2011年11月14日、メルセデス・ベンツ日本はメルセデスの中核モデルであるEクラスをビッグマイナーチェンジ。V6、V8エンジン搭載グレードにおいて、最新の「Blue EFFINCIENCYテクノロジー」による環境性能に優れた直噴エンジンを搭載した。また4輪駆動モデルのE300 4MATICを新たに導入している。
この「Blue EFFINCIENCYテクノロジー」による3.5LV6、4.7LV8の直噴エンジンは、2011年5月に本国では発表されていた待望の最新ユニット。当然ながらメルセデスの7速AT「7G-TRONIC PLUS」と組み合わされ、さらにアイドリングストップ機構「ECOスタートストップ機構」も備えたことで、最大で約48%もの燃費性能向上を実現しているという。
それによりV6エンジンを搭載するE300、E300 4MATIC、E350は「平成21年排出ガス基準75%減レベル(☆☆☆☆)」かつ「平成22年燃費基準+20%」を達成。エコカー減税の対象となっている。
V6エンジンはバンク角を90度から60度に変更
まず注目したいのは大幅に進化したV6エンジン。シリンダーバンク角を従来の90度から60度へ変更していることが最大のポイントと言えるだろう。このバンク角の変更は、V8とのモジュール設計からV6に特化した新設計へのシフトだろう。ダウンサイジングのトレンドを受けて、Eクラスでも直4とV6が全体のラインアップでの中心となることを予感させる。
ブロック、ヘッドともにアルミを使い、またインテークマニホールドなどには樹脂を積極的に採用することでエンジン単体でのダイエットに励んでいるのも現代のトレンドに乗ったもの。もちろんメルセデスらしいユニークで斬新なチャレンジも随所に織り込まれている。
最大200barのピエゾインジェクターによる直噴システムは1回の吸気行程において最大5回の噴射が可能というが、さらに点火において最大4回のスパークを実現した「MSI(マルチスパーク・イグニッション)」を採用。この相乗効果により、燃焼時間を約4%短縮することに成功したという。
さらにエンジン負荷に応じて、成層燃焼(リーンバーン)、理論空燃比(ストイキ)による均質燃焼、その両方を組み合わせた均質成層燃焼という複数の燃焼モードを状況に応じて使い分けているのがユニークだ。
透視図でいえば、カム駆動のチェーンが1次と2次を使う構造となっているのがユニークなところ。バンク角を60度と6気筒に最適化したことでバランサーも不要となった。
主なスペックは以下の通りだ。E300の最高出力は185kW(252ps)/6500rpm で、最大トルクは340Nm/3500〜4500rpm(従来比では出力+15kW/+21ps、最大トルク+40Nm)。E350の最高出力は225kW(306ps)/6500rpmで、最大トルクは370Nm/3500〜5250rpm(従来比では出力+25kW/+34ps、最大トルク+20Nm)。
一方、E550に搭載されるV8エンジンもピエゾインジェクターを使った緻密な直噴制御やMSIの採用などにより、排気量を5.5Lから4.7Lにダウンサイジングしながらスペック的には向上しているのは、ツインターボ化されているおかげだ。その数値は最高出力300kW(408ps)/5000〜5750rpm、最大トルク600Nm/1600?4750rpm(従来比は出力+15kW/+21PS、最大トルク+70Nm)となっている
もうひとつの注目がレーダーセーフティパッケージ
そしてマニア目線として、この新しいEクラスにおける注目点は、E300、E350の車両型式だろう。その先頭に付く排ガス識別記号は「RBA」となっている。通常のガソリンエンジン車では「DBA」や「CBA」となっていることが多いので見慣れぬ記号と言える。
最初の「R」が示すのは平成21年規制75%減認定かつNOx触媒付き直噴エンジンという意味。リーンバーン領域があるゆえの「RBA」という排ガス識別記号というのも、そのユニークなパワートレインを示すキーワードだ。
また、このマイナーチェンジを機にEクラスに「レーダーセーフティパッケージ」が設定された。中長距離用77GHz帯ミリ波レーダーと24GHz近距離レーダーにより障害物や先行車を認識して、衝突回避アシストや追従機能を実現する、このシステムはE350とE550に標準装備。その他のEクラス全車には19万円でオプション装着することができる。この新たな安全デバイスの詳細については、後日改めて詳細にレポートしたいと思う。
なお、今回のモデルチェンジではメカニズム的に大きな変更がなかったE250系、E350BLUETEC系については、装備は充実させながらも価格は据え置かれている。またE63AMGのセダンとステーションワゴンについては排気量を6.3Lから5.5Lにダウンサイズし、大幅に環境適合性を高めた。同時に装備を充実させながら、価格は据え置きとなっている。
■新型Eクラス価格表
文:山本晋也