ランボルギーニは2021年11月5日、サーキット専用のハイパーカーとして世界限定40台の生産となる「エッセンザSCV12」を日本で初披露した。
エッセンザSCV12は4月に上海モーターショーでワールドプレミアが行なわれ、6月から生産が開始されている。このスクーデリア コルサが設計開発したサーキット専用モデルのオーナーはスペシャルクラブの一員となり、世界的に名の知られらたサーキットでこのハイパーカーを運転するドライビングプログラムに参加することができるという特別なマシンだ。
エッセンザSCV12は、FIAのハイパーカー安全基準に準拠したカーボンファイバー製ロールケージを搭載した初の市販マシン。これはランボルギーニの複合材料の研究と応用に関する30年にわたる経験の成果だ。
モータースポーツ部門の責任者であるジョルジオ・サナは、「エッセンザSCV12は、アイデアの実験室として誕生しました。そのため、GTカーとしては革新的なソリューションというべき負荷のかかるギアボックスに直接取り付けられたサスペンションなど、通常はレーシングプロトタイプに見られる技術を採用することができました。さらに、FIAとの技術協力により実現したスチール製ロールケージを持たない新しいカーボンファイバー製モノコックシャシーを採用し、将来的にはGTレーシングドライバーの安全性を飛躍的に向上させることができます」と語っている。
エッセンザSCV12のカーボンファイバー製シャーシ/フレームは、サンタアガタ・ボロニェーゼにあるランボルギーニ自動車のCFK部門のオートクレーブで製造される。この部門は、現行のアヴェンタドールシリーズのボディも製造している。
FIAの安全性ホモロゲーションは、静的テストと動的テストの両方を含む非常に厳しいもので、エッセンザSCV12のシャーシのベースとなるプロダクションシャーシの構造を大幅に変更。激しい入力でも大きな変形を起こさないように強度を高めている。またフレーム/シャシーに加え、ペダル、シートベルト、燃料タンクを含む20以上の静的テストが行なわれ、動的衝突試験では、最大で毎秒14mの速度で衝撃を加え高い強度を実現している。
スチール製のロールケージを採用せずカーボン製とするため、シャーシ内部に革新的なラミネートフォーム(ROHACELLR 71 XT)を採用。これにより軽量化だけではなく、コックピットのスペースが大幅に拡大され、最適なドライビングコンフォートが実現している。
ドライバーはカーボンファイバー製のカプセルに着座する。シート位置はロードモデルに比べて低く、ドライバーとパッセンジャーは、レーシングカーに見られる伝統的なスチールチューブの代わりに、複合材料で作られた左右のサイドインパクトガードによってドア側が保護されている。
もう一つの新しいソリューションは、モノコックの後部に設置されたクレードルだ。このクレードルには、エンジンが縦置きに配置され、その後端の横置きのギアボックスは荷重を支える構造的な機能を持っている。この特性により、ウラカンGT3 EVOよりも20%高いねじり剛性値を実現している。
トップスピードで1200kgを超えるダウンフォースとともに、このねじり剛性は、並外れたドライビング精度の確保に貢献。これにより、ドライバーはステアリング操舵角を大きく修正することなく、よりハイスピードでカーブを走り抜けることができる。
エンジンはランボルギーニが開発した中で最もパワフルな6498ccのV12自然吸気エンジンを前後逆転して搭載し、830ps以上を発生する。さらに高速走行時にラム効果によって吸入空気量を増大させ大幅にパワーアップ。この驚異的なパワーは、最新の横置きX-tracシーケンシャル6速ギアボックスと組み合わせている。ちなみにボディ重量は1377kgで馬力荷重は1.66ps/kg。
このギアボックスは、通常エンジンの前方に搭載するのに対し、後方に配置しシャシーの構造材として設計されており、後輪駆動システムと組み合わせることで、高い剛性を確保している。
サスペンションはレーシングカータイプのプッシュロッド式ダブルウイッシュボーンを採用。タイヤはフロントが285/650-19、リヤが354/725-20インチサイズ。
シャシー制御ではレース用ABS(12段調整)、トラクションコントロールも12段調整式を装備している。
エアロダイナミクスでは大型リヤウイング、サイドフィン、フロントスプリッターなどはGT3カーにインスパイアされ、250km/hで1200kgというGT3カーよりも高いレベルのダウンフォースを発生させることができる。
このハイパーカー「エッセンザSCV12」の価格は3億円で、基本的にはランボルギーニ社のスクーデリア・コルサが専用ガレージで保管、メンテナンスを行ない、オーナーはドライビング プログラムのスケジュールに合わせてサーキットにでかけ、ドライビングを楽しむことができるようになっている。