マニアック評価vol138
シボレーソニックは2011年11月に国内導入された後、カスタマイズされたモデルの追加やバリエーションモデルの追加などもあり、ちょっと気になる存在である。今回試乗したのは2012年5月にモデル追加された「スポーツライン」でメーカーがカスタマイズしたモデルだ。
シボレーソニックのキャッチコピーはワイルド・コンパクトである。デビュー直後の2012年、カスタムカーの一大イベントである「東京オートサロン」や「名古屋オートトレンド」に出展し、来場者からの意見を集めフィードバックしたモデルとして、新たな上級モデルのシボレーソニック スポーツラインをモデルラインアップに追加したという経緯がある。さらに、7月にはカスタマイズブランドのIROCとコラボレートし、マイカスタマイズソニックを立ち上げ、自分だけのオリジナルなソニックを訴求するPRもしている。
このようにソニックはメーカー自らカスタマイズする楽しさやオリジナリティの追及などをしているモデルで、アメリカ同様、カスタマイズの素地がある日本でのブレークも狙っているモデルなのだ。
さて、そのスポーツラインというモデルだが、前後バンパーにエアロを装着、サイドにもエアロを巻くフルエアロタイプでアグレッシブさを強調している。タイヤサイズも17インチにインチアップしたり、フォグランプが追加されたりとエクステリア、インテリアにおいて細部にわたりパーツ変更、追加がされて精悍さを出しているモデルだ。価格は標準グレードの189万円、LTの198万円、に対してスポーツラインは229万円となっている。
ソニックはグローバルに展開するモデルで、もともとはGMの子会社・旧GM大宇(現GM Korea)が製造したシボレー・アベオをルーツにもつ。その第2世代となるのがソニックなのだが、販売先によって名称も異なっている。
ソニック名は本国アメリカ、カナダ、メキシコ、日本で使用され、製造国である韓国では社名変更されたGM Koreaよりアベオのままで販売されている。また、オセアニア地域ではホールデン・バリーナというネーミングも使われている。ちなみに、製造は韓国だけでなく、世界7ヵ所もの工場で製造されるモデルである。
国内に導入されるソニックは韓国で製造され、すべて1.6Lのエコテック・エンジンであり、ボディタイプは5ドアHB。アベオ、北米のソニックに設定される4ドアセダンは導入していない。また、エンジンやトランスミッションも豊富で、1.2L、1.4Lターボ、1.8Lなどがあり、5速MT、6MT、6ATとある。しかし、国内には1.6L+6ATだけが輸入される。エンジンは直列4気筒の可変バルブタイミング機構を持ち、115ps/6000rpm、155Nm/4000rpmというスペックだ。
ボディサイズは全長4050mm×全幅1740mm×全高1525mm、ホイールベース2525mmでフィット、ヴィッツ、VWポロよりわずかに大きく、VWゴルフより少し小さいというコンパクトクラスだ。ただ、意外にも3ナンバーで、全高が1525mmとコンパクトカーとして国産コンパクトより高く、ヘッドクリアランスには余裕がある。そして、横幅も広めなサイズのため、乗ってみるとVWゴルフサイズという印象だ。
インテリアは右ハンドル仕様のみで、輸入車としは珍しく右ウインカーで国産と同じ仕様になっている。インパネまわりのデザインも個性的で、オートバイのメーターをモチーフにしたという独特のデザインになっている。
タコメーターはアナログ式だが、速度、燃料、ATポジションはデジタル表示される。特に見づらいということもなく、個性的デザインとして受け入れられるものだ。センターコンソールは上下に機能をセパレートさせ、上部はオーディオ関係で、下が空調関係になっていて分かりやすい。
走り出すと、太目のステアリングとやや重めの操舵感からスポーティな印象を持つ。ワイルドコンパクトなだけにクイックなレスポンスをする。小舵角でも反応し、ダルな印象はまったくない。ひと昔のアメ車イメージとはかけ離れたもので、キビキビと走る。
サスペンションもしっかりしたもので、スポーティな走りに応えてくれる。サスペンションのストローク感もあり、リヤの接地感も伝わってくるので安心して積極的な走りを楽しむことができる。反面、乗り心地という点では、やや硬めの入力であり、段差などではリヤからの突き上げ感があるので、後席での乗り心地はよくない。もっともスポーツラインは標準モデルの195/65R15インチに対し、2サイズアップの17インチ・タイヤ装着という影響がある。
エンジンは1.6LのNAだが、パワー不足を感じることはない。6速ATとの組み合わせと制御がいいのだろう、ゆっくり走るときは素早く高いギヤへとシフトし、静粛性を高めていく。また、シフトレバーのグリップ部サイドにマニュアルシフトのスイッチがあり、一見すると操作しにくそうだが、実際は間違うことなくアップ、ダウンシフトができた。ワインディングでも素早く必要なギヤを選択でき、スポーティに楽しむことができる。
というように、ソニックは輸入車としては200万円を大きく切る189万円(標準車)という格安のモデルであり、メーカーがカスタマイズというサブカルチャーを強く理解していることから、オプションパーツが豊富なことも特筆だ。スポーツラインは40万円アップのモデルになるが、価格差以上のパーツが装着されていることを考えると、バリューの高いグレードと言えるだろう。
また、試乗したモデルに装着される赤いヘッドライトベゼルも試作品ということで、これからもあらたなパーツが追加されてくるというのは、オーナーの楽しみも増えるだろう。そして、ユーザーからのフィードバックによって、あらたなパーツが生み出されるかもしれないのだ。他のクルマとは違った個性的なモデルを探している方は、一度ディーラーへ足を運んでみてはいかがだろうか。
車両本体価格 シボレー ソニック スポーツライン 229万円(税込)