20124月25日、2代目となるメルセデスベンツBクラス(W246)が日本で発売された。この新型Bクラスは、2011年秋のフランクフルトショーでワールドプレミアが行われ、同年11月からヨーロッパで発売が開始されている。日本では半年遅れでのデビューとなった。
新たなコンセプト
初代Bクラス(T245)は2005年の発売で、周知のようにAクラスのサンドイッチ構造のプラットフォームを使用している。サイズ的にはCセグメントに属するハッチバックだったが、全高が1600mmとミニバンなみに高いため、ゴルフ・トゥーラン、オペル・ザフィーラなどとも競合するMPV(多目的乗用車)的な性格も備えていた。
新型Bクラスは、プラットフォーム、パワートレーン、デザインの方向性や開発コンセプトまで初代とはまったく異なる、新たなクルマとして白紙から企画されている。もちろんこの新しいプラットフォームは、今後登場する新型Aクラスにも適用される。
「新型Bクラスはかつてない俊敏なハンドリングと優れた燃費、室内の快適性と広いスペースを融合したオール新設計の新型モデルであり、従来より低められた全高と一段とアップライトになったドライビングポジションは、このコンパクトスポーツ・ツアラーの大きな特徴です」とメルセデス・ベンツ社は説明している。
商品企画としては、初代が保守的なイメージがあり、ユーザーの年齢層が高かったことを踏まえ、よりスポーティで運動性能やデザインを重視し、大幅なイメージチェンジをはかっている。したがって、初代のトール・ハッチバックの今回のフルモデルチェンジで全高を1557mm(後述するように日本仕様は1540mm)まで低められ、その一方で広い居住スペースやラゲッジスペースなど多用途性を確保した、よりアクティブで若い世代へのアピールを強めているのだ。ただし、そうはいってもメルセデスらしさもきっちり盛り込んでいる。
それはエンジン、トランスミッションからボディの空力も含めた燃費・環境性能の追求と安全性の追求である。また、新開発のプラットフォームは、電気自動車や燃料電池といった将来の駆動システムの搭載に備え、「エナジースペースコンセプト」によるモジュラー構造を採用。プラットフォーム後部のメインフロアパネルを変更することで、大容量の電池や水素タンクを搭載できるようになっており、将来を見据えた設計になっていることも特筆される。
ボディ/プラットフォーム
新開発のボディ/プラットフォームは、軽量化と強度を高めるために高張力鋼板と超高張力鋼板をボディ全体の約67%に使用している。また、万一の歩行者事故の際には歩行者の傷害を軽減するため、フレキシブルなアルミニウム製ボンネットと樹脂製フロントバンパーを組み合わせた「ソフトノーズ」を採用。エンジンとボンネットの間のスペースも拡大して十分な衝撃吸収ゾーンにしている。
ボディサイズは、全長4365mm、全幅1785mm、全高1540mm(日本仕様)、ホイールベース2700mm。全高が標準的なCセグメントのハッチバックより50mmほど高いこととロングホイールベースが特徴である。
デザイン/エアロダイナミックス
デザインは、アローシェイプ・デザインのボンネットと大型のフロントグリルを組み合わせたフロントマスクで、最新のCクラスなど統一したデザインであり、ハッチバックのボディ全体のフォルムとの整合性よりはブランド・アイデンティティを重視したといえる。なおフロントグリルは、ベースモデルの180は3本バー、180スポーツは2本バーと区別される。
ボディサイドは、ヘッドライト後端からリヤエンドに向かって伸びるラインと、フロントホイール後端からリヤホイール上部に向かって跳ね上がる強いキャラクターラインにより、新型Bクラスのダイナミックなキャラクターを象徴しているのが大きな特徴だ。
新型 B クラスのCd値はクラス最高水準の0.26で、2ボックス・ボディとしては優れた空力特性といえる。整流を目的にフルカバーされたアンダーフロアはもとより、フロントグリルからヘッドライトまわりに施されたシールなど、細部におよぶ空力処理によりこのCd=0.26を実現。特にフロントホイールハウスで発生する乱流低減のために、のこぎり歯状のホイールアーチスポイラー(ストレーキ、あるいはタイヤフェアリングとも呼ぶ)を採用しているのがユニークだ。
インテリア
インテリアは競合車に対抗して質感を高めることや、スポーティさ、ラグジュアリーさを演出するデザインである。例えばエアアウトレットは、SLS AMG流の丸型のエアアウトレット・デザインとなっている。シートはサイドサポートを強調した形状だ。ボディ全高が低くなったが、フロントのヘッドクリアランスはクラストップレベル。リヤシートの足元スペースもクラストップレベルだ。
リヤシートは左右2:1の分割可倒式で、ラゲッジ容量は486L〜1545L。オプションのEASY-VARIOPLUS 装着時は後席シートにシートバックの角度調節と前後スライド機構(最大140mmスライド)が追加される。
エンジン
新型Bクラスに搭載される新開発の1.6L・直列4気筒直噴ターボエンジン(270型)は、ダウンサイジング・コンセプトに従って開発された。排気量1595cc、ボア×ストロークは83.0×73.7mmで、圧縮比は10.3。最高出力122ps/5000rpm、最大トルク200Nm/1250〜4000rpmという低速型に設定している。動力性能は0-100km/h加速は10.2秒、最高速は190km/hというスペックだ。
装着されている小型ターボはIHI製。エンジンはオールアルミ製で137kgと軽量・コンパクト設計になっている。直噴システムはBlueDIRECTテクノロジーと呼ばれる最新世代で、200barのコモンレール/ピエゾ・インジェクター式で、スプレーガイド噴射タイプを採用し、5パターンのマルチ噴射とマルチ点火を組み合わせた燃焼コントロールをしている。
ECOスタート&ストップも装備し、JC08モードでの燃費は16.0km/Lで従来モデル比約19%の燃費向上を実現している。なおヨーロッパ仕様のエンジン・ラインアップは、ディーゼルが180CDI(1.8L・109ps)、200CDI(2.0L・136ps)、ガソリンは180以外に200ブルーエフィシェンシー(1.6L・156ps)も設定されている。
トランスミッション
トランスミッションは従来のCVTを廃止し、新型エンジンとの組合わせで、湿式クラッチを持つ3軸のデュアルクラッチ・トランスミッション(7G-DCT)が新開発された。もちろんメルセデスとしては初のDCTである。このDCTは全長367mm、重量が86kgときわめてコンパクトな設計だ。補助電動ポンプを装備し、スタート&ストップも装備する。湿式クラッチを備え、ディーゼルエンジンも含めた大容量のトルクに耐えるポテンシャルが与えられている。
シャシー
サスペンションはフロントがストラット式、リヤは従来の独創的なスフェリカル・パラボリック式ではなく新開発の4リンク式マルチリンクを採用した。ハブキャリアやサスペンションリンクはアルミ製にして軽量化されている。また従来型より低重心化されたことを前提に新設計サスペンションをレイアウトしている。ダンパーはリヤがモノチューブ式で、運転モードに合わせるセレクティブダンピングシステムを標準装備する。
なお日本仕様のサスペンションは、本国ではスポーツ・サスペンションパッケージとされる仕様が標準装備となっている。その理由は、日本の立体駐車場の車高制限である1550mm以下とするためで、標準仕様より約20mmローダウンされている。この結果、従来のBクラスでは不可能だった立体駐車場を利用できるようになったのだ。
ブレーキはフロントがベンチレーテッド、リヤがソリッドディスクで、スポーツ・グレードにはフロントはドリルド・ディスクが装備される。なおパーキングブレーキも電動化されている。またブレーキはESPと連動したトルクベクタリング機能も備え、コーナリング時の内輪に自動的にブレーキをかけるシステムになっている。
ステアリングは電動パワーステアになり、デュアル・ピニオン式となった。またスポーツ・グレードには可変ギヤ比のダイレクトステアリングが装備される。ステアリングは軽快さ、俊敏さを狙ったセッティングになっていることが特徴だ。この電動パワーステアリングは、オーバーステア初期にカウンターステアを促す機能、左右でグリップが異なる路面での自動補正、トルクステアの軽減、横風や勾配路面での自動センタリングなどの機能も備えている。
ドラーバー支援システム
ドライバー支援システムは、コンパクトクラスでは世界初の2.4GHzの短距離レーダー式衝突警告システム「CPA」(コリジョン・プリベンション・アシスト)を標準装備した。現在、ヨーロッパでは標準化しつつある短距離での衝突警告システムはレーザーレーダー式が主流だが、メルセデスは短距離レーダー式を選択したのだ。
CPAは車両速度が30km/h〜250km/hの範囲で前走車との車間距離が近すぎる場合に警告灯が点灯、前車や障害物に2.6秒以内に衝突する可能性がある場合には警告灯と警告音で注意を喚起。さらに警告後にドライバーのブレーキ操作が不十分な場合にはアダプテイブ・ブレーキアシストにより事故回避に必要な制動力を自動的に補う。また、オプションのセーフティパッケージ装着車はブレーキングによる減速が規定値を超えると衝突に備えてプレセーフが自動的に起動する。またディストロニック・プラスにより、前方障害物との衝突回避もできる。
また居眠り運転による事故を防ぐため、ドライバーの運転特性を解析し、長時間走行時のドライバーの疲労や眠気を検知して注意を促すアテンションアシストも標準装備する。
新型Bクラスは、日本市場ではベースモデルとなる「B 180 BlueEFFICIENCY」と、スポーツ&ラグジュアリー装備の「B 180 BlueEFFICIENCY Sports」の2グレードが設定される。価格は前者が299万円、後者が348万円という戦略的なプライスで、これにバリューパッケージ、セーフティパッケージ、ナイトパッケージを組み合わせる形になる。
前車追従型クルーズコントロールとプレセーフがパッケージ化されたセーフティパッケージ(15万円)と、本革巻きステアリング、バイキセノン・ヘッドランプ、リヤのセンターアームレスト、カップホルダー、リヤシートテーブルなどがセットになったバリューパッケージ(Sportsには標準装備)は25万円、また、標準装備のCOMAND システムにHDD ナビゲーション、地上デジタルTVチューナー、ETC を追加する「COMAND システムナビゲーションETC パック」(15万2250円)は定番オプションとされている。
■Bクラス主要諸元
●ディメンション:全長×全幅×全高=4365×1785×1540mm/ホイールベース=2700mm/車両重量=1450kg(バリューパッケージ車は1480kg) ●エンジン:270型/直列4気筒DOHC直噴ターボ/排気量=1595cc/最高出力=122ps/5000rpm/最大トルク=200Nm/1250~4000rpm●トランスミッション :湿式7速DCT ●燃費性能:16.0km/L(JC08モード)/16.4km/L(10・15モード) ●駆動方式:FF ●サスペンション(前/後):ストラット/マルチリンク ●ブレーキ(前/後):Vディスク/ディスク ●タイヤサイズ:205/55R16 225/45R17 225/40R18 ●乗車定員:5名