【GM】新型キャデラックCTS試乗記 キラッとしたドラマチックな存在感を持つプレミアムサルーン レポート:髙橋 明

マニアック評価vol264

キャデラックCTS
2014年4月12日発売のキャデラックCTS。ボディサイズはEセグメントへ拡大された

2013年12月に発表された新型キャデラックCTSに、ようやく試乗することができた。発売は2014年4月12日からとなっている。

◆ポジショニング

新型キャデラックCTSは、これまでD/Eセグメントサイズのモデルだったが、今回のフルモデルチェンジでサイズを大きくしEセグメントへと変化している。全長4970㎜×全幅1840㎜×全高1465㎜、ホイールベース2910㎜で、先代のCTSより全長で100㎜長くなっている。またルーフラインやエンジンフードライン、ウインドシールド基部は約25㎜低くなり、全体的な印象はロングノーズを受ける。

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ライバルとなるのはずばり、ドイツプレミアム御三家でメルセデス・ベンツのEクラス、BMW5シリーズ、アウディA6がターゲットというポジションのモデルだ。したがって、いかにキャデラックのオリジナリティを強調しながらライバルにはない魅力を持っているのかというのがポイントになるだろう。

キャデラックブランドは1902年にスタートする112年にも及ぶ歴史あるラグジュアリーブランドであり、歴史という観点ではドイツプレミアム御三家に引けを取らないどころか勝っている部分もある。アメリカを代表する高級車ブランドとして存在し、大統領御用達ブランドのひとつとして名を連ねる。また自動車業界初のV8型エンジンの搭載や初のエアバック装備、初のオートエアコン採用など技術面からもクルマ業界に影響を与えた歴史も持っている。

キャデラックCTS
歴史あるキャデラックブランド

 

◆デザイン
エクステリアデザインはキャデラックらしい洗練されたデザインで、デザインテーマは「より低く、より長く、よりスリムに」という目標を掲げデザインしている。ルーフラインでは先代と比較して19㎜低くされ、エンジンフードで30㎜、全長では前述のように100㎜延長している。その結果FRらしい動的でスポーティな印象のデザインと言えるだろう。また精巧なデザインの一面としては、スカルプチャーな彫刻的デザインで立体感がありエモーショナルなエクステリアという印象だ。ちなみに、キャデラックでは1927年にエンジニアではなくスタイリストを専属で雇い、業界初のデザインスタッフの手によるモデル、キャデラック・ラサールを発売している。

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インテリアも高級ラグジュアリーモデルに相応しい質感と高級感を持っている。とくに材料ではリアルカーボン、リアルメタル、リアルレザーをふんだんに使用し、人の手による細かな職人技を投入している。とくにダッシュボード、センターコンソールまわり、シートには力を入れているという。

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本物のカーボンやレザーのリアル感がキャデラックらしい高級感を演出するインテリア

そして何よりもその静粛性には注目だ。高級車には、それに相応しい静粛性は必須であり、さまざまな工夫と技術が投入されている。吸音、遮音はもちろんだが、吸音フィルムを挟み込んだフロントウインドウ、フロントサイドウインドウの採用はガラス越しに侵入する雑音を遮断する。またオーディオのBOSEを搭載し、13スピーカーによるサラウンドシステムだけでなく、不快なノイズを消すアクティブ・ノイズ・キャンセラーとしても機能し、これがいい仕事をしている。車内に配置した3つのマイクから音を拾い、スピーカーから逆位相の音波を発して音を打ち消すという方法で快適な走行音になっている。

◆エンジン
搭載するエンジンは2.0L+ターボで4気筒の直噴ガソリンエンジンを採用している。もちろん本国アメリカではV6型3.6LツインターボやNAの3.6Lもあるが、国内導入はこのダウンサイジングエンジンのみになる。しかしながら276ps/400Nmというスペックを持ち、先代より7%軽量化されたボディには十分なパワースペックといえる。もっとも最近ではこうした大型のプレミアムサルーンでのダウンサイジングは、環境リテラシーという意識の高さであり、知る者にはインテリジェンスを与える。

組み合わされるミッションは6速ATで、パドルシフトを装備している。米国EPA燃費ではCityモードで8.5km/L、Highwayモードで12.8km/Lという数値になっている。V6型エンジンには8速ATが搭載されているが、この2.0Lターボにも8速を搭載すれば、さらに燃費は良くなったと思われる。

◆サスペンション
新型CTSは弟分のATSで採用しているダブルピボットレイアウトのフロントサスペンションになっている。レイアウトはマクファーソン・ストラット式でBMWが採用しているダブルピボットとすることで、仮想キングピン軸のセンターをホイールセンターにもってくることが可能となり、より正確なハンドリングに寄与する。

リヤは5リンクのマルチリンクでダンパーはエレガンスグレードには磁性流体体のマグネティック・ライドコントロールを採用している。磁性流体を封入した電子制御式ダンパーで、磁力が発生すると鉄粒子は瞬時に方向性をもち、それが抵抗となって減衰力を生み出す。必要とされる減衰力は磁性の強さによって瞬時にコントロールされ、適切な減衰力が得られるというものだ。

ステアリングはZFレンクシステム社の第3世代EPSapaを採用し、可変アシスト量制御タイプとなっている。速度感応式で優れたレスポンスとダイレクト感を得られると好評のシステムでBMWやジャガーなど多くのプレミアムモデルに採用されているものだ。

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静粛性の高いキャデラックCTSはリアシートも快適

◆ボディ
キャデラックとしては初のアルミ材の前後ドアを採用し、軽量化に貢献している。また高剛性なボディとするためにハイテン材をはじめ軽量素材の使用により1680kgというクラス最軽量を達成している。アルミのドアは1枚あたりスチールと比較し、7.5kgも軽く、ボンネットにもアルミ材を採用している。またマグネシウムや焼付硬化性鋼板、超高張力鋼板なども使用し高剛性化している。さらに構造材用の接着剤は118mもの距離に及び、剛性を高めつつ軽量化にも好影響となる方法も取り入れている。

◆インプレッション
乗り込むとその高級感あふれるインテリアに目がいく。そしてデザインにも目を奪われる。V字をモチーフにしたデザインやピアノブラックのパネル、本物のメタルの質感、触感、レザーシートの座り心地などどれも高級車に相応しいインテリアだ。試乗したエレガンスはメーターパネルが液晶化され多くの情報が表示されると同時にフルカラーのヘッドアップディスプレーも装備し、視認性が高い。

走り出すと軽い操舵感のステアリングと静かな室内がより高級車を感じさせる。ステアリングは速度感応式なので、速度に比例して重くなりしっかりした手応えに変わっていく。高速道路での直進の座りも程よく安心感がある。特に微小舵角のときに動きすぎないのがいい。最近の欧州車の傾向として俊敏さを追求するあまり直進時からの小舵角でも機敏に反応するモデルが増えている。長距離を運転することを考えれば、俊敏すぎるのも疲れる原因であり、このキャデラックCTSはちょうどいい感じだと思う。

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ピアノブラックやメタルの質感が実に高級車らしい

ワインディングでは正確なハンドリングと俊敏な動きが楽しい。大きなボディであるが軽快に回頭し続け、FRの安心感なのか滑らかで安定したコーナリングをする。サスペンションは前述のマグネティック・ライドコントロール付きで、適度なロールから動きだし、接地感を得ながらコーナーを抜けていく。

エンジンのレスポンスもよくパワー不足だと感じることはない。またドライブモードコントロールでTourからSportに切り替えるとさらにパワーアップした錯覚を覚える。馬力/トルクの絶対値は変わらないのだが、明らかにパワーアップしたフィールの演出は好ましい。またパドルシフトを使いスポーティに走ることも楽しい。BOSEのサウンドシステムのためかエンジン音も心地よく、また静粛性も維持しながらエンジンサウンドを楽しめるのはいい。

このキャデラックCTSをかつてのアメ車をイメージしていたら大間違いだ。ドイツプレミアムモデルをライバルとするだけに、間違いなく走行性能ではかつてのアメ車路線ではなく、ドイツ車のベクトルに乗っている。また、デザインではキャデラックのオリジナリティとセンスが発揮され、ドイツ車風のイメージとは全く異なる。静粛性、乗り心地は甲乙付けがたいほど拮抗した性能だと思う。そして静粛性ではナンバー1といっていいと思う。さらにブランド力という点でも、ベンツ、BMWに負けないブランドであり、キラッと光る存在であることは間違いない。

■キャデラックCTS主要諸元

■キャデラックCTS価格表

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キャデラック公式サイト

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