フォードは2023年2月13日、ミシガン州に35億ドル(4600億円)を投資してリン酸鉄(LFP)リチウムイオン・バッテリーの製造工場を新設すると発表した。
この工場は「ブルーオーバル・バッテリー・パーク・ミシガン」と呼ばれ、2026年のLFP電池の生産開始時には、まず2500人を雇用する予定としている。さらにフォードは、ミシガン州マーシャル工場の電池生産能力をさらに拡大する計画も立てている。
フォードとそのバッテリー技術の協力企業は、2026年までグローバルで電気自動車に500億ドル以上を投資するという宣言の一環として、2019年からアメリカで電気自動車とバッテリー生産に176億ドルという巨額のを投資を実行しているのである。
ビル・フォード会長は新工場について下記のように語っている。
「我々は、アメリカにおける電気自動車革命をリードすることを約束し、それは我々の業界におけるこの世界的な変革の最先端に立ち続けるための技術と雇用に投資することを意味します。また、この重要なバッテリー生産拠点に地元ミシガン州を選んだことを誇りに思っています」
フォードは2023年末までに全世界で年間60万台、2026年末までに全世界で200万台の電気自動車を供給することを計画し、その実現に取り組んでいる。そしてこの生産規模の急拡大に合わせ、LFPバッテリーを導入することにより、より多くの電気自動車を生産し、新しい電気自動車の顧客により多くの選択肢を提供することができるとしている。
リン酸鉄(LFP)バッテリー
フォードは、従来のニッケル・コバルト・マンガン(NCM:3元系)リチウムイオン・バッテリーに加えて、LFPを第二のバッテリーを提供することで、顧客ニーズにより多く適合する電気自動車をラインアップできると考えているのだ。
LFPバッテリーは耐久性に優れ、より頻繁で高速な充電に耐えることができ、現在争奪戦が起きている希少金属材料の使用量を少なくすることができる。つまり、この低コストのバッテリーを大規模に使用することで、電気自動車価格を抑制、あるいはさらに引き下げることが可能になる。これらのLFPバッテリーは、開発中のより低価格の次世代フォードEV乗用車・トラックに搭載される予定だ。
ビル・フォード会長はバッテリー生産について下記のように述べている。
「フォードの電気自動車ラインアップは、大きな需要を生み出しています。できるだけ多くのフォードEVをお客様にお届けするために、私たちは3元系バッテリーとLFPバッテリーの両方をアメリカで製造することを約束した最初の自動車メーカーとなります。我々はLFPと3元系バッテリーの生産規模を拡大し、何千、何百万という顧客が、最先端で耐久性があり、より低価格のバッテリー技術を搭載したフォードEVの恩恵を受け始めることになるでしょう」
なお、新バッテリー工場が稼動を開始する前でも、フォードは今年中にマスタング・マッハEに、2024年にはF-150ライトニングにLFPバッテリーを導入して生産能力を高め、納車期間短縮することを目指している。
新バッテリー工場は、当初は年間約35GWhを生産し、将来のフォードの電気自動車約40万台分のバッテリーを生産する計画だ。フォードはこの工場の新設に合わせ、世界No.1の電池メーカーである中国の寧徳時代新能源技術有限公司(CATL)と新たに協定を締結した。この契約では、ヨーロッパとアジアで13のバッテリー生産工場を運営するCATLが提供するLFP電池の知識とサービスを活用し、フォードの100%子会社が電池セルを製造することになっているのだ。
フォードはこれまでのSK On(韓国)、LG Energy Solution(LGES:韓国)などと提携を行ない3元系リチウムイオン・バッテリーの供給を受けているが、今回のCATLとの提携が新たに加わることになった。
アメリカにおいてGMが電気自動車への急速なシフトを進める中で、フォードはEVのF150 ライトニング、マスタング・マッハEの大ヒットを背景によりダイナミックに電気自動車への移行を推進しようとしている。その意志は今回のLFPバッテリーへのいち早い、しかも大規模な生産工場への投資に見て取ることができる。