この見た目の個性からか、近年若年層に人気があり本格オフローダーというよりトレンドアイテムとしての注目度が上がっているのがジープ・ラングラーだ。その4ドアラグジュアリーモデルの「サハラ」に試乗してきたのでお伝えしよう。
クルマ選びにおいて「人と違う」という要素が大きなウエイトを占める人が少なからずいる。そうした個性を求める人達から熱い視線を送られているというが、実際に見ると大きくその存在感は強烈なインパクトがある。試乗車のボディカーは「グラナイトクリスタルメタリック」というグレーカラーでソリッドに見えるメタリック。このカラーがまたワイルド感を演出している。
全長は4870mm、全幅1895mm、全高1840mm、ホイールベース3010mmと大きい。試乗車は「ジープ・ラングラーアンリミテッド サハラ」でV6型3.6Lのクライスラー製ペンスターエンジンを搭載。トランスミッションは8速ATでもちろん副変速機付きの4WDで、2H、4H、4H auto、4Lの切り替えが可能だ。4Hと4Lはデフロックされ本格的な悪路・岩場走行で使用し、4H autoはタイヤに掛かる負荷によって自動で伝達トルクが変わるので、激しい雨の高速道路などでは威力を発揮する。2Hは2輪駆動で通常走行のメイン駆動方式だ。
現行のラングラーは2018年に11年ぶりのフルモデルチェンジを行なっており、このとき装備類も最新のものへと変更されている。特にこのサハラはラングラーの中でもラグジュアリー系なので、高級車に装備されるような豪華装備を備え、静粛性なども合わせて快適性の高いモデルでもある。
ラングラーのラインアップを見てみると、2ドアのショートホイールベースモデル「ラングラー・スポーツ」は受注生産でラインアップ。中心となる4ドアモデルでは「アンリミテッド・スポーツ」「アンリミテッド・サハラ」そして「アンリミテッド・ルビコン」と3モデルがあり、エンジンも2.0Lターボ搭載モデルも選択できる。
ルビコンはアメリカのカリフォルニア州レイクタホ周辺にあるトレイルの地名で、4WDを駆使して性能アピールの場として有名なところ。その名前を冠しているのがアンリミテッド・ルビコンだ。そして試乗車のサハラは、そうしたハードな4WD性能を持ちながらラグジュアリーな性能を持っているモデルで、特に装着タイヤがオンロードをメインとしたタイヤという点が相違だ。
実際に走行してみると、外観からは想像もできないほど静かで滑らかなのだ。その意外性からも最初に思うのは「え?」という驚きの静粛性。アクセルを踏み込まなければエンジン音も聞こえないほどで、しかも乗り心地もいい。3mを超えるホイールベースだけにゆったりとした動きをするので、高級感すら感じられるのだ。
それだけにデイリーユースや、ライフスタイルの相棒として自己演出にはもってこいというわけで、若者世代を中心に人気があるというのも納得できる。
装備では近年多くのモデルに装備されている運転支援装置も抜かりなく搭載され、レザーシートが選択できたり、タッチ式ナビモニター、スマホ連動機能も搭載している。さらにステアリングヒーターにシートヒーターも、アイドリングストップにバックモニターといったフル装備なのだ。
そして2021年5月に導入した「スカイ・ワンタッチパワートップ」も装備している。キャンバスのルーフが運転席から荷台まで全面オープントップとなるルーフだ。サンルーフというレベルではなく、オープントップになるのだ。じつは、静粛性が高いとは言え、唯一トンネルに入ると音の反響でルーフからの音が車内に入り込む。ルーフはキャンバスだけに吸音性が弱く、トンネル内だけは騒々しくなってしまう。
それとACCが渋滞時に活躍はしてくれるものの、完全停止してしまうとACCが解除されてしまうので、日本の高速道路の渋滞では使いづらい。このあたりはOTAでなんとかならないものだろうか。
面白い機能ではインパネやナビ画面などのバックライトをすべて消灯できる機能があった。元々ラングラーは軍用ジープを系譜にもっているので、敵に見つからないように?あるいは野生動物を刺激しないように?車内を真っ暗にできるのだ。どういう意図からの装備か不明だが、ユニーク装備と言える。
そして細かいところでは、「メディア」と書いてある蓋の裏にはUSBなどの端子接続部があるが、この蓋のヒンジが上部についている。使う時は少々使いにくいが、悪路走行中に蓋が勝手に開かないための工夫で、軍用やサバイバル系のアイテムではこうした工夫が一般的で、このちょっとしたアイテムにも、心ときめく人がいるのは間違いない。1992年キャメルトロフィー サバ・マレーシア大会にメディア枠で出場し、ボルネオのジャングルを23日間彷徨った筆者タカハシはときめいた(笑)
じつは、ラングラーモデル全般に言える機能として、ドアやフロントウインドウなどいろいろなものが脱着できる機能をもっているのだ。試乗車のサハラもフロントウインドウは前に倒れ、ドア4枚、リヤクオーターパネルも外すことができ、骨組みだけでの走行が可能なモデルなのだ。ただ、実際にはパワーウインドウの配線などケーブルが取り回されているので、実際にバラバラにしたら、整備士に組み立ててもらわないと復帰できないということになってしまうのだが。
こうしたハードなモデルは、見渡してもラングラーだけで唯一無二の存在と言えるだろう。このインディ・ジョーンズのようなモデルを実際の悪路や山林などアウドドアで乗るのも楽しいが、都会でホテルのクルマ寄せに乗り付けるのもまたオシャレだ。そうした両極端な性能を持っているからこそ、人とは違うといった価値観を持つ人達からの支持があるわけだ。
2020年にはこの独自のマーケットにランドローバー・ディフェンダーが投入され、日本にはこのマーケットに活性があるから投入されたのだろう。冒険心と個性を大事にする人には刺さるモデルだった。<レポート
高橋明/Akira Takahashi>
価格
ラングラー・アンリミテッド・サハラ スカイワンタッチパワートップ:628万円(税込み)