フォード 欧州フォード車が集結 Europe Ford Meeting 2015 レポート「目利きの純愛:文/瀧昌史」

07) P1130099日曜日の午前9時前。その山間のサーキットに、独特の風貌のクルマが続々と集まって来た。

フォーカスRS、モンデオST220、シエラRSコスワース、そして最新のキネティックデザインをまとったフィエスタ 1.0 EcoBoostの姿もある。共通しているのはFORDのエンブレム、ブルーオーバルだ。

奈良市の東、山添村の名阪スポーツランドにおいて3月8日、日本全国から欧州フォード車が集い、Europe Ford Meeting 2015(以下、EFM)が開催された。コンセプトは「欧州フォード好きの、欧州フォード好きによる、欧州フォード好きの為のイベント」だ。とはいえ集うモデルは一筋縄ではない。もともと個体数の少ない、日本在住の欧州フォード車。その中でもかなりエッジーなモデルが集うゆえ、なかかマニアックなミーティングである。

この日最も遠来の参加者は、鹿児島在住のモンデオST220オーナーだ。効率良くフェリーを使い自走で駆けつけたという。「このクルマは本当に疲れないんですよ」と屈託がない。とても大事にされているようで、ボディもエンジンルームも新車のような光沢を放っていた。オドメーターはまだ3万km台に止まっているという。

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鹿児島から駆けつけたモンデオST220。エンジンルームも新車同様のコンディション

また一際目立っていたのは、東京都内から駆けつけたエスコート。1996 WRCにおいてカルロス・サインツがルイス・モヤと組んで勝利したBank Utama Rally Indonesia(第3戦 ラリー・インドネシア)仕様に仕立てた、なりきりEscort RS Cosworth 4×4。これも自走での参加で、普段はファミリーカーとして活躍しているのだそうだ。

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1996 Escort RS Cosworth 4×4仕様。東京都内より自走で駆けつけた

このミーティング、もともとは欧州フォード車のオーナーが集うSNSのオフ会的に始まり、東日本と西日本に分かれての開催だった。それが2013年、初めて全国規模の集いになり、これはフォーカスRS Mk2に惚れ込んだ、大阪在住の大場夫妻の尽力によるところが大きかったという。ちなみに大場さんがフォーカスRS Mk2を購入したのが、大阪府富田林市の欧州車を幅広く扱うファクトリーショップ、YM WORKS(ワイエムワークス)。同ショップはFocus RS Mk2だけでも21台を輸入・販売しており、英国の著名フォードチューナー、「mountune PERFORMANCE」や「PUMASPEED」とも取引を重ね、日本では数少ない欧州フォード車の情報発信拠点となっているという。今回のEFMにもフォードジャパンと並び、協賛に名を連ねている。

そんな「欧州フォード愛」に端を発したミーティングゆえ、そのプログラムも、タイムアタックや相互試乗、サーキットタクシーなど趣向に富んでいる。なかでも好評だったのは相互試乗で、これは希望者がオーナーの合意と同乗のもと、オーナーカーをサーキットで試乗できるもの。

人気を集めた1台がフォーカス・ワゴンで、愛知県在住のオーナーは元々フォーカスSTに乗っていたが、家族が増えたことを機に5ドア、MTのフォーカスに乗り換えることを決意。前述、ワイエムワークスに相談し、英国仕様のフォーカスワゴンを手に入れた。エンジンは125PSの1.0EcoBoostで、「燃費もいいし、長距離でも疲れないし、ワゴンボディは使い勝手も良く、とても満足しています」とのことだ。

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相互試乗は人気プログラム。サーキットINを待つ白いボディが、人気だったフォーカスワゴン1.0 EcoBoost 125HP 英国(右ハンドル/MT)仕様
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こちらも相互試乗で人気のモデル。グリーンのボディカラーはフォーカスRS MK2。オレンジのボディカラーは北米でのみ販売されたフォーカスSVT

フォーカスのワゴンボディで、MTで、1.0 EcoBoostエンジンという組み合わせは欧州的には「普通」だが、日本ではその「普通」さゆえに通好みとなる。日常雑器に真の美を見出した柳宗悦的目利き具合と通じるものがある。そのあたりはEFM参加者も同様のようで、当日は引きも切らさず試乗希望者がオーナーに話しかけていた。

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協賛したフォードジャパンリミテッドを代表し挨拶する、同社マーケティング部の田中克己氏。右は今回EFM幹事をつとめた吉田航(わたる)氏
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協賛したフォードジャパンから参加者全員におみやげ

フォードジャパンもこのミーティングに協賛しており、会場に最新のフォーカスと発売前のマスタングを展示。フォーカスは時速30km以下での低速走行時に、前方の車両との追突の危険性を感知すると自動的にブレーキをかけ追突を未然に回避、ないしは衝突ダメージを軽減するアクティブ・シティ・ストップのデモを実施し、人気を集めていた。また参加者全員による記念撮影背景用に、フィエスタのラッピングトレーラーも用意。これはSNSに、あるフィエスタオーナーが書き込んだ「あのトレーラーを背景に、愛車の写真を撮ってみたい」というひと言をきっかけだった。フォードジャパンの粋な計らいでもある。

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「輸入車=高付付加価値モデル」と捉えられることも多い日本では、大衆車を量販する欧州フォードという括り自体、マニアックだ。しかし、そこに集うオーナー達はWRCでの活躍やパフォーマンスの高さを声高に訴えることなく、誰もがその実用性とスポーツ性能のバランスの良さ、運転の楽さを口にしていた。スポーティな仕様でも日々をともにできることは、他に代え難い欧州フォード車の美点なのだそうだ。それゆえか、参加車のMT率が非常に高かった。

当日、ミーティングに集ったフォード車は、60台あまり。晴れて20℃近くまで気温が上がるという予報が外れ寒い一日となったが、会場はとてもホットだった。それは、欧州フォード車というかけがえのない伴侶に出会えた人々が、その純愛を共有できたからだろう。クルマにおいても「純愛」は尊いと、会場の幸せオーラに包まれ、深く感じ入った次第だ。

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