2013年5月24日、ジャガー・ランドローバー・ジャパンは、2シーター・コンバーチブル・スポーツカーの新型車「Fタイプ」を発表し、同日から発売を開始した。新型Fタイプは、2011年9月のフランクフルトショーではコンセプトモデル「C-X16」として紹介され、2012年9月のパリショーで「Fタイプ」としてワールドプレミアを果たした。生産は2013年初頭から立ち上げられており、日本への導入はかなり早いタイミングで実現している。
ジャガーの2シーターピュア・スポーツカーは、ル・マン24時間レースを目的としたレーシングカーのCタイプ(1951年〜1953年・製造は54台)、Dタイプ(1954年〜1957年・製造は68台)が起源となっている。そして1961年に登場した2シーター・スポーツクーペとコンバーチブルのEタイプは、純粋なロードカーであったが、レーシングカーを受け継ぐネーミングとされ、世界の主要なマーケットで高性能・高級スポーツカーとして好評を博した。このEタイプは1975年に製造が終わり、それ以後ジャガーには2シーター・スポーツカーがラインアップされることはなかった。
今回登場したFタイプは、Eタイプ以来38年振りの2シータースポーツカーの復活であり、ジャガーブランドのポジションを一段と高める役割が与えられている。
新型Fタイプはオール・アルミニウム構造が採用され、前後荷重配分50:50とした後輪駆動方式のスポーツカーだ。ボディサイズは全長4470mm、全幅1925mm、全高1310mm、ホイールベース2620mmと、フルサイズ・スポーツカーとしては全長は短く、よりワイドなプロポーションとしている。車両重量はメルセデスSLSなどとほぼ同等の1810kg(V8 S)で、ポルシェ911カレラSよりは300kg重い。
Fタイプのエクステリアは、EタイプのDNAを受け次ぐ証明としてリヤ下がりのテールデザインとする一方で、フロントマスクは鮫のようにアグレッシブに、サイドビューはシンプルかつクラシックなフォルムでまとめている。また、ディテールに対するこだわりの象徴としてリトラクタブル式のドアハンドルや約100km/hで競り上がるリヤスポイラーなども備えている。
インテリアは、ドライバーオリエンテッドのコックピットで、運転席と助手席は、明確に区別されている。またシフト・セレクターは他のジャガーモデルのようなダイヤル式ではなくレバー式のスポーツシフト・セレクターとパドルスイッチを装備している。また、インテリアのトリムは、細部までハンドメイドの味わいを表現したラグジュアリーな仕上がりだ。
新型Fタイプのプラットフォーム、アッパーボディともにオール・アルミニウム製モノコックボディで、軽量化と高剛性なボディを両立。。この軽量オール・アルミニウム・アーキテクチャーは、ジャガーとして第4世代にあたる。EU規格のAC300アルミニウム材の中で衝撃吸収性に優れた6000番系アルミ合金がFタイプ向けに特別に製錬され、既存のアルミ製プラットフォームと同レベルの強度を維持する一方で、大幅な軽量化を実現。ホワイトボディ重量は261kgとなっている。
アルミ材の結合には溶接ではなくSPR(セルフピアッシングリベット)と構造用接着剤が採用されている。こうした技術は航空機用技術の応用で、Fタイプの生産ペースに合致しているといえる。またクラムシェル・タイプのボンネットなどは、1000トンプレス機を使って一体成型されている。
新型FタイプのエンジンはEUでは自然吸気3.0LのV6型、V6型+スーパーチャージャー、5.0L・V8型スーパーチャージャーがラインアップされるが、日本にはV6型スーパーチャージャーとV8型スーパーチャージャーの2機種が導入される。
V6型エンジン(AJ126)はフォード・デュラテック系列の改良版で、340ps/450Nmを発生する。一方、ジャガー、フォードの共同開発によるスリーブレスの5.0 LのV8型スーパーチャージャー付きは495ps/625Nm。いずれも可変バルブタイミング機構、直噴システムを採用する。
V8型モデルには、マフラーにアクティブエグゾースト・システムが装備さ、電子制御式のバイパス・バルブを使用することで、急加速時には排気ガスはストレートに流れ、スポーツカーらしい豪快なサウンドを吐き出す。
トランスミッションは「クイックシフト」と呼ばれるZF製の8速ATを採用。このATはアダプティブ制御により運転モードに合わせて変速プログラムを自在に変化させることができる。
サスペンションは前後とも鋳造アルミニウム製のリンクによって構成された、ダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用。FタイプV8型 スーパーチャージャーは、アダプティブ・ダンピングシステムを装備し、4輪独立可変ダンピングを行なうことができる。また、エンジン出力、トランスミッションの変速プログラム、ダンパーの減衰力、ステアリングの操舵力などを統合制御するコンフィギュラブルダイナミックモードスイッチも備えている。
ブレーキは、3.0Lの標準モデルは前輪354mm、後輪325mmのディスクとシルバーのキャリパーを装備。V8 型スーパーチャージャーモデルは、ジャガーの市販モデルで最大径となる前輪380mm、後輪376mmのディスクを備え、黒または赤のキャリパーが組み合わされる。また、電子制御アクティブ・デファレンシャル・コントロールが標準装備される。これは、電気モーターによる油圧で多板クラッチを作動させるシステムだ。