新型フォード・マスタング試乗記 全面改良した6代目マスタング

マニアック評価vol315

フォードマスタング 試乗 011
生誕50年、6代目となったフォード・マスタング

フォード・マスタングがフルモデルチェンジを行ない、6代目となって生まれ変わった。
今回の最大のトピックはマスタングを全世界で販売するグローバルモデルとしたことで、今回試乗したものはその代表グレード、エコブースト2.3Lエンジンを搭載するモデルだ。

◆ポジショニング
フォード・マスタングは日本では販売されているモデルだけに、全世界で販売していないことのほうが、意外かもしれないが、これまで北米を中心にカナダ、メキシコなどで販売され、いわばアメリカのスポーツスペシャリティーカーを象徴するモデルとして存在していた。今回のマスタングは欧州、ロシア、中国などでも販売されるようになり、120カ国で扱われる。その戦略に合わせるように、搭載エンジンが3種類となり、トップグレードがV8型5.0L、V6型3.7L、そして直4気筒2.3Lターボとなった。

フォードマスタング 試乗 010
今回試乗したマスタングは2.3Lエコブーストエンジン搭載車

生産拠点は全世界への出荷モデルすべてアメリカ、ミシガン州のフラットロック工場で生産され、2014年8月から生産開始、同年11月から北米で本格販売が開始されている。欧州向けは2015年中頃の立ち上げで、販売は中盤から後半にかけてになる見込みだという。そして欧州販売(イギリスなど)に合わせてマスタング初の右ハンドルが生産される。日本に導入されるのは欧州スペックの2.3Lエコブーストと、V8型モデルでコンバーチブルとファストバック。もちろんいずれも右ハンドルだ。販売開始は2015年後半から16年にかけてになる予定だという。

もともと欧州でもマスタングのファンは多く、ファンクラブもあり、いわゆる並行輸入などで根強い人気はあるが、今回のモデルからはより幅の広いユーザーの獲得、そしてフォードのワン・フォード戦略も合わせて、マスタングをグローバルなスポーツスペシャルティカーとして位置付けていく戦略なのだろう。

◆コンポーネンツ
このエコブースト・エンジンは直列4気筒で直噴+ツインスクロールターボを搭載し、Ti-VCT吸排気可変バルブタイミング機構を搭載したエンジンだ。314ps/5500rpm、434Nm/3000rpmというダウンサイジングコンセプトで、2.3LでありながらV6型3.7Lエンジンの309ps/38.7kgmを上回るスペックとなっている。そしてアメ車らしく無鉛レギュラーガソリン仕様となっている。トランスミッションは6速ATでパドルシフト付き。

サスペンションはマスタング初の四輪独立懸架となり、リヤをマルチリンク、フロントをストラット式とした。また、EPASと呼ぶセレクタブルパワーステアリングを搭載し、ノーマル、コンフォート、スポーツの3段階の切り替えが可能で、ステアリングの電動アシスト量を可変することができる。

一方、セレクタブルドライビングモードも装備し、こちらはノーマル、スポーツ+、アドバンストラック、スノー&ウエットの4段階に切り替えが可能。モード変化をさせるとEPASも連動してアシスト量が変化し、エンジンレスポンス、ミッションのシフトスケジュール、そしてESPの介入度合いが変化するようになる。

エクステリアはマスタングらしいロングノーズ&ショートデッキのスタイルを維持し、今回は前モデルに対し全高-35mm、全幅+40mmでより一層ワイド&ローなルックスになっている。ボディサイズは全長4790mm×全幅1920mm×全高1380mm、ホイールベース2720mmとなっている。

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インテリアは、航空機のコックピットをイメージしてデザインされている。左右対称のダッシュパネルは両翼をイメージし、スピードメーターには「Ground Speed」と書かれ、飛行機で言う対地速度となっている。また、トグルスイッチを用い、より航空機的な雰囲気を作っている。そして全体的に見て、触っての質感向上には注力した内装で、ブラックで統一されたインテリアにシルバーの加飾も効果的に使われている。

フォードマスタング 試乗 007 フォードマスタング 試乗 008

◆50周年記念モデル
今回試乗できたモデルは欧州仕様のエコブースト搭載モデルだが左ハンドル仕様。マスタング生誕50年を記念した特別限定モデルで国内には50台のみ販売される。国内に導入されるエコブースト搭載モデルは、今後右ハンドルへとシフトするので、レアモデルとなるだろう。

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左ハンドル仕様は国内で限定50台のレアモデル

この限定モデルは左ハンドルという以外にも特別な装備がある。本国アメリカでは、工場オプションとなる「パフォーマンスパッケージ」をこの限定車に標準装備している。ボディ剛性をあげるためのK型ブレースの装着、専用チューニングされたシャシー、ESPの介入度合いを変更するアドバンストラックセッティング、大型ブレーキキャリパー&ローター装着、通常のエコブースト車の3.15ファイナルギヤを3.55に変えて加速性を向上。そして255/40ZR19サイズのピレリタイヤの装着がある。

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初代では給油口だったギャロッピングホースにも50の文字がある

さらに記念アイテムとしてインテリアのネームプレート、ロゴ入りブラックレザーシート、リヤエンブレムがあり、視覚的にも50周年記念モデルであることが分かる。

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シートバックにもギャロッピングホースの下に50周年記念モデルのロゴがある
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兵士の認識番号をイメージしたネームプレートがダッシュボードに付く

◆インプレッション
注目はやはりエンジン。そのフィールは「欧州車的になったなぁ」という印象と「アメ車感をうまく残すものだ」という、相反するような印象だ。というのは、アメ車好き、マスタングファンの視点からすると、やはりV8型から直4ターボになるわけだから、V8型らしさやプッシュロッドの雰囲気がなくなり、滑らかな欧州車エンジンの方向になったという印象を持つことだろう。

一方、欧州のダウンサイジングエンジンでは2.0Lターボを良く知っているユーザーであれば、2.0Lターボは欧州のプレミアムモデルに搭載されていることは周知。たとえばBMW3シリーズやアウディ、ベンツ、ボルボなどで、キャデラックの世界戦略車CTSにも2.0Lターボが搭載されている。マスタングのエコブーストは、これらのエンジンと同じ方向のダウンサイジングエンジンだが、2.3Lとわずかに排気量を大きくしている。もちろんフォード・エクスプローラーには2.0Lエコブースト(FF横置き)を搭載しているので、そのエンジンも持ちながらあえて300cc大きいエンジンを開発している。

その違いなのかどうかは分からないが、他社の2.0Lターボとはフィールが微妙に異なり、少し厚みのあるサウンドを出している。それは限りなく滑らかにしようという他社の2.0Lターボに対して、プッシュロッドを意識しているような感じにも捉えられる。たとえば今、最も滑らかなフィールの2.0LターボはボルボV40や60シリーズに搭載するエンジンだと思うが、そのエンジンと比較すれば、より明確な差を感じるだろう。モーターのように滑らかに回るエンジンと筋肉を持ったエンジンの差とでも言うのだろうか。フォードジャパン広報部によるとジャーナリストの桂伸一さんは『V8型のドコドコドコ…という音はないけど、片バンクだけ使ったドコ…ぐらいは残っているね』と話していたというエピソードを教えてくれた。

パワー、トルクはスペックでわかるようにV6型エンジンを超える出力で、箱根のワインディングでも持てあますほどにパワフルに走る。リヤがマルチリンクになったサスペンションではわずかなアンダーステアなセッティングとしている。スロットルの開閉に連動してクルマをインやアウトに出し入れできる素直さを持ったハンドリングだ。この動きはロングノーズであるから、コントロールしているという充実感、満足感を得られやすいのではないかと思う。

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フロントバンパーダクトからホイールハウスを抜け、ホイール表面で整流する効果をもつエアロホイール

ひとつ気になったのは、砂利の巻き上げ音が室内に入り込むこと。まぁ、レーシングカーや、ピュアスポーツカーにはよくあることだが、プレミアムなスポーツスペシャルティカーとしては聞こえないほうがいいと思う。しかし、以前試乗した現行C7型Z51コルベット(スティングレー)も同様に、砂利の巻き上げ音が車内に入り込むので、意図的な、あるいはアメリカ人の好みなのかもしれない、と思った。

セレクタブルドライブモードを試すと、ノーマルからスポーツ+へ変えると、まずステアフィールが変化する。操舵が重くなり、センターの座りがはっきりする。速度を上げても安心感が高まるわけだ。そしてシフトプログラムはもちろんスポーティな方向に変わるのでより伸びる方向に変わり、エンジンブレーキも効くようになる。

ただし、2速と3速のギヤ比が開いており、軽快にシフトチェンジを繰り返しながら走るというより、ギヤを固定し、スロットルで走るという走り方になる。また、ギヤ比が1.000というスペックがなく、4速は1.14、5速は0.87というデータで、このあたりのギヤ比セッティングへの考え方は開発者に聞いてみたい。ちなみに1速は4.17でファイナルが3.55だからスタートダッシュが凄い!イメージが湧く。また、アドバンストラックはサーキット専用モードと言ってもよく公道では使用する意味はない。デフォルトはノーマルモードになっている。

50周年記念マスタングは、記念アイテムがあり、パフォーマンスパッケージが標準装備されている。そして、左ハンドルで国内50台の限定モデルというレアな価値満載のモデルだ。価格は500万円を大幅に切る465万円(8%税込)という早い者勝ちモデルだ。
<レポート:髙橋アキラ/akira takahashi>

フォード・マスタング主要諸元

フォード公式サイト

フォード関連情報
マスタング車種情報

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