2013年6月18日、フォード・ジャパンは、同社のコンパクトSUV、「クーガ」をフルモデルチェンジし、9月7日から発売を開始すると発表した。この新型「クーガ」は、フォーカスに続き、フォードの「One Ford」戦略のもとグローバル・プロダクトとして世界中で展開する戦略モデルだ。そのため、パーツ供給もボッシュ、デンソー、デルファイ、ヴァレオなどヨーロッパ、アメリカ、日本などグローバル化されている。
新型「クーガ」は、ヨーロッパ・フォードが開発し、フォーカスとプラットフォームを共用するCセグメントのクロスオーバーSUVだ。フォードが提唱する「キネティックデザイン」コンセプトを取り入れ、モダンかつ先進的なイメージを強調したエクステリアを備える。キネティックデザインはよりエモーショナルかつ視覚的にダイナミックな走りを表現するコンセプトで、全てのフォードのグローバル・プロダクトに採用されており、立体感のあるプレスラインとピンと張ったシャープな面構成、台形のモチーフを多く用いるのが特徴。
旧型モデルと比べ、全高を10mm低くし、全長は95mm拡大したことで、よりスポーティなスタイリングとなっている。デザイン開発責任者のマーティン・スミス氏は「アスリートのような躍動感がテーマ」と語り、デザイン担当のエリカ・ツバキ氏は「地域を超える本質的な機能性やスタイリッシュさを求めた」と述べている。
インテリアは航空機のようなコクピット・デザインとし、新型クーガのドライビングダイナミクスを表現しつつ、新開発のテクノロジーの導入や質感の高さを表現している。またインフォテイメントシステムのSYNC(シンク)など新たな技術の投入によって、クルマとの一体感を高め、運転する楽しさに集中できるようにデザインされている。
シートは、新型クーガは新たに開発されたグローバル・シートを初採用している。快適さやサポート性も向上しながら小型軽量化も推し進め、従来のシート構造に対して約10%の軽量化を達成した。さらに、乗員の身体がシート中央に自然にフィットするように、シートバックの形状をV字に近い型とした。これにより、ドライバーの体型を問わずに適正な着座位置となり、ステアリングホイールやメーターパネルとドライバーの位置関係が常に適正に保たれる。
ダッシュボードは、新開発の「MuCell成型(微細射出発泡成形)」を採用。ダッシュボードの射出成形時に、高度に管理された二酸化炭素や窒素などのガスを用いて 素材の中に無数の微小な気泡を作り出し、素材自体の軽量化を実現。ダッシュパネルは従来比で約500g、軽量化しているという。
またインフォテイメントとして、マイクロソフト社と共同で開発したフォード独自のドライバー・コネクト・テクノロジー「SYNC(シンク)」を全車標準装備する。デジタル音楽プレーヤーやBluetooth対応の携帯電話を車両と接続することで、ステアリングに装備されたスイッチもしくは音声(英語)で操作ができるようになっている。
パワートレーンは、フォードがグローバルで展開するダウンサイジング・コンセプトの新鋭エンジン、1.6L EcoBoostを搭載。吸排気連続可変バルブタイミング機構、7穴タイプの直噴インジェクター、減速時燃料カットシステムを備える。出力は182ps/5700rpm、240Nm/1600-5000rpmとライバルに比べて強力だ。トランスミッションは6速セレクトシフト付AT(6速SST)と組み合わされる。182psというハイパワーを発揮しながら、旧モデル(2.5L・5気筒エンジン+5速AT)と比較して、燃費性能は20%以上改善されている。
4輪駆動システムは新設計のインテリジェントAWDが採用され、路面や走行状況に応じてセンサーからの信号により駆動トルクを前後輪で100:0~0:100で自動的に配分できるようになっている。またこのシステムは、オフロードでの走破性だけでなく、オンロードでのアンダーステアやオーバーステアを瞬時に補正して、ハンドリングとトラクションが最適になるように作動する。
機能面では、ラゲッジルーム容量は従来のモデルから46L拡大し406L(後席を倒すと1603L)とクラストップレベルの容量を確保したほか、このクラスで初のハンズフリー・パワーリフトゲートを採用(Titaniumに標準装備)。スマートキーを携帯してリヤバンパー中央の下側でキック動作をすることで、両手がふさがった状態でも簡単にテールゲートを開閉できる。
新型クーガのボディの鋼板の1/3は、高張力鋼板、超高張力鋼板が採用されている。特に衝突安全性に最も重要なキャビン部分に高張力鋼板と超高張力鋼板を多用し、ボディ全体における高張力鋼板/超高張力鋼板の使用比率は、先代クーガに対して4倍にのぼる。
一方で、キャビン以外ではあえて強度の異なる鋼板を用い、衝突時のキャビン変形を防ぐとともに衝突エネルギーを効果的に吸収できるように最適化している。
ボディ構造の特徴はではAピラーからサイドシル、そしてBピラーを結ぶリング状の骨格に特に強度の高い鋼板を使って耐衝撃性を高めているが、フロント部分には衝撃吸収用のロアフレームを追加して、より高いパッシブ・セーフティと車高の低いクルマとのコンパティビリティに配慮している。こうした高剛性ボディに最新のエアバッグ技術を組み合わせることで、2012ユーロNCAPでは最高評価の5つ星を獲得しただけでなく、総合保護性能88%という結果はミドルサイズSUVで歴代最高ポイントとなっている。
新型クーガのシャシーは、「アジリティ(俊敏性)」と「コンフォート(快適性)」を高次元で両立させたフォーカスのDNAが継承されている。フロント・サスペンションは先代モデルと同じマクファーソン・ストラットをベースとしながらも、軽量なアルミ製ロアアームや中空スタビライザーを採用。さらにジオメトリーも改良され、より優れたコントロール性能と乗り心地を実現。リヤはコントロール・ブレード・マルチリンクサスペンションで基本形式はフォーカスと共通だが、SUVというキャラクターに配慮して各部を最適化。ドライバビリティの向上に留まらず、振動騒音の低減にも配慮して、クラスを超えた静粛性、走行安定性を実現している。
新採用となる電動パワーステアリングは、低速では軽く、高速走行時には正確なレスポンスが得られるように250以上のパラメーターを使って緻密に制御される。構造はフォーカスと同じベルト駆動のラックアシスト式だ。
また新型クーガは、AdvanceTrac with RSC(Titaniumに標準装備)やカーブコントロール(Titaniumに装備)など、フォードのSUVで培われたアクティブ・セーフティ機能を組み合わせる。車両安定技術であるRSC(ロール・スタビリティ・コントロール)付きのAdvanceTrac(アドバンストラック=ABS、トラクションコントロール、ESPなどを統合制御)によりクルマがコントロールを失ってしまいそうな状況でも、4輪個別のブレーキやエンジン出力制御によって姿勢を安定化する。これに付加機能として組み合わせられるRSCは全高の高いSUVに特化した“横転防止装置”で、ジャイロセンサーが毎秒150回の頻度でロール角やロール加速度をモニタリングし、車両横転の危険性を検知すると、素早くAdvanceTracのシステムを作動させ横転のリスクを回避する。また、オーバースピードでコーナーに進入してしまった際にブレーキとエンジンの制御により自動的に減速するカーブコントロールも装備。
またTrendは先代モデル同様、ESPにARM(アンチ・ロールオーバー・ミディケーション)が組み込まれており、車両横転の危険を感知すると、ESPとARMの効果であえてアンダーステアを生じさせ、車両の走行速度を低下、車体のロールを低減させ、横転の危険性を抑制する。
さらにフォードのAWDに初適用となるトルクベクタリング・コントロールも全車標準で採用。最新のトルクベクタリングコントロールはフロントの左右ブレーキを利用してトルク配分デファレンシャルと同等の効果が得られるようにしたシステムで、コーナリング時の左右フロント・ホイールに伝達されるエンジンのトルクを絶えず調整することによって、グリップと操縦性を改善し、アンダーステアを軽減するのだ。
ドライバー支援システムは、渋滞時および市街地での低速走行時に前方車両への衝突を回避するため、自動的にブレーキをかけてドライバーを補助するレーザーレーダー式の「アクティブ・シティ・ストップ」(Titaniumに標準装備)を備えている。このアクティブ・シティストップはの前方約6mの範囲を監視し、前方走行車両や前方停止車両を検出する。車両間の相対速度差が15km/h未満の場合は追突を回避。15~30km/hでは、衝突のダメージを軽減する。
さらにTitaniumはBLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)も装備する。BLISはリヤ左右にあるレーダーセンサーを使って車両後方をモニターし、斜め後方の死角に後続車が侵入するとサイドミラーのインジケーターで警告するようになっている。