【ランドローバー】レンジローバー・イヴォーク試乗記 際立つ内外装デザインに魅了され、走りにも満足

マニアック評価vol93
スタイリング

ランドローバー社がリリースするモデルは、ヘビーデューティなランドローバー系モデルとして、ディスカバリー4、フリーランダー2、ディフェンダーの3モデルがあり、もう一つのアーバン系セレブレティとしてレンジローバー・ヴォーグ、レンジローバー・スポーツがあり、こちらのカテゴリーに新たに属するのがレンジローバー・イヴォークだ。

ランドローバーは60年以上の歴史があり、さまざまなアウトドアライフにマッチするモデルとして人気があり、その実力も世界中で認知されている。あらゆる状況でその走破力は魅力的で、どこまでも伸びていくサスペンションは大地をしっかりつかみ、突き進んでいく。一方のレンジローバー系は1970年代にリリースされ、オールテレインの走破力はもちろん、よりラグジュアリーで洗練されたデザインを持つモデルとして、都市での生活にマッチするSUVポジションで人気を得てきている。

このイヴォークも同様に、アーバンライフを念頭に置きながらも、悪路での走破力も重視したモデルとしてデビューした。2008年、北米のデトロイトショーでコンセプトモデル「ランドローバーLRX」として登場したのが最初となる。オフロードでの走破性にも重点を置くランドローバー社のモデルとしては、ルーフラインの低さやスピード感溢れるシャープなデザインなど、大きな話題を呼んだ。このLRXはランドローバー社がBMWからフォード・グループに売却(2000年)された後に開発されている。

イメージクーペ真横

そして、2010年のパリ・サロンで正式にワールドプレミアされ、スポーティでスタイリッシュなコンパクトプレミアム・クロスオーバーSUVという新しいセグメントへのチャレンジがスタートした。同時に40年以上つづくレンジローバーブランドでもっともコンパクトなサイズのレンジローバーとしてデビューすることになったのだ。全長4355mm×全幅1900mm×全高1635mm(1605mmクーペ)WB2660mmで、いずれも4WDモデルの右ハンドル設定である。

なお2010年末からのイヴォークの生産にあたり、2009年にイギリス政府はランドローバー社に助成金が拠出されている。同社のヘイルウッド工場で製造することが条件での助成金だが、これによりイヴォークのデビューは確実になったといえる。

フロントリヤ

プラットフォームはフォード・ヨーロッパグループの中型FF用の「C」プラットフォームに手を加えた「LR2」だ。いうまでもなくラダーフレームを使用してきた従来のレンジローバーと異なり、完全なモノコック構造になっている。

イヴォークのラインアップは3モデル4グレード。もっともベーシックなモデルが「ピュア」で、クーペと5ドアにラインアップされ、豪華な内装をもつ「プレステージ」は5ドアに用意。よりスポーティな走りが楽しめるクーペモデルの上級グレードには「ダイナミック」というモデルが用意されている。今回試乗したモデルはピュアのクーペモデルと、プレステージの5ドアモデルである。

サンルーフ2.0Lエンジン

エクステリアに関しては、インパクト十分だ。各ピラーをブラックアウトすることでフローティングしているかのようなルーフデザイン。クサビ型デザインのサイドウインドウ。フェンダーアーチのボリュームは力感たっぷりで、躍動感を感じさせる。ちなみに、このルーフ部分は、クーペ、5ドアモデルで共通のルーフを使用している。タイヤ&ホイールは17インチ〜20インチまで揃っており、ルックス重視のユーザーにも親切な設定だ。

フロントインパネ

ハンドルダッシュボード

インテリアではプレステージが圧巻。レンジローバーが伝統的に用いてきたプレミアム品質の素材をふんだんに使用し、高級感たっぷりのインテリアに仕上がっている。これまでのレンジローバーと同じように、インパネは水平要素とセンターコンソールの垂直ラインの交差を基本として成り立っている。

インパネトップは厳選された高級皮革オックスフォードレザーが用いられ、熟練した職人の手作業によって見事なWステッチ仕上げになっている。インパネ中央部分も本革で覆われており、レザーシートやレザートリムとともにラグジュアリーな空間を作り出している。1台のプレステージを完成させるのに、牛3頭分以上の大きさに匹敵する10m2を超える革を使用しているということだ。また、リアルレザーではない部分にもソフトタッチの合皮を使用したり、アルミ装飾部も本物のアルミニウムを、またリアルウッドを採用するなど、上質でまさにプレミアムなインテリアに仕上げられている。

エンジン停止エンジン始動

↑エンジンを始動するとコンソール真ん中にあるシフトダイヤルが上昇してくる

シフトレバーはジャガー・ランドローバーに共通するポップアップタイプのシフトであり、回転させてレンジをセレクトする。走行中に操作することは想定していないのだろう、+/-もシフトダイヤルには装備されていない。がしかし、パドルシフトは装備されているので、快適にそしてスポーティに走ることは可能である。ちなみに、このパドルシフトは、ステアリングコラムに固定されているタイプではなく、ステアリング本体に取り付けられているタイプだ。

リヤビュー

さて、搭載されているエンジンはフォード・グループのEcoBoost、直列4気筒+ターボの2.0Lで、Si4型エンジンである。イヴォークには3種類のエンジンが用意されているが、国内ではこのSi4のみ導入となっている。ちなみに、欧州では2種類の2.2Lディーゼルターボがあり110kw(150ps)と139kw(190ps)がある。そして、国内導入する2.0L+ターボのガソリンエンジンである。出力は177kw(240ps)5500rpm、340Nm/1750rpmとなっている。このSi4型エンジンは他に、フォード・エクスプローラー エコブースト、ボルボS60(国内未導入)にも搭載されているユニットと同じだ。

0-100km/h加速は7.6秒というスペックで1760kg(1730kgクーペ)の車体を引っ張る。十分な加速感とパワーを感じることができるスペックだ。このエンジンの特徴はオールアルミ製で、ほぼ同等の出力の232ps仕様フリーランダーに搭載する6気筒エンジンより40kg軽量である。CO2排出量も199g/kmと環境への配慮もされている。

トランスミッションは最新世代のAW・F-21型6速ATで、低粘度のミッションオイルの採用や、ポンプ負荷、フリクションの低減といった基本性能の見直しによって、ミッションだけで1%の省燃費につなげている。また、パドルシフトによる変速スピードも速く、気持ちよくスポーツドライブができる。

後方視界
写真でみるほど、後方視界は悪くない

実際のパワー感は申し分なく、登りのきつい箱根ターンパイクも平地のように加速をし、軽快に登っていく。低回転から発揮されるトルクは扱いやすく、6速でゆったり走っているときなど、キックダウンしないでも再加速していくので、大人な走りを体感できる。

スロットルレスポンスもナチュラルだ。妙なギミックはなく、アクセルストロークにリニアに反応している。ただ、ステアリングフィールには少しの反力を感じる。電動パワステの制御なのだが、プレミアムなインテリアだけに、もっとナチュラルなフィールを望んでしまいたい。

オフロードでの走破力もテーマに開発されているイヴォークだが、今回の試乗では箱根のワインディン路だけで、悪路の試乗はできていない。が、プレステージとダイナミックのグレードにはマグネライド機構が装備され、ノーマルサスペンションとの違いは体験できた。

このマグネライドは、連続可変ダンパーを用いた機構で、磁性体を持つ特殊なオイルを使用している。このオイルは磁力によって粘性が高まる特性をもっているため、連続的に無限の可変ダンパーセッティングが可能になるわけだ。このマグネライドをつかったアダプティブ・ダイナミクス・システムは車両の動きを少なくとも1秒間に1000回という速さでモニタリングし、事実上タイムラグのない瞬間的な反応をしているという。

それはボディロールを最小限に抑え、バランスのとれたフラットライドな乗り味を作り出すものだ。実際、その違いは明確で、ロールをしたがる車体に対して減衰が働き、傾きのすくないコーナリングを体感する。ただ、ノーマル状態でのコーナリングが実にランドローバー社製らしく、ストロークが長く、しなやかにロールをしていくので気持ちのいいロール感を味わえていたことも付け加えておく。ちなみに、このマグネライドを装備していたのは、5ドアのプレステージである。

試乗車のイヴォーククーペ・ピュアは17インチを、プレステージの5ドアは19インチをそれぞれ装着していたが、ともに乗り心地はいい。細かな路面からの入力のアタリはソフトでプレミアムと感じさせる乗り心地である。タイヤサイズの違いは乗り比べればその違いは分かるのだが、大径タイヤによくありがちなオーバースペックのような乗り心地にはなっていない。ただし20インチも設定されているが、こちらは試乗していないため、不明だ。

そして4WDシステムは、前後輪への駆動力配分を連続的に可変させ、運転状況に合わせて最適な駆動をしている。その4WDシステムはハルデックス社製の可変センターカップリングを採用し、通常の舗装路走行ではそのほとんどをフロント駆動で走行するようにコントロールされている。

ハンドリングは、想像以上にスポーティなクルマだった。試乗車はクーペの17インチ、5ドアは19インチであったが、タイヤサイズ以外にも乗り味には差がある。クーペはスポーティを意識しているのか、ハンドリングがシャープであり、ボディの剛性感も5ドアより感じる。19インチや20インチ装着のクーペだと、俊敏になりすぎるのではないだろうか。一方5ドアは、サスペンションの動きがしなやかに感じ、ボディの剛性感とあわせて安心感が高い。フィーリングは好みだろうが、5ドアのほうが、ラグジュアリーでありながらスポーティという言葉がピタリとするような気がした。

■レンジローバーイヴォーク/イヴォーククーペ主要諸元

●価格 ピュア450万円、プレステージ578万円、クーペ・ピュア470万円、クーペ・ダイナミック598万円 ●全長4355mm×全幅1900mm×全高1635mm(クーペ=1605mm) ●排気量2.0L+ターボ ●最大出力177kw(240ps)/5500rpm、最大トルク340Nm/1750rpm ●JC08モード燃費9.0km/L ●ミッション=6AT ●駆動方式=フルタイム4WD

ランドローバージャパン公式サイト

ページのトップに戻る