40年以上の歴史を持つレンジローバーは4代目となって国内登場したのは2013年3月。その約1年後の2014年3月に最もエクスクルーシブなモデルとしてロングホイールベースのレンジローバーが発売になった。
このロングホイールバージョンはヴォーグとオートバイオグラフィに設定されるが、試乗はトップモデルのオートバイオグラフィで行なった。
レンジローバーのトップモデルは目の肥えたユーザーを唸らせるパワーと性能、そして品質がなければ成り立たない。レンジローバーにはオンロードでの快適性とオフロードでの走破力も要求されるモデルだ。そして初代が登場した当時、市場にライバルは不在で世界中の富裕層から支持を集めた歴史を持っている。したがって、このセグメントのベンチマークであり、世界最高級のSUVとして君臨しているわけだ。
◆インテリア
ドアを開けた瞬間、他のどのクルマとも違うことに気づく。それは強烈なインテリアデザイン・ランゲージを目にするからだ。車体構造に織り込まれてでもいるような、インパクトのある水平基調のデザインと背骨のような垂直のラインが際立ち、あたかもレンジローバーを支えているかのような力強さを意識させられる。
先代よりスイッチを50%削減し、すっきりシンプルに仕上げたことで素材が前面に押し出され、「質」を意識させられる。美しいレザー、ウッド、メタル、ステッチなど特別な質感のテクスチャー、デザインで織りなされるインテリアは、差し込む光で彩りを増す。
高級レザーをランドローバー社は3つのクオリティに分類。ツーリストレザー、ウィンザーレザー、そしてセミ・アニリンレザーの3種類。レンジローバーには、革のなめしに時間をかけ、革表面に透明感を出し革らしさの銀面模様が顕著にみられる最高級のセミ・アニリンレザーを採用。しっとりとした手触りはまさに極上のしなやかさを持つ。
リヤシートはスタジアム型で後席が高くなるため、ドライバーと同じ景色が楽しめる。前席の頭上越しにフロントビューを眺めることができ、自分たちのほうが偉くなった気分を味わうことは間違いない。そして試乗車の後席はベンチタイプではなく独立した「エグゼクティブクラスシート」を装備。前席とすべて同じ機能があり、温かくも、涼しくも、そしてマッサージ機能を備え、リクライニングも大きくできることでアンビエントなスペースを十分に満喫できる。
センターコンソールはフロントまでつながりレンジローバーの背骨に触れているイメージもある。ダッシュボードまでつながるデザインは、そこが車体の中心であることを感じさせ、頭上のパノラミックガラスルーフは強烈な解放感を演出している。座り心地が最高のレンジローバーの後席からは、新しい景色が目に飛び込み、光と空間、アンビエントスペースと寛げる空間があり、流れる景色に溶け込んで進んでいるように感じるだろう。
音響は英国生まれの最高級オーディオ「メリディアン」を装備し、29個ものスピーカーからは3Dのサラウンドシステムによる立体感のある音響が提供される。
ドライビングシートは、コマンドポジションと呼ばれる高い位置から見下ろすポジション。悪路など視界が限られる状況でも道路状況にかかわらず、高い安心感があるというレンジローバーならではのDNAが存在する。ドライブセレクトはポップアップタイプのロータリー式で、個性豊かなセレクトレバーを装備。もちろんどんな路面状況でも最適な走行モードを自動でセレクトする「テレインレスポンス2」を装備する。
◆エクステリア
3つのラインコンセプトからなり、サイドビューのキーデザインラインはルーフライン、ウエストライン、シェルのフレームラインである。ガラスで覆われたようなデザインを強調し、フローティングルーフはそのデザインキーのひとつでもある。そしてショートオーバーハングのフロント、リヤのロングテールもレンジローバーのDNAであり、悪路走破性の高さをイメージさせる。
また、サイドウインドウ、フロントウインドウには吸音するラミネートウインドウを採用することでも静粛性を高めている。スクエアなデザインだけに風切り音は気になるところだが、高級車には最重要要素でもある。ランドローバー社によるテストコースでの速度100mph(約160km/h)試験では、他のどのモデルよりも静粛性は高かったと開発のミック・キャメロン氏は言う。
◆スペシフィケーション
オートバイオグラフィに搭載するエンジンはV8型5.0Lスーパーチャージドで510ps/625Nmのスペックを誇る。フルタイム4WDに電子制御センターデフを装備した8速ATを搭載。ボディサイズは全長5205mm(5005mm)×全幅1985mm×全高1865mm、ホイールベースは3120mm(2920mm)と圧倒的なボディサイズを誇る。
サスペンションにはフロントマクファーソンタイプの電子制御エアサスペンション、リヤはダブルウイッシュボーン式の電子制御エアサスペンションを装備する。1865mmという全高が示すように走行時の車高は高い。そのため乗降時には「アクセスモード」を備え、エアサスペンションにより車高を下げることができる。もちろん走りだせば自動で車高は元に戻るようになっている。
こうした高級リムジンのロングホイールベースの後席は、もちろんショーファードリブンとしての使い勝手が最も重視されているが、この車高の高さは新鮮であった。乗用車タイプのリムジンも確かにエクスクルーシブな空間が提供されているが、どちらかといえば外界の景色を遮断し、また、外界からの視線も受け付けないようになっていることが多い。がしかし、レンジローバーはハイトのあるスタジアム型リヤシートとガラスに覆われたエクステリアデザイン、そして超大型のサンルーフにより、外界を見下ろし、周りからの羨望の視線を浴びるスペシャルモデルという印象であった。価格は消費税込1810万円。