フォード本社は2023年2月3日、20年ぶりにF1グランプリに復帰すると発表した。アメリカのフォードとレッドブル・パワートレインズは、2026年シーズンのF1から使用する次世代ハイブリッドパワーユニットの開発において、長期的な戦略的技術パートナーシップを締結したのだ。
レッドブル・フォードは、2026年から少なくとも2030年まで、オラクル・レッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファータウリの両チームにパワーユニットを供給することになる。つまりレッドブルのパワートレインは、ホンダ→レッドブル・パワートレインズ→フォードという経緯を辿ることになったわけだ。
ビル・フォード取締役会会長は以下のように語っている。
「これは、私の曽祖父がレースで優勝したことから始まったフォードのモータースポーツ・ストーリーの、スリリングな新章の始まりです。フォードは、世界チャンピオンであるオラクル・レッドブル・レーシングとともに、このスポーツの頂点に戻り、フォードの長い伝統であるイノベーション、サステナビリティ、電動化を世界で最も注目を集める舞台のひとつに持ち込もうとしています」
2023年から、フォードとレッドブル・パワートレインズは、2026年シーズンに向けて、350kWの電気モーターと完全なカーボンニュートラル燃料を使用する新しい新しい技術規則のに適合するパワーユニットの開発に取り組んでいく。
フォードモーターカンパニーのジム・ファーレイ社長兼CEOのコメント
「フォードがレッドブル・レーシングとともにF1に復帰することは、当社が企業として目指す方向性、すなわち、ますます電気自動車、ソフトウェアに定義された最新の車両とそのドライビングプレジャーのすべてを表しています。F1は、イノベーションを起こし、アイデアや技術を共有し、何千万人もの新しい顧客と関わるための非常にコスト効率の良いプラットフォームとなるでしょう」
オラクル・レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナーチーム代表兼CEOは、以下のように述べている。
「このパートナーシップを通じて、フォードを再びF1に迎え入れることができ、大変うれしく思います。独立系エンジンメーカーとして、フォードのようなOEMの経験を生かすことができるのは、競合他社に対して有利に働きます。フォードは、何世代にもわたるモータースポーツの歴史に彩られたメーカーです。ジム・クラークからアイルトン・セナ、ミハエル・シューマッハまで、その系譜が物語っています。私たちレッドブル・パワートレインズは、レッドブル・フォードとして、その王朝の次の章を開くことができ、非常にうれしく思っています。2026年はまだ先のことだが、我々にとっては、新しい未来とオラクル・レッドブル・レーシングの継続的な進化を見据えた仕事がすでに始まっています」
フォードは、世界のEV革命をリードするために500億ドルを投資している。そしてその象徴ともいえるEVの「F-150ライトニング」、「マスタング・マッハE」の成功により、アメリカで第2位のEV自動車メーカーとしてのポジションを固めている。そして、消費者の需要増加に対応し、「フォード+」計画の一環として、2023年末までに全世界で年間60万台、2026年末までに全世界で200万台の電気自動車を導入することを目標として取り組んでいるのだ。
注):フォードは電動化の課題に挑み、社運をかけて大黒柱となるEV版のフルサイズ・ピックアップトラックの開発を行なった。新規開発されたピックアップトラック「F-150 ライトニング」は2021年に発表され、その後4ヶ月間の予約が15万台に達するなど記録的な大ヒット作になり、これによりEVによる収益構造を確立させている。「F-150 ライトニング」は前後に駆動モーターを搭載したAWDで、458ps〜588psを発生。搭載するバッテリー容量は98〜131kWh。
なお、フォードは、2026年にはマスタングGT3によるル・マン24時間レース、Mスポーツ・フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1によるWRC、レンジャー・ラプターとブロンコによるバハ 1000、マスタングによるNASCAR、NHRA、スーパーカーなど、グラスルーツモータースポーツからWECとIMSAから、そしてF1グランプリまでの幅広いレース分野に参戦する唯一のメーカーとなる。
フォードは、そのレース活動を活用して、イノベーション、最新技術、ソフトウェアをユーザーに提供し続けていくとしている。
それにしても2026年シーズンからのF1グランプリは、現在のメンバーに加え、アウディ、ポルシェ、キャデラック、そしてフォードが加わり空前ともいえるワークス系チームによる激しい戦いが期待される。