【ピュアスポーツカー】ジャガーFタイプ クーペ&コンバーチブル ポジショニングとハードウェア

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ジャガーFタイプのコバーチブル(左)とクーペ

ジャガーFタイプのコンバーチブルは、2013年夏に国内デビュー。そしてクーペモデルが2014年6月に国内販売が開始された。その両方のモデルに試乗できる機会があり、改めてFタイプの車両概要をまとめてみた。

ジャガーFタイプは、2010年のコンセプトモデルCX-16を経て2012年パリショーで市販モデルがワールドプレミアされたモデルだ。

◆ポジショニング
このジャガーFタイプのデザインは、3大自動車デザイナーとも言われるうちのひとり、イアン・カラム氏。ちなみに、他の2人はフォルクスワーゲンのワルター・ダ・シルヴァ氏とアウディから韓国KIAにヘッドハンティングされているピーター・シュライヤー氏だ。

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Fタイプのデザインは当初ミッドシップ案もあったという。しかしジャガーサイドの拘りでFRタイプとなり、そのためかリヤビューのデザインを俯瞰からみると、ミッドシップデザインのモデルだとも見える。それほどリヤビューのデザインは特徴的であり、個性的でもある。

Fタイプリヤビュー

 

そしてV8型エンジンを搭載することを前提にデザインもされているという。それはディメンションに、特に全幅を広くすることでビッグパワーを使いきるコーナリングへと導くディメンションだという。もし仮に4気筒を搭載しても全長が短くなることはあっても全幅は変更されない、という説明もあった。そのディメンションは全長4470mm×全幅1925mm×全高1310mm(クーペは1315mm)、ホイールベースは2620mmとなっている。

さて、ジャガーが、このピュアスポーツモデルを登場させた狙いだが、ジャガーといえば英国紳士でおとなしく控え目という印象があるが、そこへ新たなブランド構築として、エッジの効いたモデルをリリースし確固たるスポーツカーとしての信頼を築きたいと説明している。

こうしたイメージチェンジを狙う背景には、ジャガーはイギリスのコーチビルダーとして創業しているが、Dタイプで代表されるようにル・マン24時間レースでも優勝するなどのスポーツカーの歴史がある。グループC時代のシルクカット・ジャガーの姿も思い出す。さらにEタイプのようにピュアスポーツカーを発売していた実績もある中で、その後のラインアップが理由でサルーンメーカーの印象が根強くなってきているということがあるのだろう。

これまでスポーツカーのラインアップとしてはXKをそのポジションに置いていたが、2+2のレイアウトであるようにGTカーというポジションのほうがしっくりくる。Fタイプの登場により他モデルのポジショニングも明確になったとも言えるわけだ。

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Fタイプのターゲットカスタマーは、これまでジャガーに興味のなかった人、アグレッシブに人生を生きている人、そして進歩的で自由な志向性で性能重視な人を挙げている。イメージはブリティッシュ・ビラン。Villainは悪、悪役という意味で、英国では知的でずる賢く、憧れの対象となるようなことに対して使う言葉らしい。そして、特徴的なスタイリング、パフォーマンス、意のままに操れるハンドリングに心ひかれ、大のクルマ好きでクルマについてよく知っている人がターゲットだという。

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ライバルではポルシェ911、アウディR8、アストンマーティンV8ヴァンテージなどの名前が挙げられているが、Fタイプは価格を抑えながら、高いスポーツ性能を持つという明確なポジションで勝負している。

モデルラインアップはコンバーチブルには標準車のFタイプ、FタイプS、FタイプRの3グレード。クーペも同様のグレードで3タイプある。エントリーモデルとなるFタイプはクーペが823万円、コンバーチブルが977万円、トップグレードのFタイプRクーペ/コンバーチブルともに1286万円(*8%消費税込の価格)となっている。

スペックでは標準車のFタイプには3.0LのV型6気筒スーパーチャージドエンジンにZF製8速ATを搭載。340ps/450Nmの出力で0-100km/h加速は5.3秒、最高速260km/h、車両重量は1730kg。中間グレードのFタイプSには、同じく3.0LのV型6気筒SCエンジン+8速ATで380ps/460Nm、0-100km/hが4.9秒、最高速275km/hというスペック。トップグレードのFタイプRではクーペとコンバーチブルで最大出力が異なっている。パワーユニットはともにV8型5.0Lにスーパーチャージャー+8速ATを搭載しているが、コンバーチブルのFタイプRは495ps/625Nmの出力で0-100km/hは4.3秒、最高速は300km/hとなっている。そしてFタイプRクーペにはさらにパワーを出し、550ps/680Nmのスペックを誇る。0-100km/hは4.2秒、最高速は300km/hだ。車両重量はともに1810kg、ディメンションは全長4470mm×全幅1925mm×全高1310mm(クーペは1315mm)、ホイールベースは2620mmとなっている。

◆ダイナミクス
アルミボディの経験は長く、今回で第4世代となりノウハウの蓄積が活かせている。たとえば、今回のボディでは3つの異なる加工方法を採用している。つまり、プレス成型、高圧鋳造、強い負荷のかかる箇所には押し出し材パーツを採用するなど適所に使い分けるというノウハウがある。また、接合ではSPR(セルフピアスリベット)止めと接着剤を使用し、リベットは2500か所以下まで削減できているという。もちろん軽量化するためだ。さらに50%がリサイクル素材を使用しているという点も効率的と言える。

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XKを基準とした場合、フロントまわりで+30%の剛性がアップ。ダイナミックなキャラクターとするには必須要件となるサスペンション自体や取り付け剛性のアップなどの課題もクリアしている。FタイプクーペにはBピラーが無いため、ボディ剛性はより精緻な設計が求められる。したがってFタイプのコンバーチブルに対して80%のねじれ剛性をアップしており、その数値は3万3000Nmで一昔前のF1マシンと同等のねじれ剛性を確保しているという。ちなみに現在のF1マシンは5万5000Nm以上のねじれ剛性と言われている。

ヴィークルダイナミックスとしてドライバーとの一体感を大事に開発している。そのひとつとしてFRへの拘りと同時に50:50への重量配分への拘りもある。ドラポジは車両のセンターより後方になるようにレイアウトされ、また重量物はホイールベースの内側にあるように考えられている。たとえばブレーキキャリパーは、フロントブレーキはリヤ側にくるように、リヤはフロント側にくるように取り付けされているのもその一例だ。

クーペのデザインではEタイプをオマージュとしているため、現代の空力ではリヤの揚力を補う必要があるという。そのため、60mph(約96km/h)以上で自動で稼働する可動式のスポイラーを装備する。これにより、120kg分のダウンフォースを得ることができるという。

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ジャガーFタイプ・クーペのインテリア

また、電動パワーステアリングが主流になりつつある現在、あえて油圧式を採用している。ステアリングギヤ比は14.6:1とクイックな設定だ。ジャガーの電動パワーステアリングは他モデルでみる限りダイレクト感が乏しく、操舵感がスポーティという方向ではないための判断だと想像する。もちろん油圧であれば長い歴史に裏打ちされたノウハウがあり、ダイレクト感のあるステアフィールは得られている。

駆動系ではタイプSに機械式のLSDを採用。タイプRには電子制御式のアクティブデファレンシャルが装備され、ダイナミックスタビリティコントロール(DSC)と統合制御されている。デフは解放からフルロックまで0.2秒以下で作動し、DSCは高感度センサーが常にクルマの動きをモニターし、必要に応じてエンジン出力、ブレーキシステムの介入、トラクションのコントロールが行なわれ、トルクベクタリングbyブレーキと統合制御され左右の駆動輪もコントロールされる。

サスペンションでは、標準車にスポーツサスペンションが、そしてタイプSとタイプRにはアダプティブダイナミクス付きスポーツサスペンションが装備される。ドライバーからのインプットと垂直方向の動き、ロール、ピッチレートを走行中常にモニターし1秒間に最大500回ダンパー減衰を調整する。

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さらにシフトレバー横にあるダイナミックモードへの切り替えを行なうと、硬めのダンピングレート、重めのステアリング、より速いギヤシフト、よりシャープなスロットルレスポンスへと変化し、アクティブなドライブが楽しめるデバイスを装備している。ちなみにトランスミッションはZF製8HPのATで、全速ロックアップ機構付きとなっている。また、ドライバーの好みでセッティングできるコンフィギュラルダイナミクスも装備している。

ブレーキローターは標準車がフロント354mm、リヤが325mmで、タイプS、タイプRはともにフロント380mm、リヤ376mmを装備する。さらにSとRグレードではセラミックのブレーキも装着が可能で、ばね下重量で20kg軽量できる。キャリパーサイズもフロントが398mm、リヤ380mmへとサイズアップする。

エンジンはこれまでのジャガーのラインアップに採用されているエンジンと同じだが、V6型に340ps仕様と380ps仕様があるのはFタイプだけである。タイプRに搭載するV8型5.0Lエンジンはオールアルミエンジンで、クランクのメインベアリングキャップをクロス留めにし補強、剛性をアップしている。アルミヘッドでは、スプレーガイデッド式燃料噴射の直噴エンジンで独立デュアル可変カムタイミングを採用している。スーパーチャージャーは、ルーツ式ツインボルテックスSCに2基のインタークーラーを装備する。CO2排出量は259g/km。

エキゾーストではV6型にはツインテールパイプをセンターにレイアウトし、V8型ではデュアルパイプを左右に配したクワッドエキゾーストとしている。タイプS、タイプRにはアクティブエグゾーストシステムを装備し、サイレンサー内部の排気ルートを変化させることで、排気サウンドを変化させている。

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V6型エンジン搭載車のデュアルエキゾースト

こうした基本的なパッケージングのレベルを高めることで、ドライバーのとの一体感を造りだし、FUNなドライブが楽しめるスポーツカーを誕生させている。そして最先端の電子デバイスのサポートにより、より安心感の高い、そして高次元の走りのを実現したモデルと言えるだろう。

ジャガーFタイプクーペ主要諸元

ジャガーFタイプクーペ価格

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ジャガー公式サイト

COTY
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