【シトロエン】C5試乗記 独創性満載の愉しさと伝統の乗り味

マニアック評価vol82
現行モデル(2代目)のシトロエンC5は2011年2月にマイナーチェンを行い、フロントヘッドランプにLEDポジションランプを追加、テールランプのデザイン変更、17インチホイールのデザイン変更に加え、最大のトピックは、これまで搭載していた2.0LとV型6気筒3.0L、4ATというモデルがすべて1.6L+ターボに6速ATという組み合わせに一新されたことだ。

現在ラインアップされているモデルは、セダンとステーションワゴン・タイプの「ツアラー」の2タイプで、それぞれにグレードとして「セダクション」と「エクスクルーシブ」の計4モデルが存在する。2008年10月に導入されたとき、2代目シトロエンC5には直列4気筒2.0L・NAエンジンと3.0L V型6気筒エンジンが搭載されるモデルがラインアップされており、いずれも4速ATでモデルライフの長い、型式AL4のトランスミッションを搭載していた。ちなみに、現行のC4にもこのAL4をベースに、ルノーとの協業で制御を改良したAT8が搭載されている。

 

シトロエンC5ワゴン
シトロエンのフラグシップモデルがC5となる

 

国内ではC6の導入が見送られていることから、このC5が最上級モデルとなっている。シトロエンはその独特のデザインや乗り心地などから、シトロエンらしさを随所で観ることができる。

C5ワゴンシトロエンC5

↑ハイドロを使って車高を変えてみる。

それは、なんの専門知識がなくとも、誰もが感じることのできる乗り心地もそのひとつだ。フワリとした乗り心地はシトロエン独自のもので、伝統的な乗り味とも言える。その乗り味を創っているのが、いわゆるハイドラクティブ・サスペンションで、ダブル・ウイッシュボーンとマルチリンクというレイアウトに、スフェアと呼ばれるボール形状のものにオイルと窒素を充填した空・油圧式の関連懸架システムによりこの乗り心地を作り出している。一般的にはエアサス(窒素の充填)だとかハイドロ(油圧)といった呼ばれ方をしているサスペンションで、窒素とオイルの組み合わせで減衰効果とバネ効果を持ったものだ。現在はハイドラクティブIIIプラスという名称になっている

エンジンルームスフェア

↑エンジンは3.0LのV型6気筒と2.0L4気筒の2種類。右の銀色のボールがスフェアと呼ばれるハイドラクティブIIIのキーパーツ

現在国内で販売されるモデルで、このハイドラクティブを用いたサスペンションはC5だけに採用され、C3、DS3、C4、DS4、C4ピカソには使われていない。他のモデルはストラットとトーションビームなど、オーソドックスなレイアウトにショックアブソーバーという組み合わせになっている。

そのため、C5はシトロエンの伝統といえる乗り味を明確に打ち出している唯一のモデルということもできる。もっとも他のモデルも一時は、ドイツ車の方向を向いていたと言われたときもあったようだが、現在はスフェアを用いずとも、シトロエンらしい乗り味をつくりだそうというのは感じられる。

このハイドラクティブ・サスペンションは、先代モデルからこの2代目になったときにスフェアの数を3つ増やし、7つにしている。そして、ユーザーの安心材料となるのがこのサスペンションまわりは5年間、20万kmメンテナンスフリーを宣言している点だ。

ハンドルメーター

↑ステアリングを切手もハンドルセンター部は回転しない。速度を示す針はメーターの外周を動く

路面の凹凸を拾ったときは、その衝撃をソフトにいなし、コーナリングでも独特のフィールを感じさせてくれる。とりわけ高速での乗り心地の滑らかさには定評があり、直進安定性が高く、フランスの道路が造らせたサスペンションを味わうことができる。ゆえに、その魅力にはまってしまうユーザーも少なくない。そして、それらのユーザーからも間違いなく支持される乗り味をこのC5は持っているだろう。

シートシフト4AT

そして、インテリアの質感も高く、また、ステアリングのセンターパッドが固定したままという、独特のあの動きも健在。シートの大きさも伝統的に大きく、フランス車らしさを感じる。そしてエクステリアもオリジナリティ溢れるデザインで、実に個性的である。

C5wagon リアインテリア

搭載されるパワーユニットは1.6L+ターボにアイシン製の6速ATという組み合わせ。1.6LターボエンジンはPSAグループとBMWとの共同開発から生まれたエンジンで、ボルグワーナー製のツインスクロールターボを搭載している。このユニットは、シトロエンの他のモデルにも搭載され、そういった意味からはスペシャリティ感は薄いユニットだ。ただ、C5のボディを引っ張るには十分なトルクとパワーがあり、不満はない。低速からもトルクが発生するので、156ps/6000rpm、240Nm/1400rpm-3500rpmというスペックは市街地でもエンジンを回すことなく静かに走れる。

また、以前の4速ATから6速ATになり変速も滑らかで、2速のパワーバンドがやたらと広かった先代とは大きく印象が異なる。どのタイミングでシフトアップをしていくのか?滑らかな乗り心地がことさら滑らかに感じる。アイシンAW製というブランドもまた安心材料のひとつになっているだろう。

ドイツ車とはまったくことなる性格を持つC5は、ドイツ御三家と比較すること自体が間違いであると感じさせるほど、ユニークであり魅力あるクルマなのだろう。

 

シトロエン公式サイト

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