【メルセデス・ベンツ】シューティングブレーク試乗記 スタイル、機能、安全のすべてを欲張ったモデル

マニアック評価vol157
もはや4ドアクーペという表現が当たり前となってきた現在、その魁として発表されたのがメルセデス・ベンツのCLS。4ドアセダンの実用性を持ちながらよりスタイリッシュにクーペのような流麗なシルエットをもつCLSは北米や日本だけでなく、ドイツ本国でもブレークし世界的なヒットを飛ばしているモデルだ。

メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク フロント

そのCLSをベースとしたワゴンボディがシューティングブレーク。2012年10月に国内導入され、セダンをよりスタイリッシュにしたCLSのコンセプトは、ワゴンという概念をもスタイリッシュにして誕生させた。シューティングブレークは、もともと馬車の時代に貴族が狩猟用に専用装備を持つキャビンを特別にしつらえたものが起源で、1960年代になるとその貴族や富裕層が今度はクルマを狩猟用モデルとして誕生させている。したがって主に自動車メーカーが製造するモデルというより、コーチビルダー(ボディ製造会社)の手によって製造されるケースが多かった。だからハンティングブレークでもよかった?

メルセデスでは、そのシューティングブレークの解釈として狩猟用からロングツーリングを楽しむ、スポーツクーペツアラーという新しいコンセプトのもの、開発したモデルである。従って、実用的でありつつ、貴族、富裕層御用達を起源とすることから、エレガントでありスタイリッシュでなければならず、デザイン優先で設計されたモデルということができる。

モデルラインアップはV型6気筒3.5Lガソリンエンジンの「CLS350 Blue EFFICIENCYシューティングブレーク」970万円、V型8気筒4.7Lツインターボ4WDの「CLS550 4MATIC Blue EFFICIENCYシューティングブレーク」1240万円、そしてもっともホットなモデルAMGもある。V型8気筒5.5Lツインターボ「CLS63AMGシューティングブレーク」1680万円の3モデルがラインアップする。さらにこのAMGモデルには63AMGをパワーアップしたEdition1、1800万円というモデルも存在する。

試乗したモデルはCLS350Blue EFFICIENCYシューティングブレークで、306ps/370Nmというスペックモデル。このエンジンに7速ATが組み合わされJC08モードは12.4km/L。

メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク サイドメルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク リア

クルマから少し離れて眺めてみると、圧倒的な存在感とエレガントさが伝わってくる。ボディサイズは4960(AMG5000)×1880×1420(AMG1415)mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2875mmで申し分のない余裕あるサイズだ。そしてサイドからの眺めが最もうっとりとする。クーペのような流れるルーフラインはテールゲートの傾斜へと自然に溶け込むようにデザインされ、際立たせるかのようにクロームのモールがボディラインを強調する。薄く長いサイドウインドウと大柄なボディはスプリンターのようなシルエットを持つ美しさだ。また、フロントデザインは71個ものLEDを使用したヘッドランプと大型のスリーポインテッドスターを中央に配し、ダイナミックでアグレッシブな印象になっている。

この大きさのボディを持ちながら最小回転半径は5.2mだから、小回りが利き使い勝手はいい。もっとも欧州の市街地はクルマがやっと通れるような場所はめずらしくなく、メルセデス・ベンツの最小回転半径が小さいのは特徴のひとつでもある。

メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク センターコンソール

メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク ハンドルメルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク 運転席01メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク 運転席シート

運転席からの眺めは高級車らしくレザーやソフトタッチのドアトリム、ダッシュボード、そしてウッドやクロームの使い方が素晴らしくラグジュアリーな空気を存分に味わうことができる。ステアリングに触れた手の平まで気持ちよくなる高級レザーや、パドルシフトの小気味よさも手の中に残る。シートのデザインやボリュームも高級車に相応しい印象のもので、派手すぎず無駄に演出するようなことのなさも魅力的に写る。試乗車のインテリアは外板色のブランウン系にコーディネイトさせたカラーで、落ち着きがありジェントルな空間がキチンと確保されている。

メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク リアシート

リヤシートはシューティングブレークの特長でもある。CLSはクーペデザインであるため、ルーフラインが低く、後席のヘッドクリアランスが小さい。特に絞り込まれたデザインのために、頭部サイドのスペースが小さいのだが、シューティングブレークはCLSよりもさらに後方へルーフラインが伸びているために、頭部周りのスペースがセダン並みに確保されている。従って、後席は大人3人が余裕を持って座れる居住空間になっている。

メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク ラゲッジスペース02
標準のラゲッジスペース
メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク ラゲッジスペース01
オプションのdesignoウッドフロア

 

 

ラゲッジは1550Lという巨大な容量を持ち、かなりの量の荷物を運ぶことができる。しかし、このスペースを荷物運びのスペースとして考えるか、あるいはエクステリアデザインからくる知的センスで使用するのかはオーナーの好みで決まるスペースだろう。オプションではこのラゲッジにアメリカンチェリーとスモークドウッド2種類の材料を組み合わせたdesignoウッドフロアというフローリングラゲッジも用意されている。

搭載するパワーユニットは前述の3つで、試乗したV型6気筒3.5Lの自然吸気エンジンに7速ATという組み合わせ。上質な加速フィールと変速が素早く行わる。リヤのサスペンションにはセルフレベリング機能がつき、積載量や乗車人員に応じて自動で一定の車高を保ち、上質な乗り心地をつくっている。ちなみに、CLS5504MATICにはエアマチックサスペンションが装備され、バネ定数、減衰力、車高を自動で調整する。

ハンドリングは当たり前のごとく直進性の座りの良さ、微小舵や切り増し、切り戻しに至るまで少し重めのフィールながらナチュラルで、そして上質感が伝わってくる。メルセデス・ベンツの凄さとでもいうのか、ハンドリング、ブレーキタッチ、アクセルペダルの重さなどクルマを動かすときの動作全てのフィールに共通性があって、何かの操作だけに違和感を感じるということがないのだ。だから、ブレーキのタッチ、クルマの止まり方ひとつでも上質なフィールがあり、加速してもその品のよさを感じることができる。これこそプレミアムモデルの本質なのではないだろうか。

安全面の装備でも充実し信頼性が高い。長距離レーダーと近距離レーダー、カメラを用い、衝突回避やドライバーへの危険を知らせるシステムなど安全をサポートする機能も満載している。

試乗したCLS350BlueEFFICIENCYシューティングブレークはライアンアップでもっとも小さいパワーユニットだが、0-100km/hが6.7秒で十分な速さはある。550やAMGモデルであれば、500psオーバーのパワーを堪能することが可能であり、その優越感、通快感を味わえることは言うまでもない。

メルセデス・ベンツの新たなコンセプトで送り出したシューティングブレークは、若々しさと知的イメージがあり、アクティブでスポーティな印象を持って、新たなマーケットを開拓したのかもしれない。

メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク 価格表

メルセデス・ベンツ CLS シューティングブレーク 主要諸元表

メルセデス・ベンツ CLS  シューティングブレーク 4面図

 

メルセデス・ベンツ CLS シューティングブレーク 公式サイト

COTY
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