【クライスラー】2013年モデルクライスラー300Cラグジュアリー試乗記 イタリア系アメリカンカーなフルサイズセダン

マニアック評価vol172
クライスラーのフラッグシップモデル300Cラグジュアリーで、500kmの距離を試乗することができ、2代目クライスラー300のレポートをお送りする。

 

クライスラー300C

クライスラーは業績不振から経営破綻をきたし、現在フィアットグループ傘下となっている。持ち株比率アップと新生クライスラーのCEOに役員を送り込むなどして、経営再建を行っており、日本法人も2012年にフィアット・クライスラージャパンが発足している。

このことはクルマ造りにおいても影響してくる。つまり、クルマはそのブランド力と製品品質を維持するために、技術と製造哲学とでも言うのか、それらの下支えのもとにクルマがつくられているのが普通だ。従って経営陣が代わり、これまでの歴史をどのように解釈するかで、生産されるモデルにもその影響が少なからず現れるというわけだ。

クライスラー300Cクライスラー300C

2011年2代目となるクライスラー300にもその影響がみられるので、少しずつ紐解いてみよう。現在日本でラインアップするクライスラー300には300リミテッドと300Cラグジュアリーの2グレードに、エボリューションモデルとも言える300SRT8がある。今回試乗したのは300Cラグジュアリーで2013年モデルという位置づけのクルマだ。

クライスラーはフィアットグループ傘下となる以前は、ダイムラークライスラーとしてダイムラーグループであった。そのため、クライスラーのフラッグシップであるフルサイズのセダン、クライスラー300にはメルセデス・ベンツのプラットフォームが改良されて採用されている。まずは、フィアット以前の影響がここに残る。もちろん、良いとか悪いとかいうことではなくだ。

クライスラー300Cクライスラー300C

300は先代メルセデス・ベンツEクラスのプラットフォームを流用したLXプラットフォームを使用し、ボディサイズは5070mm×1905mm×1495mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3050mmとフルサイズになっている。

エクステリアデザインは、ひと目でわかる存在感とタイムレスで現代に相応しく、シンプルでありながらエレガントで洗練されたものとしている。印象的なフロントグリルはサテンクローム仕上げを採用し、先代に引き続きインパクトのあるデザインとなっている。これはクライスラーブランドの哲学なのだろう。

クライスラー300C

インテリアはフィアットの影響を感じる部分だ。そう、シンプルでカチッとしたドイツ車風味な印象であった先代にくらべ、ラグジュアリーで落ち着いた印象になっている。これもダイムラークライスラーとフィアット・クライスラーの違いの影響からなのだろう。とくにポイントとして注力したのは広々とした室内、ハイクオリティ、そしてラグジュアリーという3つのポイントで、クラフツマンシップを感じさせる上質なものになっている。そして、クラシックアメリカン・カーのように、ゆったりとさせることにも注意が払われたという。

クライスラー300C
シックで落ち着いた大人なインテリアだ
クライスラー300C
フルサイズだけに、後席のスペースは十分広い

 

クライスラー300C
トランクスルーは6:4で開く。
クライスラー300C
 

 

クライスラー300C

サイドが盛り上がっており、沈み込むような包まれ感のあるシートでくつろげる座り心地だ

乗り込んでの印象もまさに、ラグジュアリーで、シートも大きくゆったりしている。間違いなくアメリカンカーなのだが、インテリアの細部までの仕上げをみれば、欧州のクルマ造りが反映されていることが伺える。それは、プレミアムを演出する術を知るフィアットならではのセンスと技術ということだろう。

走りだしてみると、意外にもアメリカンカーという印象より、しっかりとした走りのフルサイズセダンという感じだった。フルサイズゆえ、微小舵角での反応はゆったりと動きだしクルーザーのような反応にも感じるが、ゆるい印象ではない。ボディサイズからくる印象なのか、自分のかなかで鷹揚へと変化していく。

クライスラー300C
ツインバルクヘッドを採用し、ボディ剛性を上げる欧州方式のボディ造り

搭載される3.6LペンスターV6型エンジンも、アメリカンサウンドではなく軽快な音で高回転まで回るエンジンだった。最高出力は286ps/340Nmは驚くようなスペックではないが、低速回転域からトルクがあるので、フルサイズの300Cでも出だしは軽い。

クライスラー300C
8速ATにはパドルシフトが付く。その下のボタンでラジオ選局できる
クライスラー300C
 

 

組み合わされる8速ATはドイツZF社製で、パドルシフトが装備される。また、シフトバイワイヤーの「Eシフト」であり、先端のトランスミッションとなる。アメリカ車でZFのトランスミッションを搭載する唯一のモデルというわけだ。ちなみにこのトランスミッションはベントレー、ジャガー、BMWなどに採用されているモデルと同じユニットだ。

サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーンでリヤがマルチリンク式を採用。液体封入のブッシュや改良型ダンパー、スプリングレートの見直しがされ、再設計された前後サスペンションジオメトリーとなっている。

クライスラー300C
100km/Lで1300rpm付近を示す
クライスラー300C
試乗車は20インチを装着。乗り心地では18インチがおすすめ

 

高速でのハンドリングでは直進性の座りがよく、アメ車のネガな部分はまったくない。まさに欧州を走る直進性の高さと言える。車線変更も滑らかでおつりがくるようなこともない。何と言っても100km/hで1300rpm前後の回転数が穏やかな印象を与える。どうしてもラテン、フィアットという言葉を聞くとヒステリックに高回転まで回しサウンドを堪能するイメージがあるが、アメリカ車の持つ鷹揚さと、フィアット、ラテンの持つセンスが融合した走りとデザインを持つモデルという印象だ。

ワインディングでは、パドルシフトが小気味良く、スイスイと走れる。スポーツセダンという雰囲気ではないが、大柄なセダンなのに軽快に走るなぁという印象。ステアリング操作に遅れを感じるようなこともない。ただアジリティが高いというベクトルの走りではなく、あくまでもフルサイズ・サルーンとしての動きの良さがあるというイメージだ。

高速、ワインディングを合計500km走行した燃費は9.8km/Lでカタログ値のJC08モード9.2km/Lを上回る結果となった。国産車の場合、モード燃費スペシャル的なことが行われているため、実際の燃費とモード燃費は8割程度とみるのが普通だが、輸入車の場合、モード燃費と実燃費がほぼ同じような数値になるケースが多い。フルサイズのボディで3.5Lの自然吸気を考えれば、かなり省燃費設計された先端のモデルであることがわかる。

また、クライスラー300のボディには多くの構造上の改良が加えられ、高張力鋼板を導入することで非常に頑丈なボディを形成している。プラットフォーム側の約67%、アッパーボディの約53%に高張力鋼板と超高張力鋼板が使用され、さらにAピラー、Bピラー、ボディパネル補強メンバーには超々高張力材を採用している。したがって、見た目にもピラーが細径化されていることが分かる。

もちろん、米国道路安全保険協会の安全テストでも最高評価を獲得している。従って、このボディに乗っていても剛性の高さを感じることができ、硬い塊の中にいる安心感を得ることができる。

こうしたアメリカン・ラグジュアリーのフルサイズセダンでありながら、価格はリミテッドが398.0万円、300Cラグジュアリーが538.0万円と超お買い得価格が付けられている。この価格とクルマのポジションを考えると国産のクラウン、フーガあたりからの乗り換えを積極的に押してくるのだろう。さらにアメリカ車としては異例の右ハンドル仕様の設定となっていることもプラスに働く。

ちなみに、このクライスラー300は、欧州ではフィアットの高級ブランド「ランチア・テーマ」の名前で販売され、右ハンドルがあることから英国でも積極的に販売されているということだ。

クライスラー 300C 価格表

クライスラー 300/300C 主要諸元表

クライスラー公式サイト

COTY
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