【フィアット】 パンダ試乗記 個性的でありながら多くの人に愛されるパンダ

マニアック評価vol199

3代目フィアット・パンダは1グレード208万円で登場

個性的で魅力溢れるモデルが、またフィアットから発売された。2013年6月1日より発売されている3代目フィアット・パンダは、先代よりややボディサイズを大きくして、「easy」というグレードのみ、価格208万円というプライスで登場した。

スクエアとサークルを組み合わせた造語「スクワークル」がデザイン・コンセプト

本国イタリアでは2012年末から生産が始まっており、日本においても導入を待ち望んでいたユーザーも多いことだったろう。その3代目フィアット・パンダに早速試乗してきたので、そのレポートする。すでに当サイトでもパンダの車両詳細はお伝えしているが、改めて概要も見てみよう。

初代パンダがデビューしたのは1980年。デザイナーは多くの名車をデザインした、あのジウジアーロ氏だ。イタリアで最も安く、生活に密着したモデルとして誕生し、人気を博した。日本においてもミニ、ビートルと並んで個性的なモデルとして高い人気を得ていた。当時、搭載していたパワーユニットは652ccの空冷2気筒と930ccの水冷4気筒、そしてディーゼルがあり、駆動系ではコンパクトクラスとしては世界初の4WDも採用というユニークな面も持っていたのだ。

第二世代は2003年に発売され、さらに実用性を高めた5ドアとなり、クラスを超えた室内の広さとアップライトなパッケージングとしてブレークしている。2代目はプラットフォームを新設計し、4気筒、5速マニュアル、5速シーケンシャルというラインアップで、実用燃費が15.2km/Lという省燃費もポイントが高かった。

ダッシュボードやステアリングも四角と丸を融合させたデザインと機能性を両立
着座位置も高く見晴らしのいいシート。もちろんデザインもキュートだ

そして3代目となる今回のモデルは、内外装の拡大と質感の向上がメインだ。パンダのポジショニングは、合理的であり低価格というのがこれまでの位置付けだったが、今回のモデルは質感の向上とサイズアップということから、若干の価格アップと合理性よりもエモーショナルな要素を多く含むモデルへとポジションが変化している。

とはいえ、基本的なポジショニングに大きな変化はなく、同じフィアット・クライスラーグループにはよりエモーショナルかつベーシックなモデルとしてフィアット500があり、プレミアムな要素を持つモデルにはイプシロンが存在している。つまり、パンダは価格が少し上がった分、プレミアム感が増したMPV(多用途車)という位置付けだ。つまり日常でのショッピングなどでも通常のハッチバックより使い勝手に優れ、扱いやすさというのが大きな特徴だ。

つまり、輸入車のエントリーモデルとして、まだ十分検討できるモデルであり、国産、ドイツプレミアムモデルとは一線を画し、おしゃれ感のあるイタリアンコンパクトを強調している。従ってライバルとなるフォルクスワーゲンUP!との比較ではその、おしゃれ度、デザイン性、そして増した高級感での勝負ということになるのだろう。

一方、国産モデルではややサイズが大きいトヨタ・ヴィッツ、ホンダ・フィットなどのモデルもライバルとしたい意向がある。AセグメントでMPV的要素を持つモデルはライバル不在で、逆に個性的なデザインを生かし、国産ユーザーへアピールする狙いがあるのだろう。そうなると国産モデルへの信頼に対し、デザインセンスや合理性といったもので立ち向かうわけだが、フィアット・クライスラージャパンのマーケティング予測では、国産ユーザー40%、輸入車ユーザー30%程度はフィアット・パンダへの流入は期待できるとしている。そのため、2013年の販売目標も950台である。

さて、その新型パンダのエクステリアだが、全長3655mm(+120)×全幅1645mm(+55)×全高1550mm(+15)、ホイールベース2300mm(+-0)(カッコ内は2代目と比較)と全体がわずかに大きくなっている。その分これまでの4名乗車から5名乗車へとなり、この点でも国産車とも戦えるわけだ。

デザイン面ではエクステリア、インテリアともに「スクワークル」という造語で説明されている。スクワークルとはスクエア(四角)とサークル(丸)を合わせた言葉で、これまでの直線と平面で構成されていたパンダが、スクエアながら丸味を帯びたデザインへと変わっている。また、細部においてもヘッドライトデザインや、グリルデザイン、ホイールアーチ、ドアミラーなど、そしてインテリアでもメーターやインパネに配されるスイッチ類、ホーンボタンなども丸くて四角い、スクワークルデザインとなっており、極めてデザインセンスの高い仕上がりと言えるだろう。

シートに腰掛けてみると、従来からのアップライトなポジションはそのままに、良好な視界が得られる。ステアリングの操作は軽く、女性でも抵抗なく運転できるというファーストインプレッションを持つだろう。それだけクセがなく、力を必要とせず簡単にハンドルが切れるのは安心感に繋がる。

しかし、走り出すと低速からでも直進の座りの良さを感じることができる。軽い操舵のハンドルにありがちな、走行中、キョロキョロするようなステアリングとは無縁で、欧州車らしい安心感の高い操舵フィールがある。

したがってカーブを曲がるときでも軽い操舵力でありながら、インフォメーションは得られやすく、多くの人がハンドルに関して疑問を持たない自然な操作ができる印象だった。直進では安心感があり、カーブではクセもなく普通に曲がれる。この「普通に」というのができているあたりが、パンダのレベルの高さを感じる部分だ。

エンジンは2気筒のツインエアエンジン。マルチエアエンジンの動作アニメーションも既報しているので、コチラを参照して欲しい。そしてツインエアの詳解はこの記事を読んでいただきたい。

組み合わされるトランスミッションはデュアロジックという2ペダルのシーケンシャルAMTである。日本にはこのタイプが少なく馴染みが薄いが、このところ欧州車に多く見られる傾向があり、徐々に浸透してきていると思う。フィアット500、クライスラー・イプシロン、フォルクスワーゲンUP!、シトロエンDS4などが搭載しているタイプだ。

このシーケンシャルタイプのAMTの運転のコツについては、この記事に書いてあるので、読んでほしい。

というわけで、このパンダもやはりマニュアル操作をした運転が楽しい。DモードはVWのUP!ほどエコに振った設定ではないので、それほど反応が鈍いと感じることはないが、それでもシフトアップが早めなので、よほど穏やかな気持ちでなければ、魅力を味わえないかもしれない。そんな人にはやはりマニュアル操作だ。って、自分か(笑)。

0.9L2気筒エンジンは排気音も個性的

875ccのツインエアエンジンはインタークーラー付きターボで85ps/145Nm というスペック。先代が1240ccで60ps/102Nmだったから、排気量はダウンしたものの、出力は大幅にアップ。そして吸気音が昔懐かしくなるサウンドを出すのだ。だから、なおさらマニュアル操作がしたくなる。このデュアロジック・ミッションンは市街地でも、ワインディングでも楽しめ、個性的なデザインのモデルにジャストフィットした、個性的な操作感を持つクルマという印象だった。

愛嬌ある顔つきと個性的な走りがパンダの普遍的な魅力

デザインが個性的であり、操作にもコツがあるというなんともクセが強そうな印象なのだが、その実、誰にでも愛される、必要とされる、乗りやすいと評価されるというモデルなのだから、自動車文化を深く理解できるチャンスかもしれない。

フィアット・パンダ主要諸元

フィアット公式サイト

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