT3、BMW Z4・GT3、ポルシェ911 GT3、アストンマーティンGT3などが集合し、これらのマシンはいずれもカスタマーチームとされ、ワークスチームは身を引いた形だ。だが、実質はワークスのサテライトチームばかりで、性能さも少ないためレースの展開はまったく予想できない。このSP9クラスには唯一の日本車として日産GT-R GT3がドイツチームから出場し、日本人はゲーム、グランツーリウスモの山内氏がステアリングを握る。日産GT-Rはトップ40の予選でも26番手に入っている。
日本勢は、GAZOOレーシングが、レクサスLFA/1台、レクサスIS F/1台、86/2台という体制で、モリゾウこと豊田社長もステアリングを握る。例によって、ドライバーはGAZOO契約のドライバー、トヨタのテストドライバーの混成チームだ。レクサスLFAは予選総合で30番手となっている。また予選で86の136号車はクラッシュし、決勝への進出はならなかった。
スバルSTIは、さらにシャシーを改良した2013年仕様のWRX・STIも持ち込み、昨年交通事故で亡くなったマルセル・エンゲルス選手の代わりはマルセル・ラッセー選手を起用。しかし、今年のSP3TクラスはアウディのサテライトチームのTT RS2.0が出場し、スバルの前に立ちはだかる。ボディこそアウディTTだがGT3並のスペシャルマシンなのだ。その結果、予選では9分7秒9とSP8クラス並のタイムでトップに立った。スバルは9分13秒083でクラス2番手だ。
日本車ではトヨタ86がTMGカップカー仕様、市販車クラスでアマチュアチームが多数出場しているのが今年のトピックだ。またプジョーもワークスマシンの208 GTiを3台体制でSP2Tクラスに送り込み、クラスを席巻することを狙っている。
異色の参加車は、アストンマーティンの水素/ガソリン・バイフューエルを採用したラピードSだ。アストンマーティン・テストセンターからの参戦で、日本人の桂選手もステアリングを握った。このマシンはE1-XP2(実験車)クラスで、予選は9分48秒636。総合83番手だ。
悪天候が予想されたが20万人以上の観客の見守る中、5月19日17時に決勝レースはスタートした。レース序盤は予選1位のフェニックス・レーシングの4号車アウディR8がリードしたが、やがて007号車アストンマーチンV12バンテージGT3がトップに立つ。スタートから4時間が経過した頃から小雨が降り始め、次第に強い雨に変わっていった。コース上には水溜まりが多くなり、視界不良であることから夜の11時過ぎにレースの中断が発表された。
長い中断の末、翌朝8時にレースは再開。小雨が降り続く天候だったが、このコンディションではダンロップタイヤが威力を見せ、ダンロップ装着車のGT3のペースが上がり、正午頃には、ついにメルセデスSLSの9号車トップに躍り出た。
マンタイ・レーシングのポルシェ、アウディR8などミシュラン勢のペースが上がらない中で、唯一ミシュランを装着するBMW Z4 GT3・25号車だけは驚くべき走りで順位をアップし、レース終盤にトップ3を独占していたメルセデスSLS勢の中に割って入り、最終的に2位でゴール。メルセデスの表彰台独占を阻止した。
レースの総合優勝は9号車のメルセデスSLS、3番手もメルセデスSLSが入った。メルセデスがこのニュルブルクリンク24時間レースで優勝したのはこれが初めてで、メルセデスにとっては歴史に残るレースとなった。
スバルSTIは、レースの間ずっとアウディTT RSと戦うことになったが、雨が強まるにつれ差が開き、しかもレース中断時に1周のハンデとなるという最悪のタイミングとなった。レース再開後は猛追を見せ、レース終盤にはカルロ・バンダム選手がアウディTT RSに40秒様で追い詰めたが、結局届かず総合26位/クラス2位に。念願のクラス3連覇はならなかった。
GAZOOチームは、影山正彦/石浦宏明/大嶋和也/モリゾウ組のレクサスLFAが総合37位・SP8クラス2位。木下隆之/佐藤久実/矢吹久/平田泰男組のトヨタ86が総合64位/SP3クラス2位となった。また桂選手のドライブしたアストンマーチン・ラピードSは、E1-XP2クラス優勝/総合114位という結果だった。日産GT-Rは序盤は健闘したが、マシントラブルが発生しGT3-SP9クラス22位/総合136位となっている。
プジョーは目論見通り、クラス1〜3位を独占し、優勝した216号車は総合順位で30位、2位の208号車は総合37位、3位の215号車は総合44位に食い込み、クラス優勝に留まらず大排気量車と互角に戦う力を見せ付けた。
また、ニュルブルクリンクで上位の常連、 マンタイレーシングの911 GT3 RSRはSP7クラスで優勝、総合7位でレースを終えた。ニューモデルの信頼性、セッティングの難しさを味わうことになったといえる。