ジープ グランドチェロキーL試乗記 フラッグシップに相応しいプレミアム3列シートのSUV

ジープブランドのフラッグシップ「グランドチェロキー」がフルモデルチェンジをし、2021年12月に国内導入されている。今回は、そのロングホイールベース3列シート仕様の「グランドチェロキーL」に試乗できたのでお伝えしたい。

全長5m超えのフルサイズSUV。ボクシーなスタイルでかっこいい

米国内では絶大な人気を誇るジープブランド。その4WDの走破力には定評があり根強い人気になっているが、世界がワンワールド化していく中で、グローバルで販売していくには特定地域からのニーズにも応えつつ、より多くのエリアのニーズに応える必要がある時代になってきている。

そうした背景もあるのだろう、フラッグシップモデルのグランドチェロキーLは大きく変貌を遂げていた。10年ぶりのフルモデルチェンジで4代目へと進化した新型は、欧州のプレミアムモデルを視野に入れた、高級で所有欲を満たすような魅力あるモデルになっていたのだ。それは、ジープ本来の4WDの走破力はそのままに、オンロードでの振る舞いをより上質にしてきていたのだ。

欧州風にいえばEセグメントサイズで、北米ならフルサイズSUVの大きさ。全長5200mm、全幅1980mm、全高1815mm、ホイールベースが3090mmというビッグサイズ。プレミアムモデルのレンジローバー、メルセデス・ベンツGLS、BMW X7、アウディQ8が似たようなサイズになる。そしてアメリカンラグジュアリーのキャデラックXT6も狙ってのポジションチェンジをしてきたわけだ。

欧州ブランドからは200万円~500万円ほどの価格差ながら、本気の投入だと想像する。ブランド力先行のユーザーには厳しいかもしれないが、フルサイズのSUVが欲しいというユーザーなら、かなり高い訴求力があるのは間違いない。

グレード展開は2モデル。標準車の「リミテッド」と上級の「サミット リザーブ」で、いずれも3列シートが特徴。リミテッドは2列目がベンチシートタイプで7人乗り、サミット リザーブはキャプテンシート仕様で6人乗りになっている。

搭載されるパワートレインは両グレード共通でV6型3.6Lペンタスターガソリンエンジンで、286ps/344Nmに8速ATが搭載されている4WDだ。キャデラックがプレミアムガソリンなのに対し、グランドチェロキーはレギュラーガソリンを使用している違いがある。燃費はWLTCで7.7km/Lとなっている。

グレードの違いは乗員定数の他は装備の違いで価格はリミテッドが788万円、サミットリザーブが999万円。キャデラックよりも高価格帯になっているあたりからもチャレンジングなフルモデルチェンジであることがわかる。

V6型3.6Lペンタスターガソリンエンジンはレギュラーガソリン仕様だ

広いキャビン

ザ・モーターウィークリーDJの山下麗奈さん。3列目の広さがわかるだろう

さて、試乗してみるとまずドアを開けた時の広々とした空間に驚く。3列目の大きさはさすがアメリカ。180cmの大人2名が問題なく利用できる広さがある実用的な3列シートだ。そしてサミット リザーブはキャプテンシート仕様で豪華。まさにアメリカン ラグジュアリー仕様になっている。

運転席は水平基調で広がりを感じるデザインでセンターには10.1インチの大型モニター、随所に使われるピアノブラック、天然木を使ったダッシュボードやドアトリム、そしてハンドメイドの高級パレルモレザーシート(キルト風)などフラッグシップモデルに相応しいインテリアデザインだ。

SUVらしく水平基調のインテリアでまとめ、高級感の作りもしっかりしている

さらにフロントシートにはマッサージ機能を備え、室内のゾーンごとに温度、風量が調整できるクライメートコントロールを装備している。そしてサミット リザーブには自動車業界初となるマッキントッシュのオーディオサウンドシステムを搭載している。17チェンネルのパワーアンプ、950ワットの出力があり、19個のスピーカーとサブウーハーから奏でられるのだ。

後席への乗り込みにはドアが64度まで開き、2列目のシートは180mmスライドするので、乗降性への配慮がある。そして3列目は電動格納式なので荷室スペースへの変更も簡単だ。ちなみに、3列目を格納すると1330Lのスペースになり、2列目も倒すと2400Lもの巨大なスペースになる。

アメリカンからの脱皮

走りだすと「アメ車」感はまったくない。ありがちな、ゆったりとした動きやフワッとした乗り心地といった表現でアメリカンラグジュアリーを語ることがあるが、グランドチェロキーLは、剛性感の高いボディとしっかりとしたサスペンション、手応えのある操舵フィールで、グローバルモデルを意識しての開発を行なったことを感じる。

パワーは申し分なく2トンを超える重量をいとも簡単に加速させ、その割には静粛性の高さも維持しているあたりも従来とは異なるポイントだろう。NAエンジンの素直さとイメージ通りの加速、滑らかなシフトチェンジなど期待を裏切らない。シフトレバーはジープ初のロータリー式のシフターを装備した。このシフターには触覚フィードバックが内蔵され、ギヤが入ると指先に感覚的に伝わってくるのだ。

なかなか見かけないナイトビジョンの装備

もうひとつ装備でアメリカ的なものとしてナイトビジョンの装備がある。サーモグラフィーを使って200m先の人や動物を赤外線センサーが検知し、瞬時にメータークラスターに表示しドライバーへ警告する。「荒野」が日常的に存在するアメリカらしい装備だと感じるものだ。

サミット リザーブにはエアサスペンションが装備されている。クォドラリフト エアサスペンションという名称で、電子制御アダプティブダンパーと組み合わされている。路面状況に応じて自動で減衰調整をしつつ5段階で車高の調整もしている。

ノーマルの車高は最低地上高が212mmでこれを基準にしてオフロードは40mm上がり251mmになる。さらに60mmまで上げることができクラス最高の276mmまで上昇する。一方、ハイスピードの高速走行では車高が自動でノーマルから21mmダウンする。これはスポーツモードを選択すると自動で車速により車高あ上下する。そして高級車らしいのがパークモードで、ノーマルから46mm車高がさがり乗降性を容易にしてくれるのだ。

Pモードへシフトすると自動で車高が下がる。じつはこれを知らなかったため、実体験できなかったのだが、日本人はPに入れるとすぐにドアを開ける習性があるためドアが開くとエアサスは稼働を止める。そのため車高が下がっている途中であることに気づかなかったのだ。高級車オーナーのように、Pに入れたらすぐにドアを開けず、身支度を整えると乗降しやすい高さに調整してくれているというわけだ。

本格4WD性能はそのままに

さてジープの本質のひとつでもある4WDだが、今回都内の一般道、首都高速での試乗だったため4WDを試すことはなかったが、じつはフロントアクスルを走行中に自動でフリーする機能を搭載しているのだ。これは自動で走行状況から4WDの必要がないと判定されると2WD=FR駆動で走行するのだ。そして4WDが必要な状況になると自動で4WDに切り替わるディスコネクト機能をもっている。

ちなみに4WDのセレクテレインは4WDのトルクスプリット、ブレーキ、操舵角、連続可変ダンパー、アクセル開度などのデータを統合制御しており、Auto、Sport、Rock、Snow、Mud/Sandの5つのモードが設定できる。

こうしてポジションチェンジをしたフラッグシップモデルのグランドチェロキーLはデトロイトの工場で生産される。FCAとPSAグループが合体したステランティスは16億ドルを投資して、デトロイトの工場を改装している。もちろん、この先の電動化を見据えていることは言うまでもないが、組み立て精度を高める設備も導入しており、今後は、より質の高いモデル投入が行なわれるというわけだ。<レポート:高橋アキラ / Takahashi Akira>

今回の記事は、 FMヨコハマの番組「THE MOTOR WEEKLY」でもピックアップ。

radikoでも 2月26日まで お聴きいただけます。
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