ジャガーが50年ぶりに発売したと話題になっているFタイプクーペ/コンバーチブルに試乗ができ、「ピュアスポーツ」な乗り味をレポートする。
◆概要
日本には2013年夏にジャガーFタイプコンバーチブルが導入され、2014年6月にクーペモデルも販売が開始されている。今回の試乗はそのコンバーチブルとクーペ両方に試乗することができた。
ジャガーFタイプはEタイプ以来の50年振りにピュアスポーツカーが発売された、ということで話題だが、それともうひとつ、ライバルに対し価格の「安さ」も魅力の一つではないだろうか。ジャガー・ランドローバー・ジャパンの資料によれば、ポルシェ911、アウディR8、アストンマーティンV8ヴァンテージらと比較し、エントリーモデルの安さとそのスポーツ性の高さに自信を見せるものだった。
モデルラインアップはコンバーチブルには標準車のFタイプ、FタイプS、FタイプRの3グレード。クーペも同様のグレードで3タイプある。エントリーモデルとなるFタイプはクーペが823万円、コンバーチブルが977万円、トップグレードのFタイプRクーペ/コンバーチブルともに1286万円(8%消費税込の価格)となっている。
スペックでは標準車のFタイプには3.0LのV型6気筒スーパーチャージドエンジンにZF製8速ATを搭載。340ps/450Nmの出力で0-100km/h加速は5.3秒、最高速260km/h。中間グレードのFタイプSには、同じく3.0LのV型6気筒SCエンジン+8速ATで380ps/460Nm、0-100km/hが4.9秒、最高速275km/hというスペック。トップグレードのFタイプRではクーペとコンバーチブルで最大出力が異なっている。
パワーユニットはともにV8型5.0Lにスーパーチャージャー+8速ATを搭載しているが、コンバーチブルのFタイプRは495ps/625Nmの出力で0-100km/hは4.3秒、最高速は300km/hとなっている。そしてFタイプRクーペにはさらにパワーを出し、550ps/680Nmのスペックを誇る。0-100km/hは4.2秒、最高速は300km/hだ。ディメンションは全長4470mm×全幅1925mm×全高1310mm(クーペは1315mm)、ホイールベースは2620mmとなっている。
◆インプレッション
最初に試乗したのはクーペのタイプS。380ps/460Nmというスペックで、スポーツカーらしい固めの乗り心地を感じながらゆっくり走る。固いとはいっても尖った入力ではなく、エッジを丸めた固さなので不快ではない。
日常的な速度で走ると、エンジンの音も走行ノイズもとても静かで、ピュアスポーツとはいえプレミアムモデルのスポーツカーであることを再認識させられる。一般の車両の流れに乗って走れば、大人な雰囲気を十分に感じさせる優雅さと上品さを持っている。
シフトレバー横のスイッチでダイナミックモードを選択すると、エンジンレスポンスも変わりサウンドも聞こえるようになるアクティブエグゾーストシステムが作動し、走りを痛快に演出する。エグゾーストパイプはセンターに配されたツインタイプだ。
インテリアはもちろん、上質なレザーで覆われ高級感たっぷり。比較的張りのあるレザーを多用しておりスポーツカーに相応しい、しっかりしたシートの座り心地をしている。エンジンサウンドを楽しんだあとは、クールダウンをすれば一気にラグジュアリーさを取り戻し、クルージングも気持ち良くなる。
タイプRに乗り換えるとタイプSで得た満足感を簡単に上書きすることになる。ステアリングが太くなり、やる気をドライバーだけに感じさせる演出も素敵だ。エンジンはV8型で5.0L、550ps/680Nmという強烈なスペックを味わうことになる。だが、タイプSと同様にゆっくり走ると獰猛さは微塵もなく、大人な上質感があり助手席との密接な空間を得ることができるのだ。
ダイナミックモードに切り替えると、まさに野生が目覚めるかのごとく変貌する。エンジンサウンドもV8型ならではの野太い音、そしてダウンシフトでのブリッピングしながらのバックファイヤーなど、たまらない演出が気分を高揚させる。ステアリング、サスペンション、エンジンレスポンス、ギヤシフトマネージメントが変更され、まさに戦闘モードに突中する。
さらに気づけば20インチを履くタイプRだが、その乗り心地は素晴らしく減衰力可変式の電子制御ダンパーはコーナリングパフォーマンスだけでなく、乗り心地という点でも最適化されているのを実感する。ちなみにタイヤサイズは標準車が18インチ、タイプSが19インチ、タイプRが20インチとなっている。
550psともなればとても使いきれるパワー領域ではないが、この後に試乗したコンバーチブルのタイプRは495psで、その違いはハッキリと感じられるのだ。通常500ps前後のエボリューションモデルなどではその差は感じにくいものだが、Fタイプはそのコントローラブルなスポーティさゆえに、パワーの差をこの領域でもドライバーに感じさせることができる。フルパワー時でも余裕が持てるからこそ、満喫できるわけで、その余裕が持てる秘訣は、やはり基本のパッケージのレベルの高さで、中でも幅広のトレッドというのはポイントだろう。そしてFRなのに50:50の重量バランスと走るときに生じる旋回G、ロール、上下のダンピングなどのバランスがよく、さらに先進の電子デバイス制御がサポートしているということなのだろう。腕に自信のある方なら、もっと微妙な違いまで感じ取ることができるのではないだろうか。それほど意のままに操作できるモデルなのだ。
そして、FタイプRのコンバーチブルにも試乗できた。ルーフがない分ボディ剛性の点でクーペには及ばないという説明があったが、その違いを感じる場面は少ない。スポーティドライブを快適に楽しむうえで何も不満はない。むしろオープンの快適さやサウンドの楽しみも増え、好みに合わせてチョイスすればいい。
こうして3つのモデルを試乗し終えると、どのタイプのモデルでもここまでクルマとの一体感をつくりあげているのは見事だ。ライバルにポルシェ911の名前を挙げる理由が理解できる。RRとFRでその特性の違いはあるが、ジャガーの造るFRスポーツの世界に引き込まれるのは間違いない。
ジャガーFタイプクーペ価格